015 Japanese Curry
「Ouch……頭の中でキング・タウロスの群れが全力で突進してる気分だぜ……」
激しい頭痛に顔をしかめながら、俺は身体を起こした。
昨夜の宴は最高だった。
だが、James Bang Rye Whiskeyを調子に乗って煽りすぎた代償は、いつだって最悪の二日酔いだ。
周囲を見渡すと、ガンツもトーマスも、あのハンクも地面に転がって爆睡している。
「『ライブ配信』スタート! Good morning, Everybody! 今日も最悪の二日酔いからのお目覚めだぜ!」
俺はカメラに向かって挨拶しながら、すかさず『ガレージ・リンク』を発動し、Medialyteを引き出して一気にがぶ飲みした。
Rabbit Laboratories公式:『 Good morning! Ken! 二日酔いにはMedialyteを!』
「Phew……! いつ飲んでもこいつは二日酔いの救世主だぜ! さて、Dad、Mama、起きてるか?」
オタクカルチャーを愛し、日本のラノベを翻訳しているMamaと、カンザスシティのBBQを愛するDadに呼びかける。すぐにコメント欄が勢いよく流れ始めた。
Mama:『Good morning, Ken! 今日も元気そう……じゃないわね。飲み過ぎ注意って言ったでしょ?』
Dad:『HAHAHA! 男同士のBBQに強い酒は付き物だ! それで、今日はどうするんだKen?』
「今日は、カレーライスを作るぜ!」
なぜ俺がカレーライスを作ろうと思ったのか。それは昨日、Brisketの火の番をしながら、まったりと過ごしていたときのことだった。
◇◇◇◇◇
「ねえKen、あなた達がいた世界ってどんな世界なの?」
「Hmm……魔法やモンスターがいなくて、科学が発展してて……口で説明するのは、ちょっと難しいな」
「魔法がないって、冗談でしょ!? 魔法がなくてどうやってフ●ーレンを描いたのよ」
:『異世界の魔法少女にフ●ーレンを読ませるとこうなるのかwww』
:『だったら漫画で説明すればいいんじゃない?』
Mama:『それならちょうどいい漫画があるわ! 日本の日常が分かる『よ●ばと!』をガレージに入れておくわね』
:『まあ、日本もアメリカも同じ世界だし……問題ないか!』
これが俺たちの世界に一番近い漫画だ、と手渡すと、エルナはすぐに熱心に読みふけり始めた。
そして、しばらくページをめくっていた彼女が、ふと顔を上げた。
「ねえKen、この子が『ちょーおいしもの』って言ってる『カレー』を食べてみたいんだけど、作ってくれない?」
「ん? カレーか……最近食ってないなー。よーし、久しぶりに作ってみるか。Dad、Mama聞いてたか? カレールーとライスと炊飯器、それから発電機を準備しておいてくれ!」
Dad:『発電機は、ガレージに古いのがある。あとで動くかチェックしとくぞ』
Mama:『OK! パンとナンも用意しとくわね!』
「おい、サムライボーイ!」
すると今度は、横で別の巻をパラパラとめくっていたハンクが、眉間に皺を寄せて突っ込んできた。
「この日本人達は、BBQでなんでこんな薄い肉を焼いているんだ!?」
「HAHAHA! ハンク……日本では、それがBBQなんだよ。日本の寿司とカリフォルニアロールみたいなもんさ!」
「カリフォルニアロールは寿司だろ?」
◇◇◇◇◇
「――というわけで、エルナからのリクエストで今日はカレーライスを作るぞ! 豚とキング・タウロスのモモ肉がたっぷりあるから、消費しないとな」
Mama:『冷凍庫を占拠してたモモ肉がやっと片付くのね。ガレージの準備はできてるわよ。福神漬けも置いておいたわ!』
:『カレーwwww』
:『BBQMANがカレーに逃げたぞ! lmao』
:『異世界で日本の国民食キターーー!』
:『それBBQじゃなくてただのキャンプ飯やん lol』
Mike:『Oh, Ken……カンザスシティの誇りを捨ててしまうのか……!?』
「HAHAHA! 逃げたわけじゃないぜ、Mike! ダッチオーブンを使った煮込み料理も、立派なアウトドアクッキングだ! 豚の野性味とキング・タウロスの強烈な旨味……硬いモモ肉も、ダッチオーブンでビールと野菜と一緒にホロホロになるまで煮込めば、最高のカレーになるはずだ!」
俺はミスリルのナイフを引き抜き、巨大なモモ肉の塊へと狙いを定めた。
「Let's get started!」
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次回7:00公開予定。




