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第五楽章終節
そこに至る道は無い。
そこに入る扉は無い。
灯火の欠片さえ触れることはなく、隔たれた空が陽光を身に纏い、月光を奏でる。
降り積もる星々は、穏やかなせせらぎに煌めき、花々を揺らす。
ステンドグラスから紡がれた極彩色が、凡ゆる事象を織り成し、そよぐ。
畦道を彩る石畳に、土の香りが時の流れを詩う。
その先にある、一つの椅子は、座すべき者を失い、朽ちている。
その椅子が眺めるのは、遠い先にあるテーブル。
そこには、芳しい湯気の立つ紅茶が配されている。
揃えられたテーブルウェアは、四季折々の花が描かれており、金縁が艶やかに香る。
大きなプレートに詰まれた木の実と蜜の焼き菓子が、触れる者の心を満たそうと、静かに佇む。
その先に在るのは、空を穿つ大樹。
有と無の狭間に揺れる枝葉が、与えられた灯火を奏でている。
その傍に凛と佇む、一輪の黄色い花。
それは、継ぎ接ぎのアルストロメリア。
木の指輪と挿し木に導かれ、そこに降り立ったアリウム達を包んだのは、夢幻の彩り。
それは、微睡に沈む旋律。
何かに触れなければ、それが現であるなどと、誰一人として信じようとはしない。
そこに揺らめく、一つの影。
「メル様の、ご友人ですね。お待ちしておりました。」
その音色は、氷の温もりを奏でた。




