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夜想曲『花の国』  作者: ことは
Primo movimento『花の祈り』
68/116

第六楽章序節

「賑やかな人だな…。」

それが、初めて抱いた印象。


ここに連れられてきたのは、まだ魔法もうまく使えない幼き頃。

両親も姉も、魔法は使えなかった。

だから、森の片隅で、小さく生きていた。


彼女が魔法を使える事を知ったのは、姉が怪我をした日。

そこに手を当て、怪我が無くなってほしいと願った。

それは、ほのかな光でしかない。

だが、その光を奏でることができる者は、広い魔族の国に於いても、稀の存在。


治療魔法。

それが、静かに生きる小さな家族の運命を変えた。


あの日、奏でられた、ほのかな光の音色は、それを探す者達に触れられた。

彼らの感知魔法は、あらゆる揺らぎを見逃さない。

まして、探し求めている魔法であれば、尚更。


最初の歪みは、小さな不協和音から始まった。

「君が、チユちゃんだね。少し、我々についてきてほしい。」

その頃からだった。

彼女の逃げ足が、誰よりも早くなったのは。


このままでは、家族も巻き込まれるかもしれない。

その恐怖の音色が、彼女を一つの答えへと導いた。


夕闇に、朧月が詩うころ、微睡みの吐息の中で、小さな影が揺らめいた。

「ルナお姉ちゃん、ごめんね。」


彼女は、静かに駆けていった。

ただ独り、荒野の中を、砂塵に塗れて。


その旅路は、やがて、一つの出会いへと導かれる。

彼女が触れた、二つ目の家族。


その名は、荒野の牙。

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