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6-4

 キツケによる症状で扁桃体が阻害され、恐怖心がなくなり、知的好奇心に関係ある脳内ドーパミン量が増加。結果、高層からの命綱なしで綱渡りに挑戦する無謀者や、食料なしでジャングルを旅する冒険家、または、街中でナイフを突きつけられた程度では臆することのない人種に変身ーー。


 一見、個人主義社会において、チャレンジ精神旺盛で、恐怖心が少ない人間は無敵で周囲の目を惹き羨ましく思われるが、それがあまりにも強い場合、孔雀の豪華過ぎる羽根やシカの馬鹿でかいツノのように、それを身につけているだけで簡単に命を落としかねない状態に陥る場合がある。


 幸や雅もソレを身に付けてしまった側になり、望んでいるいないにも関わらず、ソレの影響が少しづつ出ていた。


「よし、学生らしくたまには楽しいゲームをしようか後輩達」

 上米良が3つの箱を持ち上げると2人に向けニヤリと笑った。

 ここで、上米良が目覚めた幸、達に向けて提案したゲームの内容をビシバシと紹介しよう。


『学園の、道具を使って、相手を破壊しよう!!』

 説明!!

 技を受ける挑戦者を決めて、番号が書かれたそれぞれの箱からクジを引いて行く。


❶学園内にある道具が書かれている。

❷プロレスに関する技。

❸道具の使用者。


「まぁ初めてでよく分からないと思うから、実際にやってみるか」

 上米良が床に箱を置き次々と紙を引いたーー。

 ❶蛍光灯❷膝蹴り❸雅姫香

「よし、分かりやすく蛍光灯が出たな。それじゃあ姫香。その道具と技を組み合わせて、私を攻撃してみてよ」


 上米良は雅に蹴りやすくする為にあぐらをかく。

「不思議なんですが、上米良先輩。今物凄くワクワクしてます!」

 ワクワクと口に出し雅が躊躇なく立ち上がると、目を輝かせ、部室内隅に立て掛けてあるロッカーの中から縦長の蛍光灯を3本取り出し、雅は駆け足で上米良の元に戻るーー。


「口開けてくださいよ、先輩…」

 上米良が口を開けたそこに雅は背後から蛍光灯を1本横に滑らせ噛ませる。続け更に上から2本重ねーー。

「行きますよ、先輩!!」

 雅は上米良の後頭部から膝蹴りするーー。

 パカッツ!! 小気味よく蛍光灯が割れ破片と、煙が舞った。

「と、まぁこんな感じだね、分かったかい?」

 

 上米良が口に入った破片を吐き出し、何事もなかったかのように、2人に問う。

「はーい」

 素直な幼子のように疑問を持たぬ元気な返事が2人から上がる。

 その光景を部室内の備品をドーナツを咥えながら修復するミナホがチラチラと眺めた。


 何はともあれ、楽しいゲームが始まった。

「さて、次は2人の内どちらが挑戦者をやる?」

「上米良先輩でいいと思いまーす」「私も雅さんと同じく、そう思いまーす」

「却下だ。次つまらない冗談言ってみろ、はっ倒すぞ」

「それじゃあ、民主的に多数決で決めたらいい思いまーす!」「賛成賛成!」


 上米良が雅に向けてローキックを放ちーー。

 雅が後方にぶっ倒れる。

 「あー、先輩。い〜けないんだー、いけないんだー、こーかけんりょくに言ってやろ〜」

 上米良が前蹴りを放ち幸の体が吹っ飛ぶ。

「分かった。それじゃあ公平にジャンケンで決める」

ジャンケンと聞いて幸と雅が「さんせー」と声を上げ、2人は耳打ちをすると、上米良に向けて2人でグーを突き出す。


「上米良先輩。私とさっちんはグーを出しまーす!!」

「グーを出す? それじゃあ私がパーを出せば勝てると」

「はい、そうでーす。でも、先輩は確かいいましたよね。プロレスとは受けの美学だと、相手の技をわざとうけて、相手や観客に自分の強さを見せ付けるのだと。そんな素晴らしいことを言ってのける先輩がグーを出す相手に対して、パーを出すなんてしょうもないこと、しませんよね〜」


  雅が上米良の目を見て口を広げる。

「ひめさん! そんな当たり前のことを言ったら先輩に失礼ですよ! 先輩は立派なプロレスラーですよ! しかも、ジャンルはデスマッチ! そんな先輩が、そんな! 失礼ですよ!」

 幸が身振り手振りを交え大袈裟に煽りに煽る。

「御託はいい。さっさとやるぞ」

 上米良は冷笑し拳を出す。


「「「ジャンケンポン!!!」」」

 グー2つに、チョキ1つ。上米良魔技の挑戦者決定! とは、ならずーー。

 結果を見て喜ぶ2人に向けて上米良は出したチョキで、素早く2人の目元に向けてサミング(目潰し)をした。

「「ッッツツツ!!」」

 2人のグーが瞬間解かれ、パーパーパーパーになる。

「なんだ、そんなにパーを出したのかキミ達。それならそうと、早く言ってくれグーではなく、私はチョキを出してしまった」


 目に涙を溜める2人と上米良の二、三不毛なやり取りが続きーー。

 無事挑戦者は雅姫香に決まる。

 雅がクジを引くとーー。

❶脚立❷ボディプレス❸日比谷幸

 と書かれていた。 


「あの、ハシゴって部室内にありましたっけ?」

 幸が部室内をキョロキョロ見渡す。

「ないぞ。ないから走って取ってこい幸」

「え?」

「10分間、時間をやる。10分過ぎた場合、技を受ける側が入れ替わり、幸が受けることになるので、よろしく。ほれ走れ!」

「頑張れー幸〜」

 雅が幸に向け手を振る。ーー「は、はい!」幸は脚をもつれさせながら部室から飛び出した。


 幸が6分25秒で第1、2、3学園とある馬鹿でかい学園内から第1学園1F倉庫にあった自分の身長の3倍以上もある5mアルミ脚立を抱えガシャンガシャンと音を立て部室内に戻る。

