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六節:優男皇太子としかめっ面宰相

 ようやく来たか、と言いたげなピョートルが俺に話しかけた。

「ユーマ殿。一度死んだばかりで悪いが、もう一度死地に向かうことになりそうだ」

「ピョートルさん、縁起でも無いことは言わない約束ですよ。失礼しました、ユーマさん。あなたの力、お借りしたく存じます」

落ち着いた、それでいてあどけなさの残る声でミハイルはピョートルを諭した。


 ミハイルは金髪のウェーブがかった優男だ。イヴァン総統の嫡男で、争いを好まず一度も侵攻に関わったことはない。

世界的な大戦のさなか、いい年をした働き盛りの青年が何もしないのは国民感情的に良い印象を持たれない。

争いでは「直接」血を流さず、侵略もしない。その折衷案で防衛隊の重要ポストに携わっている。

幸い、頭を使うことには非常に長けている人間なので、今まで彼が主因の失策は起きたことがない。

「ミハイル、先遣隊はどうなった?」

やって来たばかりで、状況が掴めない。ひとまずは先遣隊の様子を知りたかった。

「日が明けてすぐ、出撃させました。敵軍の進行状況と私達の軍の進軍速度を鑑みれば、今頃狼煙が上がっていてもおかしくはないでしょう。バスティン朝の常套手段ってご存知ですか?」

「確か、奇襲と隠密行動だったか。……先遣隊は既に全滅しているか」

「さすがですね、数多の国と渡り合っただけのことはあります。先遣隊のことは、私も全滅したと考えています。おそらく暗殺されたのでしょう」


 "FoC"でバスティン朝に所属する場合、隠密スキルの修得をするまでは戦場に出ることができない。

プレイスキルが安定するまでは、殆どのプレイヤーが敬遠する王朝だ。

だが、ある程度の攻撃なり魔法のスキルを得てから、「内通」というコマンドを使えば事情は変わる。

ステータスを引き継いだまま、他国へ鞍替えができる。それはつまり、国を裏切るということだ。

国を裏切ったプレイヤーは、バスティン朝で修練を積むことで脅威的なスキルが身につくことになる。

戦士系プレイヤーなら、不意をついたプレイヤーへの即死スキル「暗殺」、魔法使い系ならステルス魔法だ。

ステルス魔法に至っては、効果範囲が自分だけに留まらず周囲の味方にも及ぶ。


「ユーマ殿、問題はここからですぞ。後発隊を向かわせるべきか否か。先遣隊が全滅したとすれば、後発隊を向かわせるべきと判断します。具体的な戦略としては――」

ピョートルの戦略を要約すると、既に先遣隊が全滅したと考えて、後発隊が戦術魔法であぶり出してから一気に叩くという算段だ。

「ピョートルさん、確かに先遣隊が全滅したならば後発隊の力が必要でしょう。しかし、防衛戦にしては少々乱暴ではありませんか?」

「ミハイル様。しかし、敵軍の動向が掴めませぬ。ましてや相手は隠密のエキスパートですぞ。後発隊が確実に仕留めるならば、荒事は避けられませぬ」

ピョートルの言い分にも一理ある。このまま攻め込むのを待てば、侵攻は抑えられても帝都への被害が甚大になるのは避けられない。

そうすれば、いよいよバスティン朝は本腰を入れて攻め込むのは目に見えている。

「それではミハイル様。貴方の案をお聞かせいただけますかな?」

少し目を細め、ピョートルが訊ねた。

「ピョートルさん、あなたの言うとおり後発隊の力は必要です。ですが、欠けている要素が一つあります」

「それは何ですかな?」

「ユーマさんのお力です。先程も申し上げましたが、この作戦はユーマさん無しでは進められないでしょう」

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