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不思議なカレラ @仮完結 只今最終校正中につき“ ν ”が付いてる話しのみをお読み下さい  作者: 酸化酸素
3章 Standard-edition G's world

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ナイモノネダリノココロ ν 挿絵付

「それじゃあ、ヘラ叔母様行ってきます」


「まだ回復しきれていないのに、危険なのだわ」


「でも、あの様子じゃ、恐らくオーディンさま達の軍勢に勝ち目がないと思うの。それに、アタシ達はミョルニルを返しに行くだけだから大丈夫よ!無理はしないわ、信じてヘラ叔母様」


「言い出したら聞かない所なんて、ホンっとに昔のヘスティア(姉さん)そっくりなのだわ」


「えへへ」


 少女は完全に回復しておらず、疲れも取れていないが早々に「ヴァーラスキャールヴ」に乗り込む事を決めた。それは、イズンが権能を使い「アースガルズ」周辺の戦況を見せてくれたからである。



「これを持って行きなよーッ!それは全部あげるから遠慮なく使い切っちゃっていいからねー」


「わっ。こんなに貰っていいの?イズン、ありがとう」


 イズンは「林檎(クインスコード)」を少女に渡す事にした。少女が渡された「林檎(クインスコード)」は全部で6つあった。

 「アースガルズ」に行くメンバーは少女とスサノオ、サリエルであり、当初から居たメンバーの中でヘルモーズは最後まで逃げ腰だった事から今回は見送られた。

 拠って渡された林檎(クインスコード)は1人当たり2個の計算になる。


 ヘルモーズ自体、戦闘力がそこまで高く無い事から戦場で足手まといになる事や、それこそ人質にでもされる事を恐れた様子だった。拠ってヘルモーズの名誉の為に言っておくと、臆病風に吹かれたワケではないのだ。

 まぁ、それ以外にはフレイヤが死んでも、バルドルが回復していなかったのも大きな理由の1つだった。

 魔術遊戯(セイズ)の影響力が解かれ、家畜となっていた者達が徐々に自分を取り戻していったにも拘わらず、バルドルだけが戻らない事から余計に心配になっていたのだ。



 少女達が今から「ヘスペリデス」を出て「アースガルズ」へ向かえば、到着する頃には必ず夜になる。そうなれば様々なリスクがあるが、それを覚悟の上で「アースガルズ」の「ヴァーラスキャールヴ」に、たった3人で攻め込む事を主とした奇襲の策だった。

 「ヴァナヘイム」の軍勢と合流する事も、幾つか立てられた策の中にあった事はあったが、何となく嫌だったのだ。少なくとも、これから「アースガルズ」に向かおうとしている3人が3人ともに、操られていた事を差っ引いても「アースガルズ」の神族(ガディア)を、その手に掛けてしまった事を引け目に感じていたのである。


 だから、「禍根(かこん)を残さない為にも自分達だけで終わらせる」と、それが少女の出した結論であり、スサノオとサリエルはそれに納得していた。

 それも踏まえた結果として、3人で向かうことになったのだった。




 少女達は陽の光が完全に沈む間際、昼でも夜でもない儚げな頃合いに「アースガルズ」を見渡せる小高い丘の上にやって来ていた。

 最初にオーディンに連れて来てもらった、あの丘の上から見える「ヴァーラスキャールヴ」は悲しみに覆われているかのように昏くひっそりとしていた。短いマジックアワーは終わりを告げ、夜の帳が降り始めた事で周囲は暗くなっており、その事が余計に悲しみを助長している様子だった。

 だからこそ昼間に見たあの絶景は今はもう見ることが叶わない。


 今、分かる事は城の中に灯るオレンジの光が、そこに名も知らない誰か()がいる事を教えてくれるだけだ。


 少女は少しだけセンチメントな気分になりつつも、今となってはそんな虚しい感傷に浸るより、敵の情勢を入念に調べる事に注力していった。


 少女はバイザーに光点を映し出し、敵の情勢を探っていく。フレイヤの宮殿(フォールクヴァング)でバイザーの反応がおかしかった事から心配していたのだが、どうやら故障ではなかった事が判明し少女は「ホッ」と息を漏らしていた。



