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冤罪遺伝学  作者: 早雲
第二幕
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9.報告

「ナツさんに頼まれた筑波支部のデータベース解析なんですが」

「何か分かったか?」

「僕に閲覧権限のないデータがいくつかありました。データ量自体はたいしたことないですけどね」

「けど?」

「外部のサーバにデータを移しているみたいです。操作の記録を確認したら、転送のコマンドが確認できましたよ」

「たしかミラーサーバはないって話だろう?」

「そうです。どこに転送しているかと思ったら、この東京本社のネットワークを通じているようなんです」


 赤坂さんの言葉が思い出された。「真下ですよ。今、我々が立っている分子生物学実験室の真下。地下十五階」


 この場所に本当に問題のシステムが構築されているというのだろうか?


「一応聞くんだけど、システムのroot権限は誰が…」

「当然、赤坂さんですね」


 私は摩天楼が見える会議室での出来事を思い起こした。


「……さっきの赤坂さんとシェパードの行動は何だと思う」

「なんでしょうね。今度、シンセに出向するから色々教えてくれよ、とか、案外そんなことかもしれませんよ」


 本気か冗談か分からないような口調で本田君は言う。


 私は気になっていることを口にした。


「さっき、この建物のネットワークにデータを転送している、といってたな」

「ええ」

「もしかして、秘密裏に作られたサーバに案内した……」


 彼ともう一度話す必要がある。私は特に考えもなく、情報システム部へ向かおうとした。


「ナツさん」


 背中に本田君の声がかかった。


「これ以上は首突っ込まないほうがいいですよ。別に大きな問題じゃないかもしれないし」

「巻き込まれているんだから仕方ないだろう。これ以上受け身でいたらその方が危ない」


 本田君は不思議そうな顔をした。


「そうですか?逆らうと怖いですよ、運命ってやつは」


 私は彼の言葉を軽く受け止めた。


「君が運命論者とは知らなかったね」

「ナツさんだって、陰謀論の検証してるでしょう?」


 そういわれると言葉もないが、その陰謀論が具体的な危機を帯びてきているのだ。もはや無視できない位に違和感は大きくなっている。


 私は冗談を言って不安をごまかすことにした。


「運命論者と陰謀論者ならいいコンビだろ?」


 呆れたように彼は言った。


「……らしくないですよ」

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