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第六楽章序節
「賑やかな人だな…。」
それが、初めて抱いた印象。
ここに連れられてきたのは、まだ魔法もうまく使えない幼き頃。
両親も姉も、魔法は使えなかった。
だから、森の片隅で、小さく生きていた。
彼女が魔法を使える事を知ったのは、姉が怪我をした日。
そこに手を当て、怪我が無くなってほしいと願った。
それは、ほのかな光でしかない。
だが、その光を奏でることができる者は、広い魔族の国に於いても、稀の存在。
治療魔法。
それが、静かに生きる小さな家族の運命を変えた。
あの日、奏でられた、ほのかな光の音色は、それを探す者達に触れられた。
彼らの感知魔法は、あらゆる揺らぎを見逃さない。
まして、探し求めている魔法であれば、尚更。
最初の歪みは、小さな不協和音から始まった。
「君が、チユちゃんだね。少し、我々についてきてほしい。」
その頃からだった。
彼女の逃げ足が、誰よりも早くなったのは。
このままでは、家族も巻き込まれるかもしれない。
その恐怖の音色が、彼女を一つの答えへと導いた。
夕闇に、朧月が詩うころ、微睡みの吐息の中で、小さな影が揺らめいた。
「ルナお姉ちゃん、ごめんね。」
彼女は、静かに駆けていった。
ただ独り、荒野の中を、砂塵に塗れて。
その旅路は、やがて、一つの出会いへと導かれる。
彼女が触れた、二つ目の家族。
その名は、荒野の牙。