「それにしても結構な軍勢ね。あの数を全部叩いてたら先にバテるわね。かと言って、一撃で城ごと破壊するワケにはいかないし……。はぁ……。ねぇ、2人は何か策がある?」


「ある程度の破壊は免れないだろう?それに、もう既にある程度は破壊されているようだしな。再建出来ない程、完膚無きまでに破壊するのは駄目だろうが、ある程度の破壊は許容されるんじゃないのか?」


「とは言ってもよ、あの魔獣の数をいちいち相手にはしてらんねぇだろ?こっちはたった3人だぜ?いくらオレサマが強過ぎるって言っても、おめぇ達がやられちまったら意味ねぇだろ」


「じゃあ、2人の意見を纏めると、「陽動」と「潜入」ってコトかしらね?」


 サリエルもスサノオも至極真っ当なコトを言っていた。スサノオの自慢気な言い方に少女はイラっとしていたし、スサノオには敵に操られた過去があるので掘り返してみたくなった少女だったが、そんなコトをして()()()()()()後々大変になりそうなので止めておいた。

 拠って纏めた考えだけ伝えたが、2人はそれに頷いていた。



「城の中にいる敵の親玉は最低でも2人。イズンが見せてくれた戦況に映っていた2人、確かイズンは「セック」と「スカジ」って言ってたっけ?」


「下着みてぇな奇妙な鎧のヤツが「セック」とかっていってたっけか?」


「変な服を着ていたのが「スカジ」と教えてくれていたな」


 少女はイズンが見せてくれた映像に映る2人を見た時、正直なところ頭が痛くなったのを思い出していた。流石に戦場に出るような格好に見えなかったからだ。

 そして、2人の官能的なあの身体付きに少女は心底イライラさせられたのを改めて思い出してしまい、思い出すだけで額に青筋が浮かぶ思いだった。



「他にも敵の「将」はいそうだけど、アイツらが黒幕の一翼(いちよく)で間違い無さそうだから、今回の討伐対象はあの2人だけでいいわよね?スサノオか、サリエルのどっちかに片方を任せてもいい?」


「何言ってやがる」 / 「何を言っているんだ?」


「へっ?」


「おめぇが」 / 「そなたが」

「「陽動でも」」

「構わねぇぞ?」 / 「構わないぞ?」


 少女の意見に真っ向から反対した2人の声は、見事に内容まで同じだった様子でハモっていた。



「ぷっふははッ、ねぇ、ちょっとヤメてよ。2人とも、いつからそんなに気の合う関係になったのよ?」


「まぁ、オレサマはサリエルの力を見て、コイツなら背中を預けられるって思っただけさッ」


「スサノオ殿、か、揶揄(からか)うのは止めてもらいたい」


「2人とも、何かあった?怪しいわよ?にひひ」


「そなたまで、か、揶揄うのは……」


「よしッ、決めたわッ!それなら3人で仲良く潜入しましょッ!」


「お、おい、それで大丈夫なのか?陽動はどうすんだよ?」


「まぁ、なんとかなるでしょッ!もしならなかったら――」


「根の国でおめぇのお守りはゴメンだぜ」


 少女は手のひらを返すように作戦を変更していった。少女としては最初から()()()()()()()()()()()、と言ってしまえば元も子もないが2人と共闘出来る機会もそうそうあるワケではないので、それを楽しみたくなったのが事実だ。

 要するに、「陽動」と「潜入」の2つに別れて行動する気は最初からさらさら無かったのである。最初から決めていたのにワザワザ他の意見を取り入れたフリして、結束力を見た上で後から手のひらを返す……そんな悪知恵であった。

 そんな思惑を知らない2人は見事に少女の作戦にハマったワケだが、スサノオと少女のやり取りを見たサリエルは正直な感想を漏らしていた。



「2人の方が意思疎通がちゃんとぴったし合ってる気がするんだがなぁ」



-・-・-・-・-・-・-



「ねぇ?あのグルヴェイグが本当に死んだの?」


ぎしッ


 スカジはセックと共に部屋の中で言の葉を紡いでいた。ヴァーラスキャールヴの中で一番大きいベッドが置いてある部屋の、そのベッドの上で2人は語らっている。

 付け加えるならばスカジはセックの腕の中で寄り添い、セックの胸の上に頭を乗せて紡いでいるのだった。



「グルヴェイグにはマーカーを取り付け、アタイの意識を一方的に共有化していたんだ。ま、グルヴェイグはそんな事、知らなかったハズだが」


「ふふふ、人を信用しない貴女らしいわ」


「アイツをフレイヤの身体に乗り移らせた時点で、寝返る事も想定していたし、その可能性もゼロでない以上、視野に入れていた。だが、グルヴェイグのマーカーは消えたし共有も途絶えた。それは即ち、あのグルヴェイグが消されたってコトだ。あの、「完全(パーフェクトア)不死(ンチモータル)」を打ち破る何かをあのネズミ共は持っていたってコトになる」


