5、アンドウ君もツバサ君も私の推しです
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
「あれ? 風邪かな?」
毎週水曜日のツバサ君のラジオを聴いているとツバサ君が咳をした。
咳払いじゃなくて定期的に咳をしている。
先輩の声優さんがツバサ君を心配している。
私も心配になり心の声が口から出ていた。
本当に大丈夫?
「美味しいご飯を食べたし、ちゃんと眠れたので治りますよ」
ツバサ君を心配した先輩の声優さんが“早く治さないと仕事に支障があるぞ”なんて言っていたけどツバサ君は自信満々にそう言った。
ツバサ君も私と一緒で風邪はご飯を食べて、ちゃんと眠れば治るって思っているのかな?
ツバサ君の言葉を聞いて先輩の声優さんが、ツバサ君が嬉しそうにしていると言う。
そんなに美味しいご飯だったのかな?
「アンドウ君、今日も休みなのかな?」
「えっ、リノちゃん?」
私が朝、自分の席でぼ〜っとしていたらリノちゃんが耳元で言う。
そんなリノちゃんに驚く私。
「カレン、いい加減、認めたら?」
「何を認めるの?」
「アンドウ君が好きなんでしょう?」
リノちゃんに肩をツンツンとされながら言われた。
「好き? 私はツバサ君がいるもん」
「ツバサ君は推しでしょう?」
「推し、、、」
そう、ツバサ君は推しなのよ。
そうよ!
アンドウ君も推しなのよ。
ツバサ君と同じ声のアンドウ君はツバサ君と同じで私の推しなのよ。
「リノちゃん、私はアンドウ君も推しにするわ。ツバサ君とアンドウ君は私の推しなのよ」
「それでいいのかな?」
「いいのよ」
リノちゃんは納得していないようだったけど、先生が教室に入ってきて自分の席へ戻った。
今日もアンドウ君はお休みなのかな?
熱を出した日からアンドウ君は学校を休んでいる。
気になってチラッと隣の席を見ると誰かが立っていた。
その誰かはアンドウ君だった。
いつの間に来たの?
でも今日は来たんだね。
体調は大丈夫かな?
「おはよう」
私が言うとアンドウ君はペコッと頭を下げて会釈をした。
おはようの一言も言わないの?
なんで喋らないんだう?
「体調は大丈夫なの?」
アンドウ君は頷く。
顔色も良さそうでよかった。
「ブラック企業でバイトは辞めたほうがいいんじゃないの?」
「ふっ」
私の言葉にアンドウ君は笑いを堪えている。
「どうして笑うのよ?」
「カレンが、、、」
アンドウ君が私の名前を言った。
それなのにアンドウ君はその後、何も言わない。
「私が何?」
アンドウ君は首を横に振って何でもないと言っているようだった。
せっかくツバサ君と同じ声で私の名前を言ったのに。
もっと聴きたかった。
推しのことをもっと知りたい。
ツバサ君のことはネットで検索をすれば、どんなアニメの声優をしているのかツバサ君情報はたくさん出てくる。
でもアンドウ君をネットで検索したって出てくるわけがない。
どうやって情報収集をすればいいのかな?
私は、まず自分の目を使った。
アンドウ君を頭の先から足の先まで見た。
座っているアンドウ君の足は長い。
やはりモデルさんのようなスタイルで羨ましい。
以前リノちゃんに“まん丸で可愛い”って言われた私とは全然違うよ。
次に指を見る。
長くて細い指。
でも女の子とは違ってゴツゴツしている男の子の手って感じ。
シャーペンの持ち方がキレイ。
お手本のような持ち方。
私なんてリノちゃんに“可愛いお手て食べちゃいたいくらい”なんて言われる手だよ。
次は顔を見る。
前髪が長過ぎて目が見えないけれど、たまに見える目元はパッチリ二重。
横から見ると睫毛が長い。
私だって睫毛の長さは負けないよ。
でもビューラーで睫毛を上げても、いつの間にか下がってて困った睫毛ちゃんなの。
それから、お鼻とお口は言う所無しで完璧よ。
私みたいにコブタちゃんのようなお鼻じゃないし、どんなお菓子も一口で頬張る私とは全然違うよ。
完璧過ぎるアンドウ君。
唯一残念なのは前髪だと思う。
せっかくのイケメンさんなのに勿体無いよ。
アンドウ君と目が合ってしまった。
気付かれないように見ていたけどバレたかな?
アンドウ君がノートの端で作ったお手紙を私に渡してきた。
私はお手紙を読む。
『何? 僕に何かついてる?』
アンドウ君に見ているのがバレた。
なんて答えよう。
ここから手紙のやり取りが始まった。
『前髪、切らないの?』
『切らない』
『どうして? 邪魔じゃないの?』
『これでいいんだ』
良くないよ。
せっかくのイケメンさんが勿体無いのよ。
「明日、私は前髪を上げて来るよ。おでこ全開でね」
アンドウ君は、私が何を言っているのか分からないようで眉間にシワを寄せた。
だから私は前髪を上に上げて、その前髪を手で抑えた。
「私は前髪アップにするから、アンドウ君は前髪を目が見えるように短く切ってきてよ。これだったら二人共イメチェンだから一人でするよりも怖くないでしょう?」
私はアンドウ君はイメチェンをするのが怖いんだと思ったから、私も一緒にするよって言いたかった。
「ふっ」
アンドウ君は笑いを堪えている。
何?
私また変なことを言ったの?
アンドウ君は笑いながら“分かった”と口パクで言った。
やった~。
大成功だよ。
明日はアンドウ君のイケメン姿を拝めるよ。
楽しみだ〜。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。
~次話予告~
アンドウ君が前髪を切ると、女子が集まる。
せっかく女子からイケメン認定されたのにアンドウ君は喋らない。
何故、喋らないのか訊くとアンドウ君は怖いからと言う。




