↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
136/287

127話:強制エスコート

 ミックの店でジョーとアンディに捕まってしまった。

 私は店から連れ出されると街の中を連行される。


「まぁ、あの方は何処のお家の?」

「素敵なご令息たちね」

「真ん中のご令嬢は羨ましいこと」


 そんな声を聞きながら。


「あの…………、放してもらえない?」

「そんなことしたらシャノンは俺たちを撒くだろ」


 ジョーはエスコートよろしく私に腕を差し出している。

 そして腕に乗せた私の手をさりげなくがっちりホールド中だ。


「色々喋ってもらうからね?」


 アンディは背に手を添えてるだけ。

 と見せかけて魔力の流れを探っていた。

 これは撒くために魔法を使おうとすればすぐにばれる。


 傍から見れば美男二人による豪華なエスコート。

 実態は強制連行でしかなかった。


「まずはあのフューロイスの王子との関係だ」


 馬車が走り出した途端ジョーが前のめりに聴取を始める。

 行先は別荘地。たぶんどちらかの公爵家の別荘なのだろう。


「ジョー、どうして彼とシャノンに関係があるとわかったんだ?」


 アンディは私の反応を見ながら、ジョーの推測が当たっていることを見極めた。

 そう言えば私も関わりがあるとは言ってない。

 アンリ自身も私ではなくメアリという令嬢を知っているだけなので、メアリを知らないジョーがどうして関わりに行きついたのか謎だ。


「ミックが見るからに偉そうなあいつらに自分で声かけるわけないだろ」

「なるほど。シャノンが指示してミックにジュースを用意させたのか」


 さすが看破の異能。それとも素の推理力なのかしら?


「でも関係を聞くのはどうしてだい? ルール侯爵家として関わるのは普通じゃないか?」

「アンディ、シャノンは覗き見してたのにすぐに出てこなかったんだぜ」

「そうか、普段のシャノンなら僕たちが出会った時点で間に入るね」

「つまり、すぐには出てこれなかった理由があるんだ」


 そこまでわかるの?

