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042 UK2

イギリスの四人がギルドの依頼を完遂し、料理をしている時。


アーサーのスマートフォンが、不穏な電子音を響かせた。

ライブ配信のチャット欄に赤いスーパーチャットが表示される。


HM_Government_Official:『UKチーム各員。こちらはロンドンより英国政府、および情報局秘密情報部(MI6)である』


「「「「……Huh?」」」」


焚き火で肉を焼いていたドゥーガルたちが、ピタリと動きを止めた。


:『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』

:『アメリカ、フィンランド、フランス、ドイツに続いてイギリス政府もキタwww』

:『MI6登場とかガチのスパイ映画じゃねえか』


HM_Government_Official:『異世界に存在する未知の超金属――通称「ミスリル」。我が国の国防および兵器開発において、それは国家存亡に関わる最重要戦略物資である。直ちにミスリルのインゴットまたは、製品を買い集め英国へ引き渡されたい』


「おいおい、ロンドンのお役人さんよ」


北アイルランド出身のコナーが冷笑を浮かべてスマホに向かって喋りだした。


「俺たちを顎でこき使おうってか? まぁ、話を聞くだけ聞いてやろうじゃねえか。対価は何だ?」


HM_Government_Official:『うっ……。当然、国家予算の範囲内で相応の報酬は用意する。君たちの希望を述べよ。ただし、常識の範囲内で――』


政府の担当者がそう言いかけた瞬間、スコットランド出身のドゥーガルが鼻を鳴らし、スコッチのグラスを強く地面に叩きつけた。


「常識だと? 笑わせるなイングランドの犬ども! 俺の要求は一つだ。――スコットランドの完全独立、およびエディンバラ議会の即時主権回復だ!!」


HM_Government_Official:『……は?』

:『いきなり政治的爆弾投下で草』

:『スコットランド独立運動を異世界の配信でするなwww』

:『ドゥーガル気合入りすぎだろ lmao』


HM_Government_Official:『待て待て待て! それは我々の管轄を超えている! 首相官邸と王室の承認が必要だ! もっとこう……個人の私財とか、勲章とか――!』


「却下だ! 独立が無理なら、北海の油田の利権をすべて俺の故郷の自治体に寄越せ!」


「ふふっ、スコットランド人は強欲だな……」

今度はウェールズ出身のダイが、穏やかな笑みを浮かべたまま手を挙げた。


「僕の要求はシンプルさ。ウェールズ語の完全な公用語化、およびイングランドの学校教育におけるウェールズ史の必修化。それと、王室所有の土地の一部を、ウェールズの伝統的な羊の放牧地として永久無償譲渡してもらおうかな……」


HM_Government_Official:『ウェールズ語の必修化……!? ロンドンの子どもたちが発音不能な言語で悲鳴を上げるぞ……!』


「知ったことじゃないさ。故郷の文化を守るためには、このくらいしないとね……」


ロンドンで頭を抱えているだろう政府官僚を無視するように、北アイルランドのコナーがニヤリと歯を剥き出しにした。


「俺からは実用的なやつだ。ベルファストの港湾関税の完全撤廃、およびアイルランド島統一に向けた――」


HM_Government_Official:『ストップ! ストップだコナー君! それ以上言うとMI6が君のガレージを破壊することになるぞ!! 別の要求にしてくれ!』


「チッ、面白くねえの。じゃあ、世界最高峰のディーゼルエンジンを積んだ特製の新型ディフェンダーと、アイルランド全土に無制限のギネスビールを供給するパイプラインの敷設で手を打ってやるよ」


HM_Government_Official:『最後のやつは物理的に無理だが……車両のほうはどうにかしよう……』


次々と飛び出す過激すぎる要求に、ロンドンの政府は大パニックに陥っていた。

そんな中、イングランド出身のアーサーだけは、優雅に紅茶のティーカップを傾け、優しく微笑んでいた。


「やれやれ、野蛮な連中ですねぇ。暴力や政治的圧力で交渉を有利に進めようなど、紳士の恥というものです」


HM_Government_Official:『おお、さすがはアーサー氏……! 話の分かる英国紳士――』

「私からの要求は一つだけです」


アーサーはスッと目を細め、静かに言い放った。


「ロンドン市内の高級ティーサロンにおける、アフタヌーンティーの税金免除。および、最高品質のイングリッシュ・ブレックファストの茶葉を、国家予算で一生涯、毎朝私のガレージに運搬し続けること。……これだけあれば、ミスリルを進呈してもよろしいですが?」


HM_Government_Official:『……お前が一番イギリス人としてタチが悪いわ!!!』

:『アーサー卿の要求が一番私欲まみれで草』

:『スコットランド独立 vs ウェールズ語必修 vs アイルランドビール vs 紅茶の免税』

:『イギリス政府の担当者、今ごろ胃薬飲んでるだろwww』

:『MI6でもこの四人のおじさんはコントロール不能 lmao』


ロンドンで、政府高官たちが頭を抱えて会議室の机に突っ伏している姿が目に浮かぶようだった。

ドゥーガルたちは大笑いしながらグラスを合わせる。


「さて、ロンドンのお偉方が頭を悩ませている間に、俺たちは最高の肉を食うとしようぜ!」

「賛成だ。政治なんてものはな、美味い酒とメシの前では二の次よ!」


イギリス政府を盛大に振り回しながら、おじさんたちの異世界サバイバルは、今日も今日とて最高に賑やかに続いていくのだった。




お読み頂きありがとうございます。

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解説編を一緒に公開してます。

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