6-2
「先輩って人間とサイボーグとのハーフなんですか?」
雅が手に持っていた曲がったバットを投げ付けたーー。
「面白い冗談だ。だが、私など、まだまだサイボーグには程遠い」
向かって来たバットを上米良は片手で受け止め笑った。
「確かに、私が振りかぶったバットで、頭、少し腫れてますもんねッッ!!」
雅が床に転がっていた椅子を上米良に投げ飛ばすーー。
上米良はそれを避けず、頭で受け止めた。
ーー音が響き椅子が割れ、ただのガラクタとかす。
雅が続け両手で、机を投げ飛ばすのを確認した、幸は近くに転がっていた椅子を上米良に向け同じくぶん投げた。
上米良は次々と飛来してくる椅子や机を避けることなく全てその身で受け止める。
「飛び道具か面白い。だがーー」
その歩みを止めることなく幸達にゆっくりと近付いた上米良は、飛んで来た机を2台を掴み言った。
「デスマッチ部員なら、その椅子や机を使用していかに派手に相手を壊すか考えないといけない」
上米良が椅子2台を床に置くと、突然その身を素早く加速させーー。
驚きの表情を浮かべた幸を飛びエルボー(肘打ち)で沈め、背後から掴んだ椅子をぶん回そうとした、雅を腰を捻り、鋭い逆水平チョップで同じく床に沈めた。
声にならないうめきをあげる両者を一瞥した上米良は部室の窓際に近寄りーー。
窓枠に両手を掛けーー。
バッツッッツ!!!!
身をすくませる音が一瞬鳴りガラスが取り外される。
ひび割れたガラスを設置していた机と机の間に橋渡しで乗せーー。
上米良は痛みでうめく、雅の腹を上からストンピング(踏み付け)し担ぎ上げーー設置したガラスの上に寝かした。
ついで、歯を食いしばり立ち上がった幸の力のこもらないエルボーを何発か腰を下げて顔で受けるーー。
「どんな技も全身を使うんだよちびっ子ちゃん」
といい張り手で幸の顎を揺らし、戦意を奪う。
朦朧とした意識の幸は上米良に担がれーー。
ガラスに横たわる雅の前まで連れて来られるとーー。
そのまま体を反転させられ、腰を持たれーー。
上米良の綺麗に反ったジャーマンスープレックス(反り投げ)を喰らう!!!!
部室内に雷鳴が鳴り、隅で見守っていたミナホの体が衝撃で上がった。
「悪い、楓さん。この子達至急治してやって」
「当たり前!」
上米良を睨むと帽子を押さえながらバタバタとドーナツの紙袋を抱えたミナホが駆け寄り、倒れ伏す両者の前に膝を下ろす。
「しっかり治すから!!」
ガラス片と血に埋もれた2人へ向け、ドーナツを置き、ミナホは手をかざしたーー。
眩い光に包まれ、2人の体が治る。
「くそ、本当に人間なのアレ?」
「楓ちゃん、ありがとうございます」
ガラス片を払い立ち上がった幸と雅はお互いに目配せをする。
「キミ達、まだ、やるかい?」
「当然よ!」「はい!」
「じゃあ次は本気で頼むよ」
上米良の顔に笑みが広がる。
山のようにびくともしない上米良をどうやって攻略すればいいのか、幸は視界を動かすが妙案が浮かばない。余計な考えを捨てガムシャラに勢いで突撃すると、呆気なくヘッドシザーズホイップ(相手の頭を両脚でハサミ投げる)を上米良から喰らい、椅子と机の藻屑に頭からガガガガガッッ!!! と沈む。
上米良が幸を飛ばし態勢を立て直した直後ーー。
雅が上米良の背後から椅子の脚部分を闘牛のツノのように見立てーー。
「吹っ飛べェエエエエエエ!!!!」
体ごとスピアー(タックル)をかます!!
