表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/41

学芸員と禁煙

「……高い」


昼休み。


高宮は喫煙所で煙草の箱を眺めていた。


つい先日、


また煙草の値段が上がった。


一本あたりにすれば大した額ではない。


そう思っていた。


だが、一箱。


一週間。


一か月。


そうやって考えていくと、


なかなか馬鹿にならない。


高宮は煙草を一本取り出した。


火をつける。


「……うまい」


吸いながら、


箱を見る。


「これがなあ……」


---


午後。


仕事をしながら、


ふと煙草のことを考える。


禁煙。


以前にも何度か考えたことがある。


健康のため。


金のため。


理由はいくらでもある。


「そろそろやめるか」


高宮は独り言を言った。


机の横に置いてある煙草を見る。


「……」


少し考える。


「今日の分が終わったら」


それがいつものパターンだった。


---


帰宅後。


夕食を終える。


冷蔵庫からビールを取り出す。


プシュッ。


缶を開ける。


高宮はソファに座った。


「禁煙……」


ビールを一口。


煙草の箱を見る。


酒と煙草。


どちらも好きだ。


だから困る。


「酒飲んで煙草やめるのもな……」


何となく物足りない。


煙草を一本取り出す。


手が止まる。


「……」


一度、箱に戻す。


「今日はやめよう」


そう思った。


---


十分後。


高宮はベランダにいた。


火をつける。


煙が夜の空気に溶けていく。


「……やっぱり吸うか」


一口。


二口。


「あー……」


深く息を吐く。


やめようと思った直後の煙草は、


妙にうまい。


「意思が弱いな、俺」


自嘲する。


だが、


本当にやめたいのかと聞かれれば、


それも少し違う気がした。


煙草が好きなのだ。


味もそうだが、


火をつけるまでの時間。


煙を吐く時間。


喫煙所という場所。


仕事の合間に一人になる時間。


そういうもの全部が好きだった。


---


翌朝。


出勤途中にコンビニへ寄る。


レジに煙草を置く。


「……」


財布を出す。


店員が商品を渡す。


高宮はそれを受け取る。


「また買ってしまった」


外へ出る。


秋の朝。


少し冷たい風が吹いていた。


煙草の箱をポケットに入れる。


「まあ……」


高宮は歩きながら呟いた。


「値上げしたからって、急に嫌いにはならないよな」


そして、


今日も博物館へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