7、アンドウ君のことを知らないから怖いのです
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「今日この後なんたけど、アンドウ君と会うんだ」
「えっ」
私は部活の休憩中にリノちゃんに言った。
「何でそれを今、言うのよ?」
「今じゃないならいつなの?」
「アンドウ君に言われた時すぐに報告しなきゃダメでしょう? 報告、連絡、相談は絶対よ」
リノちゃんは私の親ですか?
もしかして束縛してるの?
「リノちゃん、何か怖いよ」
「嘘よ。報・連・相はいらないけど、もっと早く言ってほしかったなぁ。それだったらカレンのデートのお手伝いができたのに」
「デート?」
「デートでしょう?」
「デートなの?」
「えっ、じゃあ何なの? 二人で会って何をするの?」
「何をするんだろう?」
リノちゃんの質問に何も答えられない。
だって、本当に何をするのか分かんないんだもん。
遊園地や動物園とかに行くなんて聞いていないし、ましてや何処に行くかも聞いていないのに。
「デートでもデートじゃなくてもいいわ。でも訊いて。二人きりになる個室とかはダメよ」
「どうして?」
「だってアンドウ君のこと何にも知らないでしょう? 二人きりの空間って怖いでしょう?」
リノちゃんに言われて考えてみれば、そうかもしれない。
私、アンドウ君のことを何にも知らない。
もし悪い人だったら私、何をされるか分かんないよ。
「分かったよ。話をするんだと思うからカフェとかにするよ」
「うん。それがいいわ」
リノちゃん、ナイスアドバイスだよ。
ありがとう。
部活が終わってアンドウ君に連絡をすると学校まで迎えに来るみたい。
アンドウ君を校門の前で待つ。
アンドウ君は制服で来た。
今日、学校はお休みだから私服で来るのかと思っていた。
「どうして制服なの?」
私はアンドウ君に質問をした。
アンドウ君はスマホを取り出し、メモ画面に文字を打って私に見せてきた。
『カレンは制服だろうから合わせたんだよ』
そうなんだ。
しかし私は今日ずっとスマホと会話をするの?
『早く行こう』
アンドウ君はスマホ画面を見せてから私の手首を持ち腕を引っ張る。
えっ、何処に行くの?
アンドウ君は駅へと向かう。
二人で電車に乗って少し遠い街で降りた。
電車の中でアンドウ君は、私の手首から手を離していた。
初めて降りる街で私は不安になった。
知らない場所。
怖くなった。
するとアンドウ君が、また私の手首を持ち腕を引っ張る。
何処へ連れていくの?
足が重くなる。
怖くて足がどんどん動かなくなる。
それなのにアンドウ君は私を引っ張る。
「待って!」
私は、この状況をどうにかしたくて叫んだ。
周りの人達が冷たい目で見てくる。
アンドウ君も私を見てる。
目が怖い。
全ての人の目が怖いよ。
助けて。
「ちょっと何してんのよ? カレンが怯えているでしょう?」
この声はリノちゃん。
私が後ろを振り向くとリノちゃんがいた。
リノちゃん、助けにきてくれたの?
「カレン、こっちへおいで」
「うん」
私はリノちゃんの元へ行く。
私の手首を持っていたアンドウ君は一度ギュッと握ったけど、すぐに離してくれた。
「あんたさ、カレンの気持ちを考えてんの?」
リノちゃんの問い掛けにアンドウ君は何も言わず、リノちゃんを見ている。
可愛い顔のリノちゃんが怒ると怖さが増すのに、アンドウ君は怯えた様子もない。
「こんな知らない場所に連れてこられて怖くないとでも思った? ただ学校で隣の席だってだけで、ほとんど知らない人と一緒にいて怖くないとでも思ったの?」
アンドウ君は何か言いたそうにしているけど何も言わない。
「どうして何も言わないのよ。声って、感情表現だったり、人にとってとても大切なのよ? 分かるでしょう?」
リノちゃんの問い掛けにアンドウ君が口を開く。
「分かる。それは僕が一番、分かってる」
アンドウ君の声はやっぱりツバサ君の声と同じだ。
胸がドキドキしてる。
アンドウ君?
ツバサ君?
私、どっちにドキドキしてるの?
「それでカレンを何処に連れて行くつもりだったの?」
「ここ」
アンドウ君はすぐ横に置いてある看板を指差す。
カラオケボックスと書いてある。
「カラオケ? そんなの、こんな遠くじゃなくてもあるでしょう?」
リノちゃんは呆れている。
「何か理由があるんだよね?」
私がアンドウ君に訊くと、アンドウ君は大きく頭を縦に振って頷く。
「カレンはアンドウ君に甘いのよ」
リノちゃんが暴走しちゃう。
このままだとアンドウ君がリノちゃんの餌食になっちゃうよ。
以前、リノちゃんの餌食になった人を見たことがあるけど、その相手は傷付きすぎて放心状態になっていたよ。
まぁ、その人は痴漢だったからリノちゃんの好きなように言わせてあげたんだけどね。
痴漢をされた女の子は、リノちゃんのことを大好きになっていたよ。
そんなリノちゃんが暴走したら私は止められないよ。
「リノ、行くぞ」
いきなりトモ君が現れた。
トモ君がいるなら大丈夫だね。
「トモ。でもアンドウ君には、ちゃんとしてもらわなきゃカレンが可哀想なんだもん」
「それは二人のことだからリノには関係ないんだよ」
「私のカレンなのに」
リノちゃんはトモ君に手を繋がれ大人しくなった。
やっぱり幼馴染の彼氏は最高だね。
扱い方がバッチリだよ。
それからリノちゃんとトモ君は帰っていった。
後で聞いたんだけど、リノちゃんとトモ君は私とアンドウ君を尾行していたみたい。
リノちゃん、心配してくれてありがとう。
「ここに入るんだよね?」
私はアンドウ君を見てからカラオケボックスの入り口を見る。
「えっと、その、ごめん」
アンドウ君は申し訳なさそうに言う。
分かってるよ。
「まずは中に入ろうよ。それから教えてよ。ここに来た理由を」
「うん」
そして私達はカラオケボックスの店内へ入る。
一つ部屋を借りて二人で中に入る。
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~次話予告~
アンドウ君の喋らない理由を聞いて、カレンは思ったことをアンドウ君に伝える。
そしてカラオケボックスの部屋でアンドウ君の手からお菓子を貰い、アンドウ君から“可愛い”と言われたカレンは戸惑ってしまう。




