6、アンドウ君はもとの顔が良いからイケメンなのです
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「何をニヤニヤしてるのよ?」
次の日、私が教室に入るとリノちゃんが言ってきた。
「それがねアンドウ君と約束をしたの」
「あれ? 奇跡のイケボ君じゃなかったの?」
「アンドウ君はアンドウ君だよ」
「そうなのね。それで約束って何?」
「前髪よ」
私は前髪アップのヘアスタイルを指差しながらリノちゃんに言う。
「前髪? カレンは可愛いから何でも似合うけど前髪アップは、もっと可愛いわね。私の大福にそっくりよ」
リノちゃんが言う大福とは、リノちゃんが飼っている真っ白なウサギさん。
リノちゃんは初めて私を見た時に、その大福にそっくりで友達になるって決めたみたい。
大福のおかげで私とリノちゃんは、お友達になれたのよ。
そんなリノちゃんは大福と似ている所を見つけると私に言うの。
私が大福のようにまん丸なんて言ったり、私が大福みたいにぷにぷにって言って頬っぺたをツンツンするの。
他には、大福みたいに白いとか、大福みたいにすぐ拗ねるとか、大福みたいにおやつが大好きとかかな。
リノちゃんは、私がリノちゃんの手からお菓子を貰う時が一番そっくりだって言うの。
大福もリノちゃんの手からおやつを貰うみたい。
そんなリノちゃんの大福への好きな気持ちは伝わるから、私は怒ったりしないよ。
リノちゃんが大福が好きなように、私のことも好きだって分かるからね。
私もリノちゃんが大好きだよ。
「大福のことはいいの。今は、この前髪のことよ。私が前髪アップにすることでアンドウ君が前髪を切ってくるのよ」
「えっ、あの長い邪魔な前髪を?」
「そうなの。だから楽しみにしててよ。アンドウ君はイケメンなんだから」
「イケメン? アンドウ君が?」
リノちゃんは信じられないという顔で私を見てくる。
「ねぇ、あんな人が、このクラスにいた?」
クラスメイトの女子がコソコソと話をしているのが聞こえた。
これはまさか、、、。
私が振り向くとアンドウ君がドア付近に立っていた。
やっぱりイケメンだ。
女子がキャーキャー言っている。
「アンドウ君、おはよう」
私は騒いでる女子に聞こえるようにアンドウ君の名前を呼ぶ。
みんな驚いている。
アンドウ君は何も言わず小さく会釈をした。
これがアンドウ君の挨拶なのよ。
リノちゃんを見ると驚き過ぎて口が開いていた。
「前髪がないだけで、こんなにも違うなんて」
「リノちゃん、前髪のおかげだけどアンドウ君はもとが良いのよ」
「なんだかカレン、自慢気ね」
「そうだよ。私が見つけたんだもん」
「でも敵が増えるわよ」
「敵?」
「女子が集まりだしたわよ」
リノちゃんの見ている方向を見ると、アンドウ君の机の周りに女子が集まっている。
「私が一番目のファンなんだからね」
「カレン、アンドウ君はツバサ君じゃないのよ?」
「分かってるよ」
「それならいいんだけど」
先生が教室に入ってきて皆が自分の席へ着く。
私はアンドウ君を見る。
やっぱり完璧だよ。
髪の毛を全体的に短く切って無造作ヘアーだね。
「やっぱり前髪は無い方がいいね」
私が言うとアンドウ君は笑って私の前髪を指差す。
「似合う?」
私が訊くとアンドウ君は大きく頷く。
「二人でイメチェンをすれば、なんにも怖くないよね?」
「ふっ」
またアンドウ君は笑うのを堪えている。
「もう。笑ってばかりいないで喋ってよね」
私の言葉にアンドウ君は笑うのを止めた。
私、変なことを言ったかな?
それからアンドウ君は私の方を見ずに前だけを見ている。
授業中も前だけを見ている。
なんなのよ。
私がアンドウ君の嫌がることをしたなら教えてよ。
じゃなきゃ分かんないわよ。
休み時間になるとアンドウ君の周りに女子が集まる。
でもアンドウ君は一言も喋らない。
女子達は喋らないアンドウ君に飽きて集まらなくなった。
イケメンでも喋らなかったらポンコツ認定されるのかな?
「あっ、教科書がない」
私ったら次の授業の教科書を家に忘れたみたい。
どうしよう。
アンドウ君には言えないし。
するとアンドウ君が私から離れていた自分の机をくっつけた。
そして真ん中に教科書を置く。
「あっ、ありがとう」
気まずくてアンドウ君を見れなかった。
授業が始まり私達は黒板を見る。
アンドウ君から私の手に、お手紙が渡された。
いつものノートの切れ端だった。
それを読む。
そして、そのお手紙を机の真ん中に置いた。
『ごめん』
『どうして謝るの? 悪いのは私でしょう?』
アンドウ君の言葉に返事を書き、アンドウ君の顔を見て机の上にあるノートの切れ端を、トントンと爪で叩く。
するとアンドウ君は私の言葉に返事を書く。
『僕だよ。僕が怖がっているからなんだ』
『二人でイメチェンすれば怖くないでしょう?』
『違うんだ。僕は声を出すのが怖いんだ』
『声? だから喋らないのね?』
『そう。カレンには怖がられたくないんだ』
『怖い? 怖いのはアンドウ君でしょう?』
『そう。でもカレンも怖がるよ』
『どういう意味?』
『明日、少しだけ時間ある?』
『明日? 土曜日だから部活が終われば時間はあるよ?』
『それじゃあ、部活が終わったら教えてよ』
アンドウ君は文字を書いた後、スマホを私に見せてきた。
連絡先の交換だと私は、すぐに気付き連絡先の交換をした。
その後は普通に一日が過ぎた。
アンドウ君は何をしたいのだろう?
私に何を伝えたいのだろう?
私は不思議に思いながらも楽しみな気持ちもあった。
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~次話予告~
約束の場所にアンドウが来ると、カレンの腕を引っ張りアンドウ君はカレンを知らない場所へと連れてきた。
知らない場所で不安になるカレンを助けてくれたのは、やっぱりあの人だった。




