2. N
「ふう」
長時間バイクに乗るのは久しぶりだ。タンクに取り付けたスマートフォンの地図に表示されたコンビニでしばしの休憩をとる。
駐車場に停めたバイクが倒れない程度に体重を預け、紙カップに入ったコーヒーに口を付けた。ペットボトルで飲み物を飲んでいたユキがバイクのミラーを覆いかぶせるように置かれている私のヘルメットを触った。
「ん、どうした」
「このヘルメット、トランシーバーが内蔵されているんだな」
ユキが少し恨みがましい声で言った。
「あんなに馬鹿みたいに声を張って会話をする必要なかったんじゃないか」
「いや、知らなかったんだよ、トランシーバー内蔵だなんて」
得心したように頷きながらユキが言った。
「ああ、なるほど」
「なんだよ」
「ツーリングとか、2ケツとか普段していないからトランシーバー機能必要なかったんだな……意外と友達少ないのか」
なんだか憐れむような表情を振り払うように、私は手をバタバタした。
「うるさい。友達いるし」
確かにバイク友達はいないが。
「飲み友達とかならいる……」
「なんか心開くまで時間かかりそうだもんな、ナツって」
切り替えるようにユキが言った。
「真崎明日香との集合地点はもう近くなんだよな」
「そう、あと1時間もかからないくらいだ」
私はユキに真崎さんからの追加で送られてきたメールを見せる。そこには集合地点と地図データが送られてきていた。
「Nシステムがあるからな。そこにかからないルートを行かなきゃならない」
「Nシステム?」
「知らないかい?警察のカメラが通行車両のナンバープレートを撮影して通行状況を把握するための技術だ」
「そこを避けるルートをたどっているのか?どうやってそのルートを?」
「真崎さんから指示がきている。多分彼女が見つけたルートだ」
改めて私は地図情報を示した。既存の地図アプリに重ねる形でデータをインストールしている。
ユキは言った。
「その人は信用できるか?急に返信がきたかと思えばすぐ会おうと来たもんだ。もしも敵ならおびき出された形になる」
「もし彼女が敵なら私が最初に連絡した時点で話を聞こうとしたはずだよ。それに……」
「それに?」
私は言いかけてやめた。
「いや。さて、もう一息だ」
バイクにまたがって、ヘルメットをかぶり準備する。後ろでユキがぼやくのが聞こえた。
「電車の方が良かったかもな」




