045 My New Gear...
森を抜け鼻歌交じりしばらく車を走らせると、こぢんまりとした小さな町に到着した。
全員で神殿に挨拶したら、パーティーの面々はそれぞれの目的のために別れることになった。
「私とガンツは、商談に行って参りますのでのちほど」
「……私は散歩してくる」
トーマスとガンツは町の中心部へ向かい、ファラはふらふらと歩いていった。
残ったのは俺とエルナの二人は、そのまま町外れにある鍛冶屋へと足を運んだ。
火の粉が舞い、カンカンと鉄を打つ音が響く薄暗い店内。俺はカウンターにいるヒゲの店員に声をかけた。
「Hey、親父さん! ちょっと聞きたいんだが、この店にミスリルの製品はないか?」
「おや、お客さん運がいいね。ちょうど良いものが入りましたよ」
そう言って彼が奥の木箱から大事そうに取り出してきたのは、一本のナイフだった。
鈍い光を放つ刃。刀身には細かで美しい彫刻がびっしりと施されている。
「ちょっと訳ありの冒険者が売っていったんですよ。どうです? 金貨50枚でお譲りしますよ」
「Wow……Beautiful……」
「綺麗な彫刻ね。なかなか手が込んでるわね」
俺は刀身の輝きに見惚れながらも、ふと冷静になって尋ねた。
「素晴らしい品だが……他にはないのか? 普通のナイフとか」
ヒゲの店員は困ったように頭を掻いた。
「いやあ、小さな町ですからねー。今はこれしか無いですねー」
「なるほどな。……OK、ちょっと待っててくれ」
俺は手元のスマホに視線を落とし、カメラに向かってウインクをした。
「どうするガバメント、これでいいか?」
:『ガバメントに直接確認wwww』
:『アメリカ政府にお伺いを立てるBBQMAN lmao』
:『金貨50枚ってドルでいくらだ!?』
:『彫刻入りのミスリルナイフとか絶対高いだろ!!』
:『CIA息してるかー?ww』
Mike:『Bro、スケールがデカすぎて笑うしかないぜ lol』
Dad:『Ken! いい物だ! 刃の輝きが素晴らしい!』
すると、怒涛のコメント群をかき分けるように、国務省のコメントが表示された。
米国国務省【公式】:『それをお願いします。代金の金塊を用意しました』
アナハイム・ディフェンス・システムズ【公式】:『彫刻の施されたミスリル……! R&D部門が歓喜の声を上げております。ぜひ、そのナイフをご手配ください!』
:『金塊用意したwwww』
:『国務省、動きが早すぎるwww』
:『税金が異世界のナイフに消えていく瞬間である』
:『歴史の教科書に載るぜこの配信 lmao』
「HAHAHA! Alright、商談成立(Deal)だ!『ガレージ・リンク』!」
目の前の空間が歪み、光の中からズシリと重い布袋が出現する。袋を開けると、中には眩い光を放つ本物の金塊がゴロゴロと入っていた。
「これで足りるかな?」
大きな金塊を一つヒゲの店員に渡す。
「金塊! それに見慣れない魔法。やはり流れ人さんでしたか、ちょっとお待ち下さいね。お釣りを計算しますから」
ヒゲの店員がお釣りを計算している横で、俺は手に入れたばかりのミスリルのナイフをガレージ・リンクの光の中へ放り込んだ。
「さあ、ガバメント! そしてMr.アナハイム! 約束の品をそっちに送ったぜ!」
:『うおおおおお異世界間貿易成立!!』
:『これでアメリカ軍の装甲がミスリル製になるのかww』
:『マジで送りやがったwww』
米国国務省【公式】:『対象物の受領を確認いたしました。米国政府を代表し、貴殿の多大なる貢献に感謝申し上げます。事前の合意に基づき、要請のあった特別支給品をガレージへ配置完了しました』
「OK! 早速、確認するか。エルナ、ちょっと町の外に行こう!」
「何なの? 一体何をするつもり?」
町の外に移動しガレージ・リンクを発動する。
空間が大きく歪み、今度はとんでもない質量の『何か』が、実家のガレージからこちらの世界へと押し出されてきた。
ドンッ!!!
重々しい金属音と共に姿を現したのは、黒光りする長大な銃身と、独自の3段階油圧リコイルバッファーを備えた重厚なフォルム。
アナハイム・ディフェンス・システムズ社製、対戦車ライフル。
『ADS-ATR-07B-3 【ケルベロス】』だ。
さらに、その巨大なライフルの上にちょこんと乗せられていたのは、使い込まれた一つの財布。
大きく『BAD MOTHER F●CKER』と刺繍された、映画界の伝説とも言えるタラ●ティーノ監督の私物財布だった。
「OH MY GOD!! HAHAHAHA!! 最高だぜEverybody!!」
俺はケルベロスの冷たい銃身を撫で、タラ●ティーノ監督の財布を高く掲げて大喜びの声を上げた。
:『対戦車ライフルきちゃあああああああ!!!』
:『デカすぎワロタwwww』
:『こんなのどうやって持ち歩くんだよwww』
:『財布もマジで強奪してて草』
:『CIA本当にハリウッド監督の家からふんだくってきたのかよ!!』
:『タラ●ティーノ監督泣いてそう lmao』
:『あれ? 退役空母を三年間タダで貸したんじゃなかったっけ?』
:『BBQMAN(重武装・対物狙撃手)』
Dad:『Ken!! 素晴らしい! その.50 BMG弾で、どんな巨大なモンスターの肉も狩り放題だぞ!!』
Mama:『もう! 本当にやりたい放題ね! 怪我だけはしないようにね!』
Mike:『Bro、お前が世界で一番イカした財布の持ち主だぜ!』
「Thanks、アメリカン・ガバメント! サンキュー、Mr.アナハイム! これで極上肉への準備は完璧に整ったぜ!」
対戦車ライフルを不思議そうに眺めるエルナをよそに、俺は手に入れたロマン溢れる最高の相棒たちを前に、満面の笑みを浮かべるのだった。
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次話明日7:00に公開予定。




