014 KC Brisket & Burnt Ends
太陽が西の地平線に沈みかけ、空がオレンジ色に染まる夕暮れ時。スモーク開始からついに18時間が経過した。
特大オフセットスモーカーから漂う、ブラウンシュガーが焦げた甘い香りとヒッコリーの煙、そして巨大なキング・タウロスの濃厚な脂の匂い。それに釣られるようにして、広場にはガンツやトーマスをはじめ、交易都市ガレリアの人々が続々と集まってきた。
「Ken殿! 商談を爆速で終わらせて来ましたぞ! あの匂いを嗅いでは仕事になりません!」
「おいKen! 腹が減って棍棒を振り回すオークよりも凶暴になりそうだぜ!」
「HAHAHA! さーて、肉の様子はどうかな?」
俺がスモーカーの蓋を開けると、もうもうと立ち昇る煙の中から、見事なマホガニー色に輝く、極上の巨大な肉塊が姿を現した。
「おい! 早く食べさせてくれ!」
「WAIT WAIT! まだだ、このまま肉を休ませて、肉汁をなじませるぜ!」
「そんな! まだ、食べられないのか!?」
◆◆◆◆◆
一時間後。
正直もう少し休ませておきたかったが、このままだと暴動が起きそうなので肉をカッティングボードに移した。
そして昨日ガレリアの鍛冶屋で手に入れたばかりの『ミスリルのナイフ』を取り出す。
「まずは部位の切り分けだ! Brisketは赤身中心の『フラット』と、脂が乗った『ポイント』の2つの部位が重なっている。この脂たっぷりのポイント側を切り離し、サイコロ状にカットするぜ!」
鈍く光る刃が、巨大な肉の塊に吸い込まれるように滑っていく。
「そして、このサイコロ状のポイント肉に、KCスタイルの特製甘辛ソースと追いスパイスを絡め、もう一度スモーカーへ投入する! 脂がトロトロに溶けてソースがキャラメリゼされるまで焼き上げれば、カンザスシティの裏メニューにして至高の肉キャンディ、『Burnt Ends』の完成だ!」
:『うおおお! ここでまさかのBurnt Ends!』
:『BrisketにBurnt Endsとか絶対美味いやつじゃん!』
:『深夜に見るんじゃなかった……胃袋がぶっ壊れそう lmao』
Dad:『Ken! フラットの火入れも完璧だ! ミスリルのナイフ、素晴らしい切れ味だな!』
Burnt Endsの準備が終わったら、赤身の『フラット』部分を美しくスライスし、たっぷりの肉汁と特製ソースをかけた。
「よし、まずはアンタからだ、ハンク」
俺は腕を組んで黙って見つめていたテキサス親父のハンクにBrisketを差し出した。
ハンクは無言のまま紙皿を受け取ると、分厚い指で肉をつまみ上げ、じっくりと眺めた。そして、そのまま口へと放り込む。
咀嚼するたびに、彼の険しい顔から少しずつ力が抜けていくのがわかった。
「……ふん。甘ったるいソースで肉を誤魔化すカンザスシティの流儀……ガキの遊びだと思っていたがな」
ハンクはテンガロンハットのツバを少し上げ、俺を真っ直ぐに見た。
「柔らかさ、スモークの香り、そして何より、この巨大なキング・タウロスの旨味を一切逃さず閉じ込めた温度管理。……悪くねえ。肉自身の暴力的な旨味で殴りあうテキサスの直球勝負には一歩及ばねえが……世界で2番目に美味いBBQだと認めてやるよ、サムライボーイ」
その不器用だが最大の賛辞に、俺は満面の笑みで親指を立てた。
「Thank you, ハンク! 最高の褒め言葉として受け取っておくぜ!」
ハンクの言葉を皮切りに、俺は切り分けたBrisketと完成したBurnt Endsを次々とエルナや町の人々に振る舞った。
「うおおおおっ! なんだこの柔らかさは! 赤身の旨味と特製ソースの甘酸っぱさが最高に合うぜ! 噛むたびに肉汁が爆発しやがる!」
「外側はカリッと香ばしく、中は信じられないほどトロトロですぞ! 脂の甘みとソースの深いコク……まさに奇跡の味です!」
「んんっ……! このねっとりした甘辛いソース、悪魔的だわ。食べる手が本当に止まらない! テキサスの直球も凄かったけど、この複雑なハーモニーはもう魔法の領域よ!」
「おい! エールだ! 早くこの美味い肉を冷えたエールで流し込ませてくれ!」
:『ああああああ美味そうすぎる!!!』
:『画面から肉の匂いを出力するデバイスはまだか!?』
Bluebird Brewing公式:『キンキンに冷えたBale Aleご用意してます!』
East Tops Whiskey公式:『James Bang Rye Whiskey もいつでも準備OKです!』
Rabbit Laboratories公式:『安心してください! 二日酔いにはMedialyteを!』
光と共に、Bale AleとJames Bang Rye Whiskeyが出現する。
「さあEverybody! カンザスシティとテキサス、二つのBBQ魂が交差するガレリアの夜に! CHEERS(乾杯)!」
「「「CHEERS!!」」」
夜空の下、極上のBrisketとBurnt Ends、そして無限に湧き出る冷えたエール。BBQが巻き起こした熱狂の宴は、大盛り上がりで続くのだった。
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次回7:00公開予定。




