第39話「素晴らしきパーティ!」
農業都市郊外───。
ファームエッジ唯一の鉱山『犬鳴の丘』またの名を『犬鳴鉱山』にゲイル達はいた。
「…………え~っと」
「……アタシら、なんでここにいるんだっけ?」
ぼんやりと立つゲイルとモーラは互いに顔を見合わせる。
二人に装いは一応の完全武装をした冒険装備一式なんだけど───……「「えぇ?」」
「あっほぉ! 何べんも説明さすなッ! お前ら冒険者に頼み言うたら、クエストしかあらへんやろ」
いや、そんなこともないと思うけど……。
「まったく、どいつもこいつも、冒険者ゆーうのは頼りにならんなー」
やれやれと頭をふるシャリナに、
「それは聞き捨てならないですねー」
軽装でノンビリとお茶を飲んでいるギムリー。
「アッホォ! お前んとこのギルドがちゃんと仕事せんから、こんな昨日今日来たみたいな連中にクエスト頼む羽目になっとんにゃろがッ!」
「それは言いがかりですぅ。ウチはちゃ~んと仕事してますよ? 田舎過ぎて、冒険者が少ないのが問題なのと、どっかの某鍛冶ギルドが依頼料をケチるからじゃないですかねー」
「やっかましわっ‼ こんな、簡単な依頼くらいちょちょのちょいでやらんかい‼」
「「……なんなん??」」
全然、状況についていけないゲイル達。
その様子を見かねてギムリーが再度説明してくれるのであったが───。
「つまり、この凹凸のない雌ドワーフがですねー。露店の許可を出す代わりに、塩漬けになってる依頼を一つやれって言ってんですよー」
「誰が凹凸のない雌じゃー‼」「あーはいはい」
適当にシャリナをやり過ごすギムリーが同じく薄い胸から依頼用紙を取り出すと、ピラッとゲイル達に示す。
日に焼けた依頼用紙を覗き込むゲイルとモーラであったが……。
「え、ええー……」
「いやいや、無理無理」
『犬鳴鉱山の安全化』──────難易度AA
鉱山内に侵入したモンスターを駆除すること。モンスターの種類不明。行方不明者多数。
「「はい、無理ー」」
「諦めんの速いわッ! あほんだらぁ!」
いやだって……。
「俺、呪具師だよ?」「私は支援術士だし」
「…………あ、ギルドマスターは頭数に入れないでくださいねー」
がんっ‼ 思わず、ずっこけるシャリナ。
「何やねんコイツ等‼」
「いや、ですからぁ、ウチの新人さんですよぉ」
がんっ! 再度ずっこけるシャリナ。
「もうちょっと、マシなのおらんのかい⁈」
「あ、カッチーーン」「ちょっと言い過ぎじゃない?」
「やっかましわ‼ なんで、よりにもよって後衛職やねん‼」
「最初に言ったじゃん」「そーそー」
こういう時は息ぴったりの二人───。
「だーもー‼ じゃーどないすんねん⁈」
「いや、だから、無理だって」「こういう時は諦めるか他のパーティを雇うべきじゃない」
がんがんがん‼
「だ・か・ら・それがおらんから塩漬けになっとるんやろが‼───それに元々はこないなクエスト、難易度C~Bやったはずやでぇ! ほんなら、依頼料もそれなりやっちゅうねん!」
「そんなこと言われてもなー」「アタシら町に来たばっかだし」
チラリとギムリーを見るゲイル達であったが、
「だーかーらー。クエストが未達成なら難易度上がるって、前にも説明したじゃないですかぁ」
やれやれのジェスチャーに、シャリナがガルルルと噛みつきそうな勢い。
「アッホゥ! お前と相談の上で難易度決めたんやろが! ウチだけが悪いみたいに言うな!」
あー……。納得顔のモーラ。
「なるほどねー。塩漬け期間が長引くに長引いて、気が付けば難易度AAに……」
「それって、俺たちが失敗したらまた上がるパターンだよね?」
「えへへ」
……えへへ、じゃねーよ‼
多分、次に失敗したら難易度Sとかに跳ね上がるに違いない。
「無理無理無理ぃ!」「割に合わなすぎるよ!」
っていうか、そうなる前に何とかしろよ……。
「んー。最近冒険者さんの行方不明が多くて───あはは」
「あはは、って……」
「いや、それって十中八九、ここのせいよね───??」
チラリ───……二人が視線を向けると、低い丘の裾にぽっかりとあいた大きな穴……『犬鳴鉱山』が、ォォォオオオオオ……と低い唸りをあげていた。
ブルリ。
多分、風の音なんだろうけど、……絶対やばいモンスターがいる気配がする。
「なにビビっとんねん! 冒険者やったらバーッと行って、デデーンと解決したらんかいっ! ウチ等、みんなして困っとんねん! ここの鉱石が採れんと、ずっと輸入せんとあかんねん!」
いや、だからー。
「バーッと行った人らが、帰ってこないんだよね?」
「デデーンと、行方不明になってるって言ってるし……」
そんな依頼、もっとこう───高Lvパーティに依頼すべきなんじゃ?
しかも、クエスト達成報酬やっす‼
「金貨10枚じゃ、ちょっとねー」
「わざわざ周辺から来てくれる人もいないよ、これじゃー」
元Sランクの二人は、いくらなんでもこれは安いなーと、頭を振る。
まぁ、だから塩漬けなんだろうけど───。
「せめて前衛がいないと無理だぜ?」
「……アンタはいけそうだけどねー」
「へっ(笑)」と、口角をあげるちょっと意地悪な笑みのモーラに全力否定のゲイル。
無理無理‼
アンデッド退治ならともかく、正体不明のモンスターの討伐なんて無理寄りの無理だ!
「ったく、都会モンはこれやからー……」
よっこらせっと、巨大なハンマーを担いで見せるシャリナ。
「ほな、こうしよか!」
ビッ! と親指で自分を指さすと───。
「ウチがトップを張る───それで全部解決やでぇ!」
…………。
……。
「「は?」」




