第40話「ハンマー×ハンマー」
「何やその顔! もとから案内についていく言うたやろ!」
「いや、それは聞いたけど───」
「依頼人が前衛なんて前代未聞よ?」
ちらっ。
「……あ、別にウチは問題ないですよー」
あっそ。
ギムリーに聞いた私がバカだったと、モーラは諦める。
「ほな、これで解決やろ! どや、やるか? こーみて、ウチ強いでぇ」
ムキぃ! と小さな体に、巨大な力こぶを作る女ドワーフ。
……たしかに、パワーはありそうだ。
「いや、だけど───できるの前衛?」
「そうよ。ただ、前に立てばいいってだけじゃないわよ。後衛の支援を受けつつ、敵を一体も通さない構えじゃないと───」
前衛の役目は敵を倒すだけにあらず───。
むしろ、敵に足止めこそが役目といえるだろう。
強力な魔法を放つ魔術師を庇ったり、中・長距離を戦うアーチャー等の援護もそれには含まれる。いずれも、近接戦闘は苦手とするものばかりだ。
「あったり前やん! ウチのパワーの前には、モンスターの一匹や二匹、千切っては投げ、千切っては投げー」
「いや、それわかってない人のセリフだから」
「千切って投げるんじゃなくて、ガッチリ足止めすんのよ! そして、この3人だけだと、攻撃の要がいないから前衛がとどめも刺すのよ?」
そう。
なにせ、呪具師と支援術士だ。どちらもバフとデバフの支援職…………。
一般論でいえば、攻撃力は皆無に等しい。
……「一般論」でいえばね。
「わかっとる、わかっとる! 任せとけ!」
あかん……不安しかない。
「(どうするのよ、ゲイル)」
「(どうするったって……断るしかないだろ?)」
「(でも、露店は───)」
「(そのために、モーラまで巻き込めないよ)」
ゲ、ゲイル───……。
ちょっと顔を赤くしたモーラであったが、
「(俺さ、今借りてる露店の場所でいいから───ほら、結構売れると思うんだよねー。こーゆー新作もあるし)」
でろーん……。
今日の露店では披露してなかった、呪具の数々。
グールの体液から作った──────……。
ぐわし。
「いだだだだあだだ‼」
「アッホォォオ‼ そんなバッチィもん食べ物屋の隣で売るなーーーー! あーもう、わかったわよ。行くわよ!」
「ちょ? モーラぁ⁈」
あかん、ゲイルのやつをこのままほおっておいたら、露店街で食中毒が起きる。
いや、それで済むはずが───……‼
「……その代わり、絶対一等地借りるわよ‼」
「お、なんや? やる気になったんか? ええで、女は度胸やー」
やかましいわッ!
「そーいうのいいから! とりあえず、こいつが居れば大抵の敵は怖くはないわ」
コイツ。
そうとも、規格外の呪具師───ゲイル・ハミルトンがいれば、ほぼ無敵‼
「というわけで。……アンタ、どーせ、無茶苦茶な性能の呪具持ち歩いてるんでしょ───COME ON! GO A HEAD‼」
みッてなさ~い。正体不明のモンスターだか何だか知らないけど、
こっちのわけのわからない意味不明の呪具師の威力をぉぉお!
──正体不明には、意味不明を!
ゲイルの顔面をわしづかみにしたモーラは、大股でズンズン先を行く。
「いだだ! ちょ、モーラ! 無理だって! いたた、引っ張るなよー! なんなんだよー」
「いいから来なさい!こんなクエストぱっぱと終わらせて、安全安心な露店にしてみせるわ‼」
せっかくの穏やかな農業都市生活! この空気の読めない、呪具師によって、食中毒騒ぎを起こさせてたまるもんですか‼
モーラは使命感にメラメラと燃えてクエストに臨むのだった。
「うんうん。ええ女や。……よっしゃぁぁあ! そう来たら、クエスト開始やでぇ! ついてきぃや、都会モンどもー」
「あははー。いってらっしゃ~い!」
のっしのっしと重そうなハンマーを担いで前衛を張るシャリナと、
うぉらぁぁあ! と燃える瞳でズンズン大股で歩くモーラ。
そして、
ドナドナドーナー♪ と、子牛のように引きずられていくゲイル───……。
鍛冶師、支援術士──そして、呪具師の超ぉ歪なパーティが塩漬け依頼に出撃していく……!




