表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇妙な職業〜カッパ漁船、ヒト焼きモデル、雪だるま鍋屋……こんなヤバい仕事、知ってますか?  作者: んひー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/22

ヒト焼きのモデル

全盛期からかなり店舗が減ってしまったが、覚えている人もいるのではないだろうか。

かつて日本を駆け抜けた「第三次たい焼きブーム」のことを。

あの頃、巷では「鯛以外の形」をめぐって熾烈な開発競争が起きていた。ヒラメやエイなどの海産物、さらには動物型まで登場した。

そんな百花繚乱のブームの中で、狂信的な人気を獲得したのが、人間の姿を模した「ヒト焼き」というジャンルだった。


「人形焼きなら昔からあるだろう」と思うかもしれない。

だが、サイズが決定的に違う。ヒト焼きは一つあたり100センチ近くもあり、みんなで切り分けて食べる巨大な焼き菓子なのだ。

モデルとなった人間によって形が違うため、売れ行きにもあからさまな差が出た。

発売当初は俳優や女優、芸人を抜擢したが実物との乖離などもあり売り上げは伸びなかった。


当時20代だった私は、昔からスタイルが悪く、身長に対して頭が異常に大きかった。さらに目や口といった顔のパーツもひとつひとつが無駄にでかい。

開発者の中田さんはそのアンバランスな体型に目を付けた。

街でスカウトをされて、あれよあれよと私のヒト焼きは完成し、爆発的に売れた。


連日行列ができ、ファンたちが私の形をした焦げ目のある生地をナイフで切り分け、貪り食べていた。

ブームの熱気は完全に狂気を帯びており、限定キャンペーンとして私の私物が景品にされることもあった。

……今だから言えるが、あの時に超レア景品としてプレゼントされた「私の歯」だが、

あれは精巧な偽物などではなく、中田さんに半ば強引に麻酔を打たれ、私の口から引き抜かれた本物の歯だった。今になって思うととんでもない。


ブームは数年で急速に廃れ、世間は「ヒト焼き」のことなど綺麗さっぱり忘れてしまった。

しかし、当時のファン(人間たち)の狂気は、今も終わっていない。

私は30代になり、体型に変化が出た。

つまり例に漏れず太り始めたということだ。

するとどこからか現れた7人の仮面の者たちに拉致され、見知らぬ地下室へ連れ去られた。

「型と形が変わってしまうだろう」

彼らは泣き叫ぶ私に厳しい食事制限を課し、

当時の「完璧な頭格差と体型」へと強制的に戻すのだ。そして満足すると、また私を街へと解放する。


彼らは今でも、私の「完全な姿」が保たれていることに異常な執着を見せている。

私という人間そのものではなく、「あの熱狂の象徴」をそのまま保存したいのだ。

私は今も、ファンたちの監視の目から逃げられない。

街ですれ違う普通の人々の中に、あの狂乱のブームを忘れられない「私のヒト焼きのファン」が紛れ込んでいるのかと思うと恐怖で震えてしまう。


先日、街で偶然開発者の中田さんと再会した。

あのブームから10年以上が経ち、すっかり老け込んだ中田さんに、私はずっと引っかかっていた疑問をぶつけてみた。

「中田さん……あの時、なんで私の本物の歯なんて抜き取って、景品にしたんですか? さすがにやりすぎでしたよね」

中田さんは周囲を怯えるように見回すと、声を潜めて言った。


「すまなかった……だが、あれは『あなた』を守るためだったんだ」

「……どういうことですか?」

「あのブームの熱狂は異常だった。信者たちはあなたの私物ではもの足りず、あなた自身を欲しがったんだ。

……そこで交渉を重ね、なんとか歯を渡すことで納得してもらえた。」

背筋に冷や汗が吹き出した。

「だから私は、あなたの歯を6本抜いて、最も危険な狂信者6人に1本ずつ配ったんだ。……あの時は伝えられず本当にすまなかった。」

6本……。

私を地下室へ連れ去ったのは7人の仮面の人だった、もう一人は誰なのか?

もしよろしければ、★評価やブックマークをお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