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第七楽章序節
それは、都でも有数の、壮麗なる館。
「ステラ、お前は恋をしたな…。」
その微笑みは、深く粘つく不協和音となって、彼女の耳を劈く。
「…ご主人様、何を……。」
その細い音色は、足元に揺れる。
「何も恥じる事はない。記念に、これをやろう。」
取り出したのは、壮麗なる彩りを奏でる短剣。
「先程、市場の商人から買ったものだ。美しいだろう。」
その刃に映る自らの瞳を見つめ、酔いの吐息を奏でる。
「美しいお前に、相応しい。これも、錬金術といえるな。」
傲慢な旋律が笑い、ステラを撫でる。
裾を握る彼女の腕を持ち上げ、その短剣を握らせる手。
それは、柄を離し、冷たい熱を帯びて、彼女の体を這う。
「その刃を、もっと美しくしてみせろ。」
それは、抗えない言葉。
白妙の塔を望む窓を覆う様に、その男は、静かに紡いだ。
「ルナ…。」
ステラから零れ落ちた雫は、愛する名と共に、真紅の絨毯へと呑み込まれた。
その彩りは、誰の瞳にも奏でられる事はなく、突き付けられた運命だけが旋律となって、その道を蝕んだ。
その館から蜿々と張り巡らされる石畳は、微かな吐息と、朽ちた灯火と、そのどちらでもない彩りの蠢く路地へと続く。
絢爛の園の傍で、確かに奏でられた旋律は、王宮へ届く事はなく、行き交う喧騒へと溶け堕ちる。
故に、その先の一つの椅子の前には、静寂のみが奏でられていた。