「戻りました…」

 息を切らした幸は脚立ごと、部室内に倒れた。


「お疲れ様」幸は雅から水を受け取り喉を鳴らし飲む。

「それで、私は仰向けで寝ておけばいいかな?」

「はい。それでお願いします」

 ーーどうしようかなぁ…。

 室内の約半分ぐらいの高さある脚立と硬い床に寝転ぶ雅を見ながら幸は考える。


 ーー普通に上米良先輩が以前やったことがある脚立の上から飛ぶやり方で…。

 脚立を触りながら確認していた幸は、その脚立が剪定で使うような一本脚にガシャンと変形して使用できるこに気付く。

 幸は興奮すると、留め金を外し足場を2本から1本に、長さ約10m、4階ほどの建物の高さに変形させ、脚立をほぼ垂直に壁に立て掛ける。


「はい! はい! はい! はい!」

仰向けで寝転がる雅の手拍子と掛け声を受けて、ギッギッギッギと不安定な足場を躊躇いなく登っていた幸は不意に体が後方に持ってかれるーー。

「あー」(幸の声)「あーー」(雅の声)

 5m付近から幸は背中から落下ーー。


 幸に合わせ脚立も倒れるが、脚立は無事上米良の手により助かる。


 ドン!!


 背中から雅の腹部に当たり、雅の体がくの字に曲がるが、骨や臓器が破損する不吉な音は彼女の中から聞こえてこない。

「ちょっと幸〜」「ご、ごめんなさい」

 2人は顔を見合わせ楽しそうに笑う。

「次は失敗しないように、私が脚立を抑えておく。もう一度飛んでみろ幸」

幸は上米良に元気に返事をして頷く。脚立を掴んだ幸に雅は口を開いた。


「幸。普通に受けるだけじゃつまらないから、私、うつ伏せで構えとく」

 雅が仰向けからうつ伏せに変わるーーそれを見た幸は雅に言った。

「いいですね、それ! あ、でも、せっかくうつ伏せで受けるなら、椅子と椅子に体を寝かせて体を橋みたいにしてみないですか? そっちの方が攻めても、受けても断然派手だと思います!」

「なに、なに、それ、いいわね! やるやるー」

 雅が椅子を2脚、対角に離して置き頭を片方の穴に、両脚をもう片方の穴に突っ込み入れ、うつ伏せで待機した。


 真っ直ぐなったその姿はさながら歩道橋のようだった。


「それじゃあー行きますねー」

 地上高さ10m付近から大声で和かに手を振り幸は雅に合図を送る。

「おっけー、おっけー、いつでもいいよー」

 雅も地上から鳥のように手をパタパタして合図を送った」

 幸がバッと体をスーパーマンのようにして飛ぶーー。

 その50キロ程の肉塊(日比谷幸)が人間の背骨に向けてグングンと加速するーー。


 接触時、雅の体からボンッ!! と鈍いクラッカー音がなり、雅の体がプレス機に掛けられたように、グニュンッッツツツ!! と急角度で曲がり、まるで生ゴミ袋から突き出る割り箸のように、雅の体からぬちゃぬちゃとした骨が開放し顔を出す。


「雅さん。大丈夫ですか?」

 幸が雅から起き上がり、辺り一面、赤黒く。寸胴に入った豚骨スープをひっくり返したようなにドロドロの液体を幸は目にする。

 その、液体スープの中に幸は一筋の輝く骨を見つけた。


「わ〜雅さんの骨、トキトキで可愛いいいいいい!!」

 キラキラした目で幸は臆することなく、雅の穴まんじゅうに腕を突っ込み、ぐちゃぐちゃにかき回してその立派な骨を取ろうとしたーー。

「ご、、、」


 幸に体の中をかき回されるたびに、雅が打ち上げられた魚のように、ビクビクと震え酸素を求めるように口をパクパクする。

「日比谷幸、それ以上やると雅姫香が死ぬから手を離せ」

ミナホがドーナツを床に置いて、幸の手をパシリと叩くと雅に手をかざすーー。


「ちょっと、幸! 私の骨を好き勝手に弄くり回すなんて、酷いじゃない! 私、人から直接、肋骨触られるの初めての経験だったのよ!」

 元気になった雅が身を起こし少し顔を赤て言った。

「ごめんね。雅さんの骨があまりにトキトキで可愛かったからつい…」

「わ、私の肋骨が可愛いかった…」雅が腕を組みソッポを向きながら続けた。「ま、まあ、反省してるならいいのよ。でも、その代わり、次は幸の背骨触らせもらうからね!」


「え、いいんですか…肋骨じゃなくて?」

「ええ、背骨でいいわよ、私、肋骨より背骨の方が好きなの」

「そ、そうなんですね…背骨が好きって雅さんて意外とエッチでマニアックなんですね…」

「な!!!」

「はいはい、次のゲーム行くぞー後輩達ー」

 平常心の上米良が手を叩いて、場を仕切り直す。

お読みいただきありがとうございます

明日は投稿をお休みします

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