2.シート
呑気な顔は仮面だった。
赤坂さん、ユキの友人、そして真崎さん。三人の死に、彼がかかわっている。もしかすると、直接手にかけた犯人かもしれない。
真崎さんの死を知らせたメールを思い出した。写真を目にした。いまだに信じられない。
私の頭にこびりついて離れないのは、夢で見た真っ黒な北の丸公園だ。私のせいだと責め立ててナイフを真崎さんに振り下ろす、ホンダ君の姿。
『手打ちにしませんか』
このメールで誘い出された私は間抜けかもしれない。私は彼と会って、いったい何がしたいのか。単に殺されに行くようなものかもしれないのに。
彼が誰なのかを確かめるために、多分、私は今、バイクを走らせている。
私は一人だった。
一人で高速道路をSRで駆け抜ける。
ユキに後を任せる形で彼と別れることになった。
実施事項と懸念を書き起こし、ファイルにまとめた。奇しくもそれは真崎さんが残したものと同じような、遺書のようなものになってしまった。
私は今からする愚行の正当化に努めた。つまり、殺される危険を犯して、オオカミの実行部隊の本田洋介と交渉しようとする愚行の正当化。真崎さんと同じだ。
自分の冷静な部分が働く。証言者として私が生きている必要があるだろうか?私は一瞬自問自答した。だがすぐにそれを否定した。私が死んだ場合も不可解な死として調査が入るはずだ。そしてすぐに報道と結び付けられる。
だが、それでもなお、事件がそのまま闇に葬られる可能性もあった。その場合は、ユキが真崎明日香殺害の犯人に仕立てあげられる可能性がある。
そうなったら、どうしよう。
どうしようもない道をすでにSRに乗って突き進んでいる。その自覚が脳内に一滴の波紋を広げた。だが、すでに私の自意識は愚かな破滅願望のようなもので満たされている。波紋はすぐに消えた。
クリーンに舗装された道路を進んでいく。高層ビルが次々と視界の端に消えていく。後ろから間抜けな叫び声が聞こえることもない。
ユキが後ろに乗っていたことを思い出して、泣きそうになった。私は馬鹿なのだろう。