「あっ、あん///もう、今は真面目な話しをしてるのね。まだ早いの……あぁん」


 セックはスカジの着ている戦闘用の物とは、明らかに肌色度合いが違うベビードールの中に手を入れると、スカジのたわわな果実の先端を摘んでいった。


 更には語気に拠ってその握る力も摘む力も強くなるテクニックに、スカジは甘い声と共に桃色に染まった吐息を漏らして肌を上気させ、身体を痙攣させていく。



「で、でも、グルヴェイグを倒し切る程の力なんて、あのネズミ達にはあり得ないのね。そんな力、あのオーディンでも無理だったのね。それをネズミが出来るなんて、スカジには思えないのね」


「確かに封印された可能性はある。だが、封印されたなら、それでもオーディンと力量は同じってコトだ。警戒する必要はあるだろ?」


こりッ


「あぁん♡も、もうちょっと優しくして欲しいのね。スカジはセックよりも、敏感なのね♡はぁ……はぁ。でも、これだけ焦らされたから、スカジが今度は攻める番なのね。覚悟するのね、セック」


 スカジは豊満な双丘を自ら揉みしだき始めると、そのまま上体を起こしてセックの上に(またが)っていく。



挿絵(By みてみん)



 セックの可愛らしいベビードールを捲り、露わになったスカジより少し控えめな双丘の先端に口を付けると優しく舐め回していった。

 セックは敏感な部分を攻められ身体を小刻みに痙攣させ、息遣いが荒くなった頃を見計らって、スカジは自身の顔に妖艶さを纏わせセックの唇に自分の唇を近付け囁くように紡いでいった。



「多分、何かの間違いなのね。スカジの知ってる限り、この世界でアレを殺せるのはいないし、封印出来るのはオーディン以外に3人くらいなのね。多分、セックの仕掛けに気付いて、それを剥がしただけなのね。だから、ひょっこり現れたら、それを問い詰めてスカジが凍らせてあげるのね。うふふふふ」

「んっ……ちゅぱ。ふふッ♡♡可愛いのね、セック」


つーっ


「はぁ……はぁ……今日は随分と積極的だな、スカジ」


 スカジは物騒な事を言いながらも妖艶な表情を更に(みだ)らに歪めて、セックの唇に唇を重ねていく。

 絡んだ舌と離れた唇が糸を引くくらいに愉しんだ後で、2人は更なる快楽に溺れていった。




「はぁはぁ……はぁはぁ。もっと足を上げてもっとよく見せて、もっと声を挙げてスカジをもっと興奮させて気持ちよくして欲しいなの」

「あぁん♡♡♡とてもいい気持ちなの、もっと擦り合わせてスカジはもっと気持ち良くなるなの」


「スカジ……アタイ、もう我慢が……」


 2人は快楽に溺れ、何度も絶頂を繰り返し身体を痙攣させていく。スカジは甘く(とろ)けるような表情でセックに甘え、セックもまた妖艶な瞳をスカジ()せ、お互いが淫らさを増して淫靡に声を紡いでいった。

 周囲を全く気にする事なく喘いだ2人の声は共鳴していた。



「はぁ……はぁ……フレイヤはとんでもない淫乱(いんらん)だけど、グルヴェイグを宿したあの女は、誰よりも強くて淫乱で手に負えないハズなの。それが、死ぬだなんて、あんッ♡想像がッ♡♡あうぅッ♡♡付かない、あぁッん♡♡♡だけどッ、あぁん♡♡スカジ、イッちゃうのぉぉ♡♡♡それ以上はオカシクなっちゃうのぉ♡♡♡」




