学芸員と泡盛
仕事終わり。
高宮は駅前の通りを歩いていた。
今日は珍しく、帰り道を少し変えている。
目的地は、沖縄料理の居酒屋だった。
「……久しぶりだな」
店に入る。
沖縄民謡が小さく流れている。
カウンターに座ると、店員が注文を取りに来た。
「何にします?」
「オリオンビール」
まずはビール。
それから、
ゴーヤーチャンプルー。
海ぶどう。
ラフテー。
ミミガー。
沖縄料理をいくつか頼む。
そして最後に、
「泡盛あります?」
「ありますよ」
「じゃあ、それを」
店員が銘柄をいくつか説明する。
高宮は少し悩んで、
「これで」
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泡盛が運ばれてくる。
グラスを眺める。
「……やっぱりいいな」
高宮は沖縄料理が好きだった。
そして何より、
泡盛が好きだった。
独特の香り。
米焼酎とも違う風味。
ただし、
一つ問題がある。
強い。
かなり強い。
だから普段はあまり飲まない。
家で晩酌をするときも、
ビールや日本酒を選ぶことが多い。
今日は珍しく、
少しくらいならいいだろうと思った。
一杯目。
「うまい」
二杯目。
「……うまいな」
三杯目。
高宮は少し黙った。
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「お客さん、顔赤いですよ」
「そう?」
「はい」
「暑いだけ」
「店、そんな暑くないですよ」
「そうか」
高宮はラフテーを食べる。
「これ、うまい」
「ありがとうございます」
「泡盛にも合う」
「かなり飲まれてますけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫」
店員は少し心配そうに高宮を見る。
高宮は普段、
酒を飲んでもあまり態度が変わらない。
しかし今日は違った。
珍しく酔っていた。
しかも、
かなり。
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店を出る。
夜風が冷たい。
「……寒いな」
高宮は壁に手をつく。
少しふらつく。
「飲みすぎた……」
本人も自覚していた。
「泡盛……やっぱり強いな」
ゆっくり駅へ向かう。
その途中だった。
「あれ?」
聞き覚えのある声。
高宮が顔を上げる。
そこには、
神田。
斎藤。
松下。
三人で並んで歩いていた。
「……高宮?」
神田が目を細める。
「こんばんは……」
高宮が妙にゆっくり挨拶する。
斎藤が高宮を見る。
「え……?」
松下も黙っている。
三人とも、
高宮の様子を見ている。
「高宮、酔ってる?」
「酔ってない」
「いや、酔ってるでしょ」
「少しだけ」
「少しじゃないと思うけど」
神田が腕を組む。
「なるほど」
「何が?」
「君にもこういう一面があるのだね」
「……?」
高宮は神田を見る。
「泡盛」
「泡盛?」
「飲んだ」
「どれくらい?」
「……いっぱい」
神田がため息をつく。
「君、普段あれだけ酒について偉そうに語っているのに」
「偉そうには語ってない」
「自宅で晩酌をしているときは、もっと節度があるじゃないか」
「今日は泡盛だから」
「理由になっていないよ」
斎藤も呆れたように笑う。
「高宮、こんなに酔うんだ……」
「酔ってない」
「だから酔ってるって」
松下はしばらく高宮を見ていた。
そして小さく、
「……意外です」
「何が?」
「高宮さん、もっとお酒に強いと思ってました」
「強いよ」
「じゃあ何でこうなってるんですか」
「泡盛だから」
三人が黙る。
神田が、
「……非常に説得力のない説明だね」
と言った。
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高宮は少し考える。
「でも、うまかった」
「そこは分かったから」
斎藤が苦笑する。
「とりあえず駅まで行こう」
「大丈夫」
「大丈夫じゃないって」
「歩ける」
「それならまあ……」
三人に囲まれて歩き始める。
高宮はふらふらしながら、
「沖縄料理、いいよな」
と呟く。
「今その話する?」
「好きなんだよ」
「知ってる」
「泡盛も好き」
「それも分かった」
「でも強い」
「だから飲みすぎないでよ」
「……次から気をつける」
神田が横から言う。
「次があるのかい?」
「ある」
「懲りていないね」
高宮は少し笑った。
斎藤が呆れたように、
「もう……」
とため息をつく。
松下も小さく笑っている。
その夜、
高宮は三人に見送られながら帰っていった。
そして翌朝。
高宮は二日酔いになった。
「……泡盛、しばらくやめよう」
そう言いながら、
また呑みたいと…昨晩の泡盛に思いを馳せていた




