↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】あくおに はべり うつくしき  作者: 零 珊瑚屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/31

第二十六話 最高の一番弟子で


「師匠、緋乃さん……俺、考えたんですが…聞いてもらえますか…」




ある日の稽古終わり、大吾だいごは真新しい道場の板間に正座し、玄蔵(げんぞう)と緋乃(ひの)に向かって深く頭を下げた。




「俺、一刻も早く、この開拓地にある全ての集落を救いたいんです。


なので……これからは弟子たちをいくつかの部隊に編制し、


俺たちだけで…複数地区の救出と開拓事業にあたりたいと思っています」




抱っこ紐の蒼太(そうた)をあやしていた緋乃が、ふと手を止めて大吾を見つめる。




玄蔵夫婦が『蒼武館』における絶対的な最高戦力であることは何も変わらない。




二人が出張れば、どんな大禍も一瞬で粉砕できるし、『ワタリ』だって怖くない。




そして頼めば間違いなく二つ返事でついてきてくれるだろう。




――だが、だからこそ。




「頼り切っちゃ……駄目なんです…」




大吾は拳を力強く握りしめ、顔を上げた。




その瞳には、かつて禍つの影に怯えていた面影など微塵もなかった。




「俺たちがいつまでも師匠たちに頼り続けていたら、本当の意味で『自分たちの居場所を自分たちで守る』ことにはならないと思うんです。


それに……師匠たちには、蒼ちゃんと過ごす時間を、この道場での穏やかな暮らしを大切にしてほしいんです」




自分たちの足で立ち、自分たちの力で仲間を助けに行く。




それが、自分を『一番弟子』と呼んでくれた玄蔵への、大吾なりの答えだった。




静まり返る道場。 玄蔵は腕組みをしたまま、しばらくの間、じっと大吾の顔を見つめていた。




――やがて。




「……ふっ」




玄蔵の口元が、誇らしげにニヤリと上がった。




「言ったな、大吾。……いい顔になったじゃねぇか」




玄蔵は大吾の前にあぐらをかいて座り直すと、その大きな手で大吾の肩をガシッと掴んだ。




「お前たちの思い、しっかりと受け取った。……だがな、一つだけ『約束』しろ」




玄蔵の目つきが、いつになく真剣なものになる。




「ヤバそうだと思ったら、余計な考え起こさずにすぐに引け。


無理だけは絶対にするんじゃねぇぞ」




「……師匠」




「約束だ。絶対に守れよ?」




玄蔵は大吾の肩をぽんぽんと強く叩き、心からの温かい笑みを向けた。




「てめぇは……俺の『最高の一番弟子』で大事なダチなんだからよ…」




その言葉に、大吾の胸の奥が熱く熱く震えた。




視界がじわリと熱く滲むのを誤魔化すように、大吾は大きく息を吸い込み、畳に額がつくほど深く頭を下げた。




「……はいっ! 絶対に守ります、師匠!!」




「ええ、気をつけて行ってらっしゃい」




緋乃も優しく微笑み、蒼太の小さな手を握って「がんばれー」と振ってみせた。




「あぅー!(がんばれー!)」




最高の師と出会い、覚悟を決めた男。




大吾率いる『蒼武館・開拓隊』が、自らの足で新たな未来を切り拓くため、堂々と陣風を切って旅立っていく。




その背中を見送る玄蔵の顔は、どこまでも頼もしく、そして誇らしげだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。