「あ、あのさぁ、なんか、()っげぇ場違い感があるんだけど……」


「あ、あぁ、そ、そうだな……。だがそれにしても、あの2人は何をしているのだ?」


「ねぇ、サリエル……それ本気で言ってるの?ま、まぁ、ききき、キスで子供が出来るって思ってたんだから、う、うん、分からなくもないけど……」


「お、おう。正直、不肖(わたし)には、わ、分からない……な。排泄器官を擦り合わせて、一体何をしているのか、そなたが教えてくれるか?」


「それは、女同士で、まぐわっ……」


ごすッ


 少女は2人が行っている情事に顔を耳まで真っ赤にして手で顔を覆い隠しながらも指の隙間から覗いていたが、余りにもピュアで天然なサリエルの返答に苦慮していた。

 それに対して真面目にデリカシーが無い返答しようとしたスサノオに対して、強烈な打撃(エルボー)を入れると少女は怒った表情で「ふんすッ」とだけ荒げた鼻息を漏らしていた。

 その光景を見たサリエルは何も言えなくなってしまったのだった。


 ちなみに、3人はセックとスカジの情事の真っ最中の()()()()()、2人の様子を観察している差し詰め「出歯亀」と言えるだろう。



「で、コレ、どうする?取り敢えず、この状況だが()っとくか?まぐわっ――」


ごすッ


「最後まで言わせろよ」


「デリカシーの無い言い方しないでッ!ただでさえ、アタシだって人がヤってるのを見るのが初めてで変な気分になりかけてるんだからッ///」


 スサノオは呆れ顔である。サリエルは覗き込むように2人が快楽に耽ける様子をまじまじと間近で食い入るように観察している。

 少女は全身を真っ赤に染めながらも興味がある様子で、喘ぎ声が挙がる度にチラチラと視線を投げているので考えが纏まる気配は無かった。



「一体、何で、こんなコトに……はぁ」



-・-・-・-・-・-・-



「ところで「なんとかなる」って、どうやってあの城の中に侵入(はい)ろうってんだ?流石に陽動もナシじゃ辛ぇだろ?」


「普通に城門から侵入るんだけど、スサノオは空を飛翔()べる?」


「オレサマに空を飛翔()ぶ力は無ぇが、それが城門から侵入るのとどんな関係があるってんだ?」


「それじゃあサリエル、アタシ1人じゃスサノオを抱えて空を駆けるのは難しいから、2人で抱えて運びましょ?いいかしら?」


「了解した」


「おーい、なんか()りぃ予感しかしねぇんだが、質問に答えてくれるか?」


 スサノオの頭にはたくさんの「?」が浮かんでおり、少女は悪っるい顔を何やらしていた。だから肝心のスサノオの質問が解答を得る気配は無かった。



「ねぇ、ママ、フィオも手伝うッ!」


「ありがとう、フィオ。良い子ね。よしよし」


「えへへへへ」


「準備はいいかしら?」


「だから何の準備?」 / 「あぁ大丈夫だ」


「じゃあまずは、コレ持ってて貰える?絶対に手放しちゃダメよ。だから服とか装備に結んでおいてもいいわ」


 少女は細い紐のような物をスサノオとサリエルに渡し、フィオには予め付けておいたタグに紐を結んだ。2人が自分の衣服に紐を結び終えるともう片方の端を自分の装備へと結んだ少女は魔術の詠唱を始めていった。



「おっ?何だコレ?身体が消えていくぞ?おい、どうなってんだッ?」


「おぉ確かに消えていくな、感覚はあるのに見る事だけが出来ないとは不思議な感じだ」


 スサノオは少女の魔術に因り消えて行く自分の身体に対して焦っている様子で、自分の身体を手の感覚だけで確かめていた。



「終わったわよ。取り敢えず、術式のここをこうしてっと」


「おっ?見える。それに消えたおめぇ達も見える。一体こりゃ、どんなカラクリだ?」


不可視化(インビジブル)が使えれば良かったんだけど、アタシに出来るのはこれで精一杯。でも、この感覚阻害(アンチセンス)でもよっぽどじゃなければ気付かれないわ」


感覚阻害(アンチセンス)?相手から自分達に向けられる感覚を遮断する魔術か?」


「えぇ、でも正確にはこの魔術の使用者の事を認識する感覚を、麻痺させるって感じね。だから本来、この魔術は使用者のアタシにしか掛からないけど、使用者の所有物にも自動的に付与されるから、装備とかも見えなくなるって寸法よ」