2本脚が上米良の体にぶつかり、上米良の上半身が大きく歪んだ、しかしーー。
「受け身の練習だ、しっかり歯を食いしばれよ」
上米良の長い手が伸び雅の頭をヘッドロック(顔締め)して、そのまま勢いよく助走を付けるとーー。
上米良が雅の頭を締めたまま飛びーー。
ブルドッグ(ヘッドロックしたまま顔面から叩きつける)を決めたーー。
「ァァアアアアアアアアアアアア!!!!」
打ちどころが悪かったのか雅が顔を両手で覆いのたうち回る。
その上から上米良は体を反りーー
捻りを加えたその場飛びムーンサルト(バク転プレス)をみまうーー。
「ッッッッッッッッ!!」
砂浜に突っ込むビーチフラッグ競技者のように、幸が寸前で雅の体を退かし、代わりに上米良の衝撃を背中から受けた。
「やるね幸。ここがリング内ではないのがもったいないよ」
上米良が向きを素早く変えると、背後から幸の腕を取りアームロック(腕捻り)で腕を捻り上げていく。
「ァァアアアアアアアアアア!!!!」
腕一本を決められただけで、幸は痛みのあまり上半身が動けなくなるーー。
脚をばたつかせ、なんとか抜け出せないかもがくが、動かすたびに激痛が体を走る。
「3ーー」
上米良から不吉なカウントダウンが突如発せられる。
「2ーー」
「ウァアアアアアアアアアア!!」
一心不乱で幸は視界に入った上米良の肉に思いっきり歯を立て齧り付いた!!
「ッ!!!」
予想外だったのか、上米良は幸の拘束を解くと幸から距離を取る。
「なかなか、面白いことするじゃん幸」
上米良の腹回りに赤く丸い噛み跡が残っていた。
「次は食い千切る勢いで噛んであげますよ先輩」
脳内にアドレナリンが出始めていた幸の口から攻撃的な言葉が出る。
上米良は口の端を上げると、幸に向けて中指を突き立てた。
「来なよ。歯を一本一本丁寧にへし折ってあげる」
「アンタの余裕ある指と先にどっちが折れるか楽しみね!」
額から鮮血を流し歪めた頭を振った雅は左手をギリギリと強く握り、右手で椅子を掴みーー走る。
雅が持っていた椅子を滑るように転がしーー。
「幸!!」
雅は椅子を足場に高く飛んだーー。
直感で体が動いた幸は手を伸ばした雅に向けて、側にあった椅子を空に放り投げる。
雅が空中で鮮やかに椅子をキャッチし、ハンマーのように上米良の頭上に打ち下ろす。
椅子が砕けーー上米良の形の変わらない、頭と表情が現れた。
上米良が左手を伸ばすよりも先にーー。
雅は血が滲みほどに強く握っていた左手を上米良の顔面に向けーー。
掻き払った!!!!
雅の左手には戦闘時、床に砕け散っていたガラス片がサメの歯のように並び、それがーー。
上米良の顔面を鋭利に襲う!!
声こそ上げなかったが、上米良が歯をグッッッッッ!! と食いしばりーー雅の手を掴むと、その身を大きく投げ飛ばすーー。
雅の置き土産であるガラス片が皮膚や上米良の右目眼球、角膜を切り裂き、上米良の目からドローとした赤い血液が流れ彼女の顔を汚す。
左肩から落ちた雅はどうやら肩が脱臼したようで不安定な左腕を庇いながら右手で顔を歪ませ立ち上がった。
上米良は自分の顔を触り、真っ赤な血を見るとニヤリと笑った。
「久しぶりだよ、自分の血を見たのは」
「少しは面がマシになりましたよ上米良先輩」
雅が首と肩を回して荒い息を吐きながら脱臼を治した。
「だがまだーー」上米良が腰を落とし体を弾丸のように飛ばした。「血がたりねぇーなアアアアアアアアアアアア!!!!」




