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050 トヨサ

目的の町に到着した時のことだ。


助手席のエルナが、ライブ配信の画面を指差した。


「ねえ、Ken。さっきから『Dad』と『Mama』の様子がおかしいんだけど」

「ん? どうしたんだMama。また近所の連中が肉を寄越せって騒いでるのか?」


俺が運転しながら画面に目をやると、そこにはカンザスシティの実家から信じられないような報告が連投されていた。


Mama:『Ken! 大変よ! TOYOSAトヨサから黒スーツの重役たちが何十人も押し寄せてきたのよ! 前の家を買い取ってピットを建設しているわ!』


Dad:『信じられんスピードだぞ! ワシントンのロビイストを総動員して、特例をもぎ取ってきやがった!』


Mama:『ご近所さんには迷惑料として、TOYOSAの最新ハイブリッドカーを配り歩いてるわ! BluebirdやEast Topsたちも、資本力の違いを見せつけられてドン引きしてるわよ!』


「……Oh my god」


俺は思わずブレーキを踏んで車を停めた。

あの天下のTOYOSAが、カンザスシティの俺の実家を包囲しているだと!?


:『TOYOSAwww 日本の超巨大企業動いたwww』

:『近所に車配るとか裏工作のスケールがヤバすぎる lmao』

:『世界のTOYOSAがIsekaiに本気出してきたぞ!』


すると、チャット欄に燦然と輝く【公式認証マーク】をつけたアカウントが降臨した。


TOYOSA公式:『Ken様、初めまして。TOYOSA自動車株式会社と申します。突然のご挨拶、誠に申し訳ございません。本日はKen様に、スポンサー契約のお願いに上がりました』


「HAHAHA! マジかよ! このランクルを作ってるTOYOSAが直々にスポンサーか!? 一体何を持ってきたって言うんだ!」


俺が興奮気味に叫ぶと、TOYOSA公式は待ってましたとばかりにコメントを打ち込んだ。


TOYOSA公式:『Ken様の過酷な異世界BBQの旅をサポートするため、特別にフルカスタムした最新型の【ランヨ・クルーサー ISEKAI BBQ Edition】をご用意いたしました』


Dad:『Holy cow……(なんてこった)!!』

Mama:『ちょっと待って! でかすぎるわよこれ!』


TOYOSA公式:『ガレージ・リンクをお願いいたします』


「……分かった『ガレージ・リンク』!!」


広大な荒野に、かつてないほど巨大な光の渦が出現した。

まばゆい光が収まると、そこには漆黒に鈍く輝く装甲と、極太オフロードタイヤを履いたランクルが鎮座していた。


「Holy cow……(なんてこった)!! めちゃくちゃCoolじゃねえか!!」


TOYOSA公式:『異世界のどんな悪路でも走破できるよう、サスペンションのストロークを大幅に延長、長時間の運転にも耐えられるように乗り心地は極上に。荷台には大容量のクーラーボックスと特注のBBQツール収納庫を完備。巨大なBBQトレーラーを牽引できるように牽引能力も限界まで引き上げております!』


車に乗り込んでみると、荒野のど真ん中だというのに、まるで高級ホテルのソファに座っているような信じられない感覚だ。


「Perfectだ……! TOYOSA、あんた達マジで最高だぜ! だが、こんな途方もない車をもらっちまって、俺は何をお返しすればいいんだ?」


企業がタダでこんなモンスターマシンを提供するわけがない。

俺が尋ねると、TOYOSA公式からのコメントが少しだけ遠慮がちになった。


TOYOSA公式:『はい……我々のお願いでありますが、月に1本で構いません。ミスリルのナイフを提供していただけないでしょうか? もちろん、代金はすべて弊社が持ちます!』


:『ミスリル狙いか!!』

:『そりゃ自動車メーカーなら喉から手が出るほど欲しいわなww』

:『1gでも異世界金属ならヤバい価値あるぞ lmao』


俺は拍子抜けして、思わず大笑いした。


「HAHAHA! なんて控えめな要求だ! たったの月1本でいいのか? 可能なら、月にいくらでも送ってやるぜ!」


TOYOSA公式:『え……? そ、それでは、その条件でお願いできますか?』


「You bet!(ああ、任せな!) 異世界の美味い肉を追いかけるには、最高の足が必要だからな。交渉成立(Deal)だ!!」




◆◆◆◆◆




その頃、地球。

日本、愛知県豊佐市――TOYOSA自動車本社の特別役員室。


巨大モニターに映し出された異世界からのライブ配信を見つめながら、TOYOSAの社長をはじめ、重役たちが、信じられないものを見たように震えていた。


「つ、月にいくらでも……だと……?」

「1本でも御の字だったのに、毎月複数のミスリルのナイフが供給されるかもしれないだと!!?」

「でかしたぞ、アメリカ支社のロビー部隊! ご近所への根回しも完璧だったな!」

「他社に先駆けてKen氏を囲い込んだのは、我が社の歴史に残る大金星だ!!」


重役たちが、歓喜のあまりネクタイを振り回し、お互いに抱き合って涙を流している。


「これより全社を挙げてKen氏のISEKAI BBQをフルサポートする! 彼が肉を焼き続ける限り、TOYOSAは世界を制するぞ! 万歳! BBQソースと共にあらんことを!!」

「「「BBQソースと共にあらんことを!!!」」」




お読み頂きありがとうございます。

ブックマーク、★ボタン、できたらよろしくお願いします。


次話明日7:00に公開予定。

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