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一節:悪夢。戦いの予兆

***


 全ては虚無。

俺にとっての現実は、認めたくないけど後ろ暗い日々が続くあの鬱屈した現代。

俺の生まれた世界。自分が主役と思っていた少年時代は終わった。


いつからだろう。

心が折れて。

突きつけられた現実を棚に上げて。

自分を慰める日々。

溜まり続けたコンプレックス。

吐き出されたリビドー。


 一時的には楽しいのに、充足感の無い日々。

今更誰かと何かしたいとか、そんな気持ちすら芽生えない。

なぜ、俺は生きている?すでに生きていないのではないか?

俺は生きていない。死んでいないだけ。

どこかで聞いた台詞だ。


 もう、これから「生きる」には遅すぎたのかもしれない。

このまま死んでしまっても、誰が困るものか。

今死んでも、きっと大丈夫。

人はみな、「死」に向かって「生き続けている」。

たまたま、そうたまたま死ぬのが早くなったとしても、それは人生のゴールに早く到達しただけ。

だから、「お前」は本望だったろう?「坂本優馬」――


***


 "FoC"で初めて迎えた朝。

寝汗の不快感と不気味な悪寒で目が覚めた。

「今のは、夢か……」

夢にしては奇妙だ。普通はどこかにいたり、何かをしているのが夢というものだ。

俺がみた「それ」は、独白?

どこにいるでも、何をするでもなく、ただ暗闇が支配する。脳裏で「俺」が「俺」に語りかけていた。


「おはようございます、ご主人。体がびしょ濡れですよ、通り雨でもありましたか?」

タイミングを見計らったように、ナナシが寝室のドアをすり抜けてやって来た。

「……ナナシか。悪い夢を見ただけだ。すぐに着替える」

昨日、俺はナナシから身の周りを世話するメイドにして欲しいと懇願された。

 この世界で誰にも気づかれずに、ただ一人で屋敷を徘徊し、誰も気にかけないのにあらゆる家事をしてきた幽霊。

"FoC"では、一切出会うことが無かったキャラクターだ。

攻略wikiですら存在が仄めかされることがなく、きっと誰も見たことがない。

さしずめ将来的なアップデートで導入予定だったか、それかボツキャラか。

それはどうでも良い。


 この世界はもしかしたら、ゲームとは違うルートを歩むかもしれない。

ゲームだったら、時間の概念なんてあって無いようなものだ。

だが、俺の今いる世界はカレンダーがあり、もちろん時間の変遷を体感できる。

要するに、ここの生活は現実世界と遜色が無い。

カレンダーが変わるたびに、世界は常にアップデートし続けている。


 ご主人、朝の支度ができましたよとナナシから伝えられた。

着替えてから行くと軽く返事をして、俺は脱衣所へ向かった。

ルベンカは常に雪の積もる北国をイメージして作られている。

そんな極寒の地でぐっしょり汗をかくほどに、あの夢は悪い予感を示唆しているのだろうか?

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