 隠しごとができなさすぎるわ。


「じ、実は…………」


 仕方なく私はメアリと名を偽って交流していることを白状した。


「髪の色を変える?」

「なんでそんなことまでして」

「いえ、本来アンリと交流があったのは従兄で、私はたまたま従兄の発明品を試供していた時だったの。だから髪の色が違ってばれないまま…………」


 さてモスをどう好意的に説明したものか。


「その従兄はちょっとこだわりが強くて社交は苦手だけど、集中力はすごいの。それで色んな薬や魔法関係の発明を趣味にしてて」

「クレーテには親戚がいないからよくわからん」

「変わった人物だっていうのはわかったよ」


 やっぱりそうなっちゃうわよね…………。


「悪い人ではないから」

「シャノン、そうやって庇うのが余計に怪しいぞ」

「そうだね。あ、そうか。ミックの冤罪事件の時に確かそんな話を」


 アンディが思い出してしまった。

 はい、その従兄です。


「ま、その従兄のことは言いや。まだ何か隠してるだろ、シャノン」

「本当にジョーはなんでもお見通しね。でも、これ以上は駄目よ。アンリとの約束なの」

「僕たちのほうが同郷なのに、敵国の王子を庇うのかい?」

「そうじゃないわ、アンディ」


 苦笑をすると、アンディは意地悪だった自覚があるらしく目を逸らす。


「はぁ、しかしなんでそんな適当なことで帝国の奴と仲良くなるんだよ」

「全くだね。なんでよりによってあの国なんだい?」

「あの国は、私も思うところはあるのよ。でも、アンリ個人はいい人だから」


 アンディは横を向いたまま失笑した。


「個人なら、ね。けれどいずれ国を背負う人間だ。関係はいつでも清算できるよう整えておいたほうがいい」

「っていうか、あいつすごく弱そうだったな。あれで皇帝務まるのか?」


 馬車には私たちだけだからってジョーの発言は無礼にもほどがある。

 私とアンディは特にコメントをしないことにした。


「それで、シャノン? 今日スローブローにいた理由は?」

「あ、そうだった。何してたんだよ」

「う…………」


 二人に詰め寄られて、私は結局アレクセイとも交流を持ったことを吐くことになる。


 そうして別荘地に着く頃には、馬車の中で頭を抱えるジョーとアンディが出来上がった。


「シャノンって知らないにしても、なんでそうなるんだ? 我儘らしいとは聞いてたけど、とんでもない気分やなんじゃないか、そいつ」

「というか、勝手に宿泊先を変えてるのかい、一国の王子が? 修道生活で詳しい噂を聞かない王子だったけど、とんでもない我儘加減じゃないか」

「そうなの。だから遊覧船に乗って満足してもらわないと我が家としても対応に困ってしまうのよ」


 ジョーとアンディは不服そうな顔を見合わせる。


「これは止めるべきか、アンディ?」

「いや、侯爵が出てきても面倒だよ」

「でしょう?」


 我が意を得たりと前のめりに喜ぶと、溜め息を吐かれてしまった。


「あのな、シャノン」


 言葉を区切ったジョーが対面にいる私の頬を両手で包む。


「いくら変装してるからって、男ばっかりのところに一人で行くなって」

「それはジョーたちといても同じよ?」


 否定できず半端に笑うアンディは、ジョーの手を払って言葉を続けた。


「シャノン、君の分け隔てのない性格は美点だ。けれどもっと淑女の自覚を持つべきだね」

「我儘令嬢が広まっている今、もう遅いと思うわ」


 私の考えにアンディは首を振る。


「そんなことはない。君本人を知っていればそんな誤解なくなる。だからこそ、誤解されるような行動は慎むべきだ」

「それにさ、あいつらなんかシャノンと一緒にいるの嫌な感じなんだよな」

「ジョー、それはただの言いがかりだ」

「アンディだっていい感情は持ってないだろ」


 アンディは家の事情があるからわかるけれど、ジョーはどうして?

 これも異能なのかしら?

 看破で私の味方にならない人たちだとわかってるとでもいうの?


 話している内にジョーの別荘へと到着した。

 客間に通されソファに腰を落ち着けるとすぐにジョーが宣言する。


「で、俺たちもその観光一緒に行くぜ」

「え!?」

「それはちょっと無理だよ、ジョー。けれど、たまたま同じ日に同じ町にいるくらいなら珍しくもない。あそこは此処と同じくらい出入りの激しい街だ」

「アンディまで」

「いいだろ、シャノン。これで関わらせないなんて言うなよ。俺たちだって手を貸してくれって言われてるんだ」

「手を? いったい誰に…………」

「君の従者だよ」


 エリオット?


 アンディは上着から手紙を取り出すと封筒を振ってみせた。


「君からあまりにも返信が来ないから、何かしてるんじゃないかって」

「俺のところにまで来たんだぜ。なんでエリオットに一回しか返事してないんだよ?」

「そ、それは…………ちょっと、時間が…………」

「まぁ、理由はフューロイスの王子とその手のかかる従兄なんだろうけど」

「いや、クラージュでもまめにくれてたんだぜ。何か他にも厄介ごと抱えてるとか?」


 なんで本当にわかるの!?

 実はジョーの看破の異能ってチートじゃないの!?


「エ、エリオットには一回だけれど、お兄さまにはちゃんと返信をしているのよ。それに十日に一回来るから、その、返信を送る前に新しい手紙が来てしまって」


 言い訳する私に、ジョーとアンディは半笑いになっていた。


「うへー」

「うわー」


 これは、二人して引いてる?


「あいつ今どこいるんだっけ? 十日で次がくるってすごい頻度だな」

「たぶん、送ってすぐ次の手紙を書いてるんだよ」


 やっぱり引かれちゃってるわ。

 でも十日に一度って、多いわよね?


「ま、あいつのことはいいや。このこともどうせ黙っててほしいんだろ?」

「え、えぇ。いいの?」

「エリオットは少しくらいやきもきさせててもいいよ。ちょっと手紙面白いし」

「アンディまで」


 二人して笑うその手紙の内容がちょっと気になる。


「それでさ、黙ってる代わりに一つ教えろよ」

「な、何を?」


 ジョーに身構えると、アンディは私を引き寄せるようにジョーから離す。

 二人とも、ソファに戻らないの?


「そう難しいことじゃない。前はよくやってたことだよ」

「なんのこと?」

「侯爵家の見張りを撒く方法を教えてくれ、シャノン!」

「僕たちもたまには家の者の目がないところで動きたいこともあるんだ」


 どうやら私のやり方を学んで公爵家の見張りを撒きたいようだ。

 私にお願いするジョーとアンディは、なんだか悪戯な笑顔を浮かべていた。


毎日更新

次回:王子さま観光

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。