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冤罪遺伝学  作者: 早雲
第二幕
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10/41

1.バイク

 地鳴りのような振動と頼もしいエンジン音を感じながら、都会の灰色の風を切っていく。街中だからあまり速度を上げない。それでも何かから解き放たれたような感覚が私を包んだ。


 赤信号が近づく。クラッチを切って、ギアを落とす。急なシフトダウンだったから、エンジンブレーキが強めに掛かった。


 誰かを後ろに乗せていたら出来ない運転だ。荒っぽい乗り方かもしれないが、自分一人での運転だから、それもまた気楽で心地いい。


 四〇〇ccのバイク(SR)を駆るのは学生時代から好きだったが、社会人として働くようになって、ことさらに欠かせないものになったような気がする。スピードと開放感が自分を取り戻す、なんて言ったら古臭いキャッチコピーのようで可笑しい。


 だけれど、そうでもしなければ自分を見失いそうになる危機感のようなものがあって、バランスを取るためにバイクに乗っている。


 信号の色が変わった。ニュートラルからローに落とす。クラッチをつないで、動力を得た車体が勢いをつけて前に進む。セカンド、サードとギアを上げて、スピードを得ていった。


 思考をかき消すように、風の感触が身体を突き抜けた。


 これは私が過去から逃げるための道具であり、セーフゾーンだ。


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