「だから、あの紐か」


「オレサマ達はおめぇの所有物になっちまったのか」


「言い方ぁ。はぁ……。あと、ちょっと術式を弄ったから、紐で繋がってる全員が見えるようになったでしょ?だから絶対に紐は離さないでね。戦闘になって姿を見せる時になってから外してね」


 少女が放った魔術「感覚阻害(アンチセンス)」の効果で、3人+1匹は見事に消えていた。そして軽く注意事項を伝えた少女は本題に入るべく顔を1回「ぱんッ」と叩いて気合いを入れると、サリエルに視線を流していった。



「じゃあ、サリエル、行くわよッ!スサノオは大人しくしててね。うんしょっと」


「そういう体勢だな、理解した」


「フィオもフィオも~」


 少女はスサノオの右腕を自分の肩に回し、サリエルはスサノオの左腕を同じく自分の肩に回し、フィオはスサノオの腰紐を口で(くわ)えていた。

 2人は視線を交わすと1回頷き、呼吸を合わせて宙に舞い上がっていったのである。



「おッ?おぉッ!おおぉッ!!これが、空を飛ぶってコトか?凄ぇなッ!足が地面から本当に離れていやがるッ」


「ちょっと静かにしてッ!2人掛かりでやってるんだから、集中しないとバランス崩して皆して真っ逆さまよ?」


「ところで、この状況は周りから本当に見えて無ぇのか?」


「えぇ、そうよ。でも――」


「へーいへい、黙って景色でも眺めてるさ」


 片やブーツ、片や翼なので出力や揚力などは全然違う。少女はブーツの出力を微調整しながらサリエルに合わせていたので、それは思ったより集中力を使う行為だった。

 こうして夜の帳が完全に降りた星明かりの元、3人+1匹は「ヴァーラスキャールヴ」に向けて空の散歩をしていったワケだが、元よりスサノオだけがそれを楽しめる状況だったのは、言うまでもないだろう。




 一行は多少時間が掛かったが戦闘に陥るような状況にもならず、無事に「ヴァーラスキャールヴ」へと降り立つ事が出来たのである。

 「ヴァーラスキャールヴ」に降り立った少女はバイザーを使って、セック達がいる場所にアタリを付けると、そこに全員で向かって行ったのだった。



 セック達がいると思われる部屋の扉は幸運な事に開け放たれていた。拠って奇襲を仕掛けるべく中に侵入(はい)って行ったのだが、その中で盛り上がっている真っ最中の行為に、可愛らしく「キャっ」と短い悲鳴を上げると言葉を失ったのである。

 スサノオとサリエルの2人は先程までの緊張感がどこかに行ってしまった様子だった。

 フィオは少女の肩の上で暢気に欠伸をしていた。




「で、どうするんだ?手っ取り早く、とっとと()っちまうか?今ならオレサマ達は認識されて無いんだろ?それとも、コイツらが果てるまで見続けるのか?」


「わわわ、分かってるわよッ!何で、平時ならともかく、有事にこんなトコでヤってんのよッ!頭()いてるんじゃないの?シンモラといい、フレイヤといい、何でこの世界にいるのって頭の中がピンク一色ばっかりなの?」


「そんなこたぁ知らねぇよッ。それともなんなら魔術解いて聞いてみるか?」

「全く、おめぇ抵抗無さ過ぎだろ?」


 喘ぎ声が少女の集中力を乱し、混乱の極みにある少女は話している内容がとっ散らかっており、スサノオは要領を得ない少女の(うぶ)過ぎる言動に少しばかり苛立ち始めていた事から、喧嘩腰になっていた。

