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冤罪遺伝学  作者: 早雲
第四幕
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39/51

1.タンデム

 愛車のSRで風を切る。角度の浅いカーブが身体に心地の良い重力をかける。二輪の車体は大きく傾いて進行方向を変え続ける。


 カーブを抜ける瞬間にスロットルグリップを素早くひねった。ガソリンの混合気がエンジンに供給され、瞬間、化学エネルギーが運動エネルギーに変わる。傾いていた車体はすぐに垂直方向の力を受けて、立ち上がった。


 立ち上がりの瞬間、わずかにいつもと違う重みを感じた。もう一人分の重み。ガタイの良い分、平均体重より標準偏差一個分は重そうだ。


 それと同時にバイクに乗り慣れないであろう同乗者が心配になった。私は後ろに声をかける。


「大丈夫!?」


 私の声に情けない回答が返ってきた。


「吐きそう!」


 威勢よく言うことじゃないだろ、と思って私は可笑しくなった。


「ははは」


 整備された樹木に囲われたワインディングロード。以前は公共交通機関を使ったからそこまで感じなかったが、この道路はツーリングするのに良さそうだ。どうやらここに生えているのは広葉樹らしいが、詳しくは分からない。生物学者なのに、私は植物をあまり知らない。


 バイクの後ろにはユキがいる。今まで、誰かをバイクに乗せたことはない。バイクは私のセーフゾーンだった。だから、一人で逃げ切れるように、私は誰もバイクの後ろに誰かを乗せたことはなかった。


 この緊急事態だ。だからユキを乗せているにすぎない。


 そんなことは十分に分かっている。だけれど、大切な自分の領域に、誰かが入ることを受け入れた。それは、私が彼に対して持っている、何かのせいか。


 私は自分の変化に少しだけ、動揺しつつ、さらにスロットルグリップを絞った。

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