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四節:女同士、そして戦いの火花

「ユーマさん、おはようございます!調子はいかがですか?」

「あ、お、おはよう、マリス。なな、何か用かな?」

どうにもマリスと話し始めると、口がどもってしまう。

話すうちに慣れるんだけど、こっちからは未だに声はかけられない。

 常にエロい目線でゲームでは眺めていただけに、ここまで現実味溢れるゲームの人気ヒロインを前にすると口が乾く。

お馴染みの胸元に手を差しこめば感触を味わえるかもしれない。

ゲームではできなかったことが、ここでは可能性の範疇にある。

チキンだからできないけど。


「実は今日、ユーマさんにも戦線防衛の召集がかかっています。ユーマさん、『蘇生明け』で本調子ではないと思いますが、ご一緒できますか?」

 情報では、ルベンカ帝国を一つ飛ばした隣国の「バスティン朝」が攻め込んでくる。

バスティン朝からルベンカ帝国にかけて、非常に規模の大きな山脈が続いており、彼らはそこから奇襲を目論んでいるのだろう。

「なるほど、バスティン朝はルベンカ側からはそれほどマークされていなかったからな。俺が負傷した今なら、奴らも好機と思ったのか」

「バスティンの兵たちはすぐそこに来ているかもしれません。息絶えた斥候の伝令を、昨夕通りがかった猟師が見つけたばかりですので……」


 既に斥候がバスティンの連中を見かけたそうだ。そして何かの拍子で発見され、殺害。それをルベンカ帝国領土内の猟師が伝令を見つけた。

ここで、俺は奇妙な点に気づいた。

「ルベンカに住む猟師が伝令を見つけた時点で、バスティン朝は国境を越えているはずだ。情報としては遅いはずなのに、攻め込まれた気配もない。まさか、帝都を直接狙っているのか!?」

「ピョートル卿も同じ見解でした。既に先遣隊が帝都近くの麓から出撃しました。バスティン朝の軍隊を見つけたら、その地点から狼煙が上がるようになっています」

「一刻を争う事態だな。すぐに支度する、中で待っていてくれ」


 マリスを屋敷に招き入れ、倉庫へと向かう。

ゲーム内で仕舞っていたアイテムが、そのまま倉庫に保管されていたのはありがたい。

驚いたことに、倉庫にある全てのアイテムが賢者の石で顕現されたウィンドウに収まってしまった。

これ、チートじゃね?

マリスがアイテムだけでそこそこの重装備なのと対比して、俺はそこいらを散歩するような出で立ちだ。


 階下を抜けた俺を見て、やはりマリスは戸惑いを隠せなかった。

「あれっ?ユーマさん、支度は?」

「終わった」

「手ぶらですよね?」

そんなことないと返して、手元から回復薬を呼び出す。

「ユーマさん、転移魔法頼りだと錬金術の魔力が尽きませんか?」

「大丈夫さ、新たな賢者の石の力だ。魔力も消費しない」

「本当、ユーマさんの力は計り知れません。……正直憧れちゃいます」

顔を赤くするマリス。煽情的な顔をするので、ついつい見入ってしまう。

すると、邪魔をするようにナナシが急に現れて咳払いをした。

「ゴホン、お二人さん?まだ夜までは早くてよ?」

「ひゃっ、ど、どなたですか?」

どうやら、ナナシは他の人間にも見えるらしい。

「そこで鼻を伸ばしてるご主人のメイドでございます。これからドンパチでしょ?夜のドンパチには早いですよ」

 露骨な雰囲気が苦手なのか、ナナシは手で追い払う仕草をする。

「ナ、ナナシ!マリスとはそんな関係じゃないから!じゃ、じゃあマリス。そろそろ配置に向かおう」

「は、はい。ユーマさん……」

上気した顔から一転して沈んだ表情のマリスを連れ、迎えの馬車に乗った。

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