 拠って、仲睦まじくイチャコラして喘いでいる真横で、喧嘩が始まるという修羅場が巻き起こったのである。



「やれやれ。2人とも痴話喧嘩は他所(よそ)でやってくれ。今はそんな――」


「痴話喧嘩じゃねぇッ!」 / 「痴話喧嘩じゃないわッ!」


「やっぱり、息がピッタリ合ってるじゃないか」


 そんなこんなで時は流れていく。そしてベッドの上の2人は絶頂を繰り返し、その淫らな肢体の随所で痙攣を起こしていた。

 しかし、1回や2回で終わる事はなく次から次へと耽けっていたので、夜はまだまだ長そうだった。




「さてと、気を取り直して、()っちまっていいんだろ?」

「まぁ、そろそろ見飽きたからな、止められても()る事に代わりは無ぇがな」


 スサノオは腰の「十束剣(トツカノツルギ)」を抜き放つと少女の方を向き、目配せしていった。少女は少しばかり躊躇っている様子だが意を決した表情になると「お願い」とだけ紡いだ。


 スサノオの前には淫靡に悶え、今尚情事に(ふけ)っている2人がいる。仰向けの体勢のセックの片足を持ち上げて跨るスカジが、よだれを垂らし甘い吐息を漏らしながら天井を見詰めて腰を振っていた。そして2人の淫らな声はより一層部屋の中に響いていた。

 もしかしたら、その声は城中に聞こえているかもしれない。


 この部屋の扉が開いていたのは、もしかしたら()()()()()()()()()()()()()()()()それは余談でしかない。



「――――ッ!?う、あぁぁぁ」


「ッ?!」


 セックは自分の上に跨りヨガっているスカジの胸から、()()()()()()()()()()()()()()()()()のが視界に映っていた。その胸に生えた刃からは、スカジの鮮血が滴りセックのお腹の上に温かさを齎していく。

 スカジは完全に絶頂に達した様子で、「ビクッビクッ」と今までに無いほどの痙攣で身体を小刻みに震わせていたが、その口からは泡を吹きその紫紺の瞳は完全に白目を()いていた。


 セックは突如として起きた事態に動揺したが、自分の上にスカジが跨っている事や足を掴まれて耽っていたので身動きが取れず、スカジを貫いた刃を避ける事が出来るハズもなく、そのままスカジ同様に胸を突き刺されたのである。


 セックは朦朧(もうろう)とする意識の中で、自分達の目の前に侵入者がいつの間にか当然の事のようにいて、自分達が観察されていた事を知ったのだった。



「な……ぜ?いつか……ら」


どさっ


 セックは薄く声を発すると、目を閉じる事なく抑えている力を失った頭が揺れた。更には自分の上にもたれ掛かってくる、既に冷たくなりつつあるスカジの重さを一身に受け止めていったが、2人の意識はもうそこには無かった。



「納得のいかねぇ終わらせ方だが、これが一番、オレサマらしい殺り方か」


びゅッ

 ぴちゃ


「終わった……の?」


「あぁ、確実に心臓を一突きで仕留めたハズだぜ?」


ぽんッ


「こんな悪党共の死を、おめぇが背負う必要は無ぇさ」


「スサノオ……」


 少女の為にスサノオは2人を殺した。こんな暗殺滲みた方法だったからこそ、スサノオは少女にやらせたくなかったのだ。

 「フォールクヴァングでの殺戮」に「妖精界の消滅」この2つだけでも充分過ぎるほど、か弱い少女の心はすり減らされていると考えていたからだ。

 これが正々堂々とした決闘のような闘いなら構わなかったが、暗殺では話しが違う。どうしても割り切れないモノが残ってしまうだろう。

 だから、少女を(おもんぱか)ってスサノオが手を下したのである。




どくんッ




どくんッ



どくんッ


どくんッ


 心臓の音が微かに木霊(こだま)し始めていた。止まった心臓が微かに動き出す音が、この場にいる者達には聞こえないひっそりとした音で確かにそこにあった。



 スサノオの「十束剣(トツカノツルギ)」に拠って確かに心臓を貫かれ生命の灯火(ともしび)は奪われたのだが、その者は数日前にシンモラが散った場所に刺さったまま放置されていたレーヴァテインを大地から抜き去り、持ち帰っていた。



 「勝利の剣(レーヴァテイン)」の因果は、敗北の因果を切り裂く為に敗北は認められない。

 拠って「死」は敗北であり、敗北を認めないレーヴァテインに因って、その止まった心臓は強制的に再始動させられ、目を開けた者がいたのである。


 だがそんな事、本来ならばただの神造(エンシェントユニ)兵器(ーク・アイテム)に出来るハズがあるワケもなかった。

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