学芸員と禁煙
「……高い」
昼休み。
高宮は喫煙所で煙草の箱を眺めていた。
つい先日、
また煙草の値段が上がった。
一本あたりにすれば大した額ではない。
そう思っていた。
だが、一箱。
一週間。
一か月。
そうやって考えていくと、
なかなか馬鹿にならない。
高宮は煙草を一本取り出した。
火をつける。
「……うまい」
吸いながら、
箱を見る。
「これがなあ……」
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午後。
仕事をしながら、
ふと煙草のことを考える。
禁煙。
以前にも何度か考えたことがある。
健康のため。
金のため。
理由はいくらでもある。
「そろそろやめるか」
高宮は独り言を言った。
机の横に置いてある煙草を見る。
「……」
少し考える。
「今日の分が終わったら」
それがいつものパターンだった。
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帰宅後。
夕食を終える。
冷蔵庫からビールを取り出す。
プシュッ。
缶を開ける。
高宮はソファに座った。
「禁煙……」
ビールを一口。
煙草の箱を見る。
酒と煙草。
どちらも好きだ。
だから困る。
「酒飲んで煙草やめるのもな……」
何となく物足りない。
煙草を一本取り出す。
手が止まる。
「……」
一度、箱に戻す。
「今日はやめよう」
そう思った。
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十分後。
高宮はベランダにいた。
火をつける。
煙が夜の空気に溶けていく。
「……やっぱり吸うか」
一口。
二口。
「あー……」
深く息を吐く。
やめようと思った直後の煙草は、
妙にうまい。
「意思が弱いな、俺」
自嘲する。
だが、
本当にやめたいのかと聞かれれば、
それも少し違う気がした。
煙草が好きなのだ。
味もそうだが、
火をつけるまでの時間。
煙を吐く時間。
喫煙所という場所。
仕事の合間に一人になる時間。
そういうもの全部が好きだった。
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翌朝。
出勤途中にコンビニへ寄る。
レジに煙草を置く。
「……」
財布を出す。
店員が商品を渡す。
高宮はそれを受け取る。
「また買ってしまった」
外へ出る。
秋の朝。
少し冷たい風が吹いていた。
煙草の箱をポケットに入れる。
「まあ……」
高宮は歩きながら呟いた。
「値上げしたからって、急に嫌いにはならないよな」
そして、
今日も博物館へ向かった。




