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6-7

「おーようやく私の指切れたねー」

他人事のようにスパッと切れた右指3本の断面を見ていた上米良は、ハンドルを握り玉粒の汗をかいて肩で息をする幸に向けて「アロハ〜」としょうもないギャグをした。

「あの、潰れたミミズみたいで気持ち悪いんで楓ちゃんに早く治してもらってください、上米良先輩」

 デスマッチ部で積み重ねた、グロ体制がある幸は淡々と告げる。


「あれ? 上米良先輩の飛んでいった指、捌いたタコの脚みたく蠢いてません? 気のせいだよね?」

「上米良魔技の指ならありえる」

「いや、キミ達、私を何だと思っているんだ」

 飛び散った指を見て冗談まじりにホラーチックなことを言う、3人を疲労から大の字に寝転び眺める、幸は破壊と強化を何十回も繰り返してようやく仕事を終えた重労働者である血に染まるフードプロセッサーを見る。


 ーーそれにしても、楓ちゃんの強化って凄い。破壊と再生を繰り返す度にドンドン刃が強くなっていって、最初、傷一つ付けれなかった、上米良先輩の指を段々と肉を削り、骨を…私は何をワクワク思い出しているのか、やめよう。


 幸は頭を振り、頭を振ったことで忘れていたモノを思い出す。

「そういえば、上米良先輩。リアクションって取られましたっけ?」

 幸に振り向いた上米良は自身の血に染まる手を見ながら「アイタタタタタタタター」と叫び、床にわざとらしく崩れ落ちる。


「上米良先輩。そんなんだから、何も知らない人からデスマッチなんて八百長とか言われちゃうんですよ。知ってます? 今だに学園内だけでも、あの部は修復士を使って胡散臭いことをしているってちらほら言われているの」と雅が冷ややかに見つめながら言う。

「なるほど、未だそんなふざけたことを抜かす奴がいるのか…威勢だけよく元気な奴がいるな、まぁいい。言いたい奴には言わせておけ」


「でも、デスマッチ部に入って練習している身の私からすると、何も知らないで言ってくるのはちょっとムカつきますけどね」

「では、姫香。キミがその何も知らない批判してくる者達に向けて、日常生活で感じる痛みなど、たいしたことがないと、言わしめるぐらいのリアクションを見せてやればいい」

ミナホに傷を治してもらった上米良が部室の棚からカメラを取り出し構える。


「撮影ですか?」幸が高そうなカメラを構える上米良を見ながら言った。

「そうだ。今回撮った動画はネットに載せてこの部活の収益にする」

「ふーん。デスマッチ部って部活を維持する為にどうやって収益を得ていたのか不明だったけど、こうやって動画撮って稼いでいるのね」

「まぁ、メイン収益は動画じゃないが、動画も撮っているって所だね」


「あの、」

「何だ幸?」

「動画ってことは雅さんだけじゃなく私の顔も出るんですよね?」

「無論出るぞ。顔をモザイクなんかで覆うと、ただのグロ映像になってしまうだろ」

「顔出しあっても十分にグロでしょうが」

「そうですか…でも、雅さんみたいに私、華がないですし、大丈夫でしょうか?」


「安心しろ幸。お前には、人を惹きつける力がある。それに、例え魅了にかける奴でもド派手に血を流すだけで、その瞬間主役がガラリと入れ替わる」

「は、はぁ…」

「まぁ、気楽にやろうよ。どうせこんな動画見る人少ないだろうし」

 雅に肩を叩かれ幸は同意を込めて頷いた。


 撮影用にどうせなら派手にお願いと雅から刺す場所の指定をされていた幸は、竹串の束を振り上げ、先端から雅の頭に突き刺し「ごめんなさい! ごめんなさい!ごめんなさい!」と上から串をーーゴン、ゴン、ゴンと叩き手をパッと離した。

 雅の頭に縁起良く松の葉が咲、頭から搾りたて果汁100%のツヤツヤした赤い汁が雅の顔面を染める。


 雅がカメラ向け痛々しく笑った瞬間、部室のドアが勢いよく開かれーー。

 何も知らず部室に顔を出してしまった眼鏡女子が今にも泣きそうな顔で扉前で固まった。


 ◾️


「新聞部の田中マオです。調理部、部長の紹介で参りました」

 椅子に座り縮こまる田中が、先程からデスマッチ部員と目を合わせない為か、必要以上に眼鏡を拭く。

「なるほどな」

 上米良が田中から渡された便箋を読み終えると、自分の財布から3万円を抜き田中に渡す。


「あの、いいんですか? お金頂いても」

「遠慮するな。足りない分については後で渡す」

「ちょ、ちょ、ちょっと話が見えないんだけど」

 雅が生々しい金のやり取りに異議を申した。

「調理部からの指示だ。今後まともな料理を食べたいのならその新聞部員に6万をあげろとのことだ。雅も幸も調理部には日頃お世話になっているだろ」


上米良に言われて、幸は今日の朝、部室で食べたシャケご飯と卵スープ、ささみフライ、ほうれん草のソテー、ヨーグルトなどを思い出す。

「でも、その子、新聞部でしょ? 調理部と関係ないじゃない」

「新聞部だけあってよほど上手い交渉力を持っているんだろ。じゃなきゃ、あの偏屈な女がこんな紙を書くわけがない」

「あの、交渉はしてないですし、部長さんはいい人です」


「そうか、気に病むようなこと言って悪かったな」

「いえ、大丈夫です。気にしていません」

「それじゃ、あとは新聞部にお金を届けるっと言うことで」

上米良が話は終わりとばかり、田中に向けて、帰り支度を諭すがーー。

「あの、デスマッチ部の取材をさせて頂きたいのですが」


 田中が上米良に向けてお願いをする。

 一瞬迷った上米良だったが、「調理部のイチゴに救われたな」と小さく呟くと「好きにしろ。だが、参考までに取材内容を聞いておきたい」と田中の目を見た。


「デスマッチ部に入った雅姫香さんと、日比谷幸さんの動機やデスマッチ部での活動内容などを取材させて頂きたいのですが…」

 上米良に不安な表情を浮かべながらも、田中は自分のしっかりした思いを喋った。

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