024 Popcorn
Jariのいる港町を離れて数日、俺たちは目的地である、広大な畑に囲まれた小さな村『オーツ』に到着した。
まずは旅の無事と、これからのBBQライフを祈願するために、村の中心にあるこぢんまりとした神殿に全員で立ち寄る。
「異世界の神様、今日も最高の肉と美味い酒に出会えますように。BBQソースと共にあらんことを……」
「ちょっとKen、神殿でお願いすることが食い意地張りすぎてない?」
「HAHAHA! エルナ、神様だって美味いBBQの匂いを嗅げば、天国でヨダレを垂らすはずだぜ?」
:『神殿でBBQの祈祷をするアメリカ人 lol』
:『神様「よし、今日はステーキの加護を与えよう」』
神殿でお参りを済ませたら、トーマスとガンツは商談へ、俺とエルナは美味い食材の情報を求めて、冒険者ギルドへと足を運んだ。
◆◆◆◆◆
ギルドの掲示板には、いくつかの依頼書がピン留めされていた。その中から、俺はある1枚の依頼書に目を留める。
【依頼:畑を荒らす巨大モグラの討伐】
場所:村の南側、ジャガイモ畑
報酬:銀貨5枚& 収穫したての新鮮なジャガイモ1袋
詳細:地面を荒らし、作物を食い荒らす巨大モグラ。神出鬼没で捕獲困難。
「新鮮なジャガイモ……! こいつはベイクドポテトにしたら最高だな。よし、エルナ。これにしよう!」
「ええ〜、巨大モグラの討伐? 面倒くさい仕事ね……。あいつら、人の気配を察知するとすぐに地面に深く潜っちゃうから、とにかく倒しづらいのよね。探すだけで日が暮れちゃうわよ」
エルナが肩をすくめてため息をつく。
「Hmm……おびき出す、か……」
俺の脳裏に、数日前に手に入れた『あの食材』がピンと浮かび上がった。
「Hey エルナ、心配いらないぜ。巨大モグラを一発でおびき出す、最高の『餌』が手元にあるからな!」
俺たちは依頼を受け、さっそく被害の出ている畑へと向かった。
見渡す限りのジャガイモ畑は、あちこち土がボコボコに掘り返されていて、かなり荒らされている様子だ。
「よし、作戦開始だ!」
俺はランクルの荷台から、愛用のダッチオーブンを取り出した。
まずは火を起こし、十分にダッチオーブンを温める。そこに多めのバターと塩、エルナの氷魔法で安全に収穫した『爆裂トウモコロシ 』の実をたっぷりとほぐして投げ込んだ。
そして、しっかりと重い蓋で閉める。
「Ken、本当にそんなことで巨大モグラが出てくるの?」
「まぁ見てな。こいつはただの料理じゃない、最高のおとり(デコイ)だ」
数分後。ダッチオーブンの内部から、恐ろしいほどの勢いで音が響き始めた。
――ババババン!! パパパパァン!!!
「ひゃああっ!? な、何その音! 爆発したの!?」
「驚くなエルナ、これでいいんだ! 爆ぜてる、爆ぜてる!」
:『始まったwww 異世界ポップコーン!』
:『ダッチオーブンが爆発に耐えて良かったな lol』
ダッチオーブンの中で、トウモロコシが猛烈な勢いで弾け飛んでいる。
頃合いを見て、俺は重い蓋を一気に持ち上げた。
ふわあぁぁん……!
その瞬間、バターの濃厚なコクと、トーストされたコーンの暴力的に甘い香りが、風に乗って畑全体に一気に広がった。
:『うおおおお! 画面越しにめちゃくちゃ良い匂いがする!』
:『深夜のポップコーンテロはやめろおおおお!』
Mike:『これ映画館で嗅ぐ一番ヤバい匂いだろ!』
「う、嘘……。甘くて、香ばしくて、すごく美味しそうな匂い……。これが、あの爆裂トウモコロシなの……?」
エルナが目を輝かせてポップコーンを見つめた、その時だった。
ズズズズズズ……!!
「来たぞ! エルナ、準備しろ!」
「ええ、いつでもいけるわ!」
畑の地面が不自然に盛り上がり、激しく揺れ動く。
土を撥ね退けて現れたのは、ドラム缶ほどもある丸々とした巨体。鋭い爪と、ひくひくと匂いを嗅ぐ大きな鼻を持ったモンスター――巨大モグラだ!
「モグーーーーー!!!」
巨大モグラは完全に理性を失った様子で、ヨダレを垂らしながらポップコーンの入ったダッチオーブン目掛けて突進してくる。
「ビンゴだ! 匂いに釣られて、一発でお出ましだぜ!」
「もう、食べ物につられて出てくるなんて、おバカなモグラね! ――『雷撃』!」
エルナが鋭く杖を振るうと、轟音と共に青白い雷撃が巨大モグラに直撃した。
地面から飛び出していた巨大モグラは避けることもできず、一撃でその場に転がった。
「ふぅ、一丁上がり! 確かにこの甘い匂い、抗えないのも無理ないわね……」
「Good job、エルナ! さあ、冷めないうちにご褒美タイムだ!」
俺は仕上がった純白のポップコーンに、自家製BBQソースをたっぷりと回しかけた。
キャラメルポップコーンならぬ、『BBQポップコーン』の完成だ。
熱々の一掴みを口に放り込む。
「Oh! バターの塩気と、サクサクの食感……そこにBBQソースの甘辛さが絶妙に絡んで、手が止まらねえ!」
「どれどれ……んっ! 美味しい! 甘じょっぱくて最高ね! これ、いくらでも食べられちゃう!」
:『BBQソース味のポップコーンとか絶対美味いやつじゃん!』
:『ビール! 誰かエールを持ってこい!』
:『この組み合わせは悪魔的すぎる……』
「そうだ、DadとMamaと約束してたな!」
ダッチオーブンから、出来立てのBBQポップコーンをアルミトレイにすくい、ガレージ・リンクで送る。
「Dad, Mama! 約束通り、異世界のポップコーンを送るぜ! ビールのつまみに最高だ!」
Dad:『……んおおお! これ、信じられないくらい美味いぞ! ビールが1ケース空になっちまう!』
Mama:『Oh, Ken! ありがとう、最高に美味しいわ! 今ちょうどパパと映画を見ようとしていたところよ』
:『実家へのポップコーン仕送り草』
:『ママンとダディ、映画鑑賞が捗るな!』
East Tops Whiskey公式:『これはウチのライウイスキーのハイボールにも絶対に合いますね! 一袋送ってください!』
:『俺たちにも売ってくれーー!』
カンザスシティの家族たちの喜ぶ顔を想像しながら、俺はエルナと競い合うようにポップコーンを口に運び、冷たいビールで流し込んだ。
冷たいビールと、スモーキーなポップコーン。
異世界の青空の下で楽しむ即席のシアター気分は、言葉にできないほど最高だった。
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次回7:00公開予定。




