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その七

6971

 生きる事をやめる、放棄する前に、あなたは人間らしく生きている人に出逢わねばなりません。あなたが認める人間らしさを本当に実践し、生活に反映し、それによって指針を構築に、更にその指針によって生きている人に遭遇しなければならないのです。そういう人間を一人も見る事無しに自分の人生を閉じてはなりません。未だそんな人物に出逢わずそのままで自ら死を選ぶというのなら、自ら招き寄せた死が本当に自分の眼前にやって来て最早避けられなくなった時、あなたは悲鳴をあげる筈だからです。

「私はまだ私がこの世に生まれた意味を掴んでいない。それも無しに、納得して死ねるか!」

 つらいでしょうが、まるで呼吸困難である様に息をするのも苦しく、肌は空気が触れただけでも痛いでしょうが、それでも出逢うべき人に出逢って後あなたは自らの命を処分すべきです。そういう人物に遭遇してなおあなたが生きる事に意味を見出せないというのならば、ですが。敢えて本気で申し上げます。私はあなたの人生が兎に角続く事をではなく、あなたが自分の人生に『納得する』事が出来る様に祈ります。それが真実の納得であれば人は死を深く承知して受け容れる事も出来るからです。


6972

 子供の頃の憧れと今現在の憧れ、多分内容は違うでしょう。しかしその憧れが生まれている土壌は違わないのではないでしょうか。その憧れが何から生まれているのか、その源泉が一緒なのです。如何にも私、そう言いたくなる様な何かから昔も今も自分の憧れが生まれて来るのです。

 私が欲しいのは、この土壌の部分の一貫性です。その不変です。ここが自分の子供の頃と大人になった現在とで違う事に我慢が出来ないのです。それが違う時私は自身の一切の言動に自信を失います。何事かを強く主張する事が出来ません。そんな自分を信頼出来ないからです。

 絶対に渝(か)わらないもの。それを求めない人が必ず何らの価値をも見出さず、それを求める人は餓え渇く様な激しさをもって手を伸ばすもの。そういうものによって私は自分を保つのです。


6973

 馬鹿者とは知識が無い者を指すのではなく、智慧が足りない者を指すものでさえなく、結局利己という事の範囲外に出る事のない者の事を謂うのではないでしょうか。馬鹿者とは資質なり程度なり何事かが或る一定の水準に到達せざる事をもってそうなのではなく、徹頭徹尾心根即ち『姿勢』に就いての評なのではありませんか。私はそんな風に思います。だから馬鹿者に直接に卑しさが浮かぶのです。その者が居る所に人間のそれではない影が伸びるのです。

 私は人の姿勢を見ます。努力して、挑んで達する事の出来なかったという事実の、何処(どこ)に人たるの尊厳を失わせる要素が在るでしょうか。そんな事実は何一つその人間を責める契機を生みません。人がその傍に到底近寄れなくなる程に汚くなるのは、いつも当人が承知で、十分に意識して、事前に周到に計画までして、そして自分を守る為に他人を蹴落とす事をする時です。そしてその時の自分の心と更には為(な)した結果を他人に対して隠そうとする時、この汚さは悪魔に感嘆される程度にまで至るのだと思います。


6974

 私はスパゲティが好きなので朝に奥さんが、

「今晩はスパゲティにしましょうか」

と言ってくれると、その日一日嬉しくなってしまいます。何か理由を付けて早く職場を去り、前祝いに喫茶店に行って楽しく自作の小説の校正でもしたいなどと甘えた感覚を覚えてしまいます。

 私の日常の楽しみです。そしてこの程度の事が一日私を嬉しい気持ちにさせてくれる事があると覚え、その事が嬉しくなります。私は何千円何万円をつかわずとも幸福を感じる庶民です。そうでなくてはなりません。何か努力をしてもどうせ私に絶大な収入が生まれるなどという事は無いのですが、それでも庶民にしてこの幸いあるを実感し甚だしく喜ぶのです。私は、斯かる事を本気の喜びに出来る私の毎日を守らなければなりません。だから私は卑怯な事は出来ません。私の納得から外れる事をしてはならないのです。奥さんが私の暮らしを守ってくれている事は勿論事実ですが、私が自分で守らなければならない私の幸福の根拠が厳然とあります。いつも思います。しっかりしなければ。

 ブログは毎日更新しています。

https://gaho.hatenadiary.com/

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