ホッスルモノノヤイバニイスクミ ν 挿絵付
闘神の放つ刃は壮絶であった。
それ以外に形容出来る言の葉が無い程に……。
紡ぐ言葉が霞んでしまう程に……。
それはそれは凄まじい剣技であって、気を抜けば闘神の刃に殉じてしまう事も厭わない程の剣技であったとしか言えない。
それ以外の言葉で言えば、その剣技の凄まじさが霞んでしまうだろう。
少女はスサノオと対峙した直後に「半神半魔」の形態へと変化し、スサノオと斬り結ぶ事にした。
サリエルは自身の持つ力の全てを使って少女をサポートし、スサノオに対しては少しでもその行動を阻害するように努めていた。いや、実際にはそれ以外の行動は出来なかったのだ。
仮にスサノオに攻撃しようものなら一太刀のうちに斬り伏せられ、懸命に闘う少女の足手まといにしかならないのは明白だった。そして、攻撃を仕掛けなくてもヘイトを買った段階で、終焉を迎えるであろう事もまた事実だ。
そしてヘルモーズは、何もする事が出来ずにいた。よって、ただドラウプニルを握り締めたまま祈る事しか出来ず、ただ心の中で応援していた。「が、頑張れーッ」と。
幾重にも及ぶ攻防が2人の間で交錯し、火花を散らしていく。しかしスサノオの持つ非情な強さに対して「こんなの、どうすればいいのよーッ!」と、少女は心の中で声にもならない声で叫んでいた時に転機が訪れる事になる。
「くッ、圧倒的過ぎない?これが、スサノオの力。闘神の力なのッ!?」
「それにこの姿でなかったら、アタシはもう……とっくに死んでるわね」
少女は自身が持てる最大の力を発揮しても尚、スサノオの剣撃を受ける事は疎か、その刃に刻まれるばかりだった。拠って、一太刀を浴びせるどころか、一太刀浴びせる前に十太刀貰うくらいの差がそこにあったのだ。それは前に「冥界」で闘った時の比ではなく、ここまで違う実力差に正直に言ってしまえばウンザリしていた。
少女は半神半魔の形態になっているからこそ、刻まれても即座に傷は癒えていくが、痛みだけは少女の身体を幾度も奔り抜けていたのだった。
「アタシは、どMなんかじゃないッ!むしろ、痛いのはイヤだってのッ!」
「あぁもうッ!なんであんなに強過ぎるの?チートよチート!反則よッ」
少女の悲痛な叫びも虚しく、心の中では悲鳴を上げるばかりだった。だが、ここで少女は突如として脳裏に浮かんだ、一片の言の葉を口から漏らしていく事になる。
「コローニス、エウドーレー、ペディーレー」
「えっ?何?アタシ、一体何を。――ッ?!」
しゃしゃしゃッきん
「グッ、グオォォォォォォォッ」
少女の口から漏れた言の葉は、ヘラから少女が貰った石の「名」だった。拠って名を呼ばれた石は、少女の元を離れ光の鎖へと変化を遂げるとスサノオのがんじがらめに縛り上げ、その動きを封じていった。
こうして光の鎖に捕らわれたスサノオは雄叫びをあげながらも、拘束を解こうと藻掻いていたが、スサノオの膂力を以ってしても早々に解く事は難しい様子だったのである。
少女は「今がチャンス」とすかさずスサノオの元に疾走っていく。少女はその手の得物を剣から「林檎」に持ち替えると、その果実を一口だけ囓った。
そして拘束され暴れているスサノオの上半身に勢い良く飛び付くと、スサノオの太い首に手を回していく。
少女の瞳を見たその一瞬、スサノオの動きは僅かに止まったのだった。
「お願いッ!帰って来て、スサノオ」
「んっん」
ちゅぱッ
れろっ
ぐいッ
少女は瞳を閉じていた。それはスサノオが見たくないからではなく、本来ならば「恥ずか死」してしまいそうな、これから行うコトへの些細な抵抗がさせていた事だ。
少女の「ぷるん」とした唇は、スサノオの唇へ吸い寄せられるように近づいていく。そして2つの唇が重なった時、少女はスサノオの口の中に舌を強引にねじ込み、自分の口の中で咀嚼した「林檎」を、その舌で強引に甘い吐息と共に押し込んでいく。
目を閉じていた事や、焦りから来る勢いに任せていた事もあるが、遅ればせながら少女の唇にスサノオの柔らかさが伝わり、自分の舌に絡み付くスサノオの舌のザラザラした感触に急に恥ずかしさが込み上げていき、今すぐにでも「穴があったら入りたい」衝動に駆られた少女だったのは、紛れもない事実だ。
そして、2人が見ていない事だけを願い、速くこの時が過ぎ去ればいいと考えていた。
まぁ、当の2人はそんな想いなど知らないので、その光景をまじまじと見詰めていたのだが。
「はぁはぁ。はぁ……///」
甘い吐息が少女から漏れ、2人の唇は離れていった。少女はカラダを火照らせ耳と顔を真っ赤にしながら、スサノオに抱き付いたままその顔を見詰めていた。
そしてスサノオの喉から「ごくんッ」と音が微かに聞こえた時、スサノオは凍り付いたように力無くぐったりと、その身体は弛緩していったのである。
スサノオを繋ぎ止めていた光の鎖は小さく細やかな余韻を残し消えていった。そして、拘束が解かれたスサノオは、そのまま膝から大地へと崩れていったのだった。
少女は崩れ落ちたスサノオの傍に座り込み、その肩を揺らして名前を連呼していた。
「やったのか?」
「これが愛の力ですな」
ヘルモーズは目を潤ませており、サリエルの横で2人に優しい視線を送っていた。
少女は取り敢えずヘルモーズの言葉は聞こえないフリをして……、そうする事でしか平常心を保つ事が出来ないでいた。
少女は膝から崩れ落ちたスサノオを横たわらせ、スサノオの状況を確認している。肩を揺らしても名前を連呼しても何も返って来ない為に、様子見をする事にしたのだった。
拠ってスサノオの頭は少女の膝の上に置いてある。
サリエルとヘルモーズの2人は周囲で警戒にあたってくれていた。今のこの状況で敵に襲われれば万事休すでしかないのは明白だったからだ。
「ねぇ起きて、目を覚まして。お願い、スサノオ」
ふいに少女の瞳から一筋の涙が頬を伝わり、「ぽたッ」とスサノオの頬に垂れていった。やれるだけの事はやった。だからこそ、もう他に何をしていいか分からず、少女の心はどうしょうもない程に不安で不安でいっぱいになり、瞳から溢れていったのだ。
そしてスサノオの瞳はゆっくりと開いていった。
「何だ、どうした?おめぇらしくもねぇ。あれは夢だったのか?だが、夢にしちゃあ、良い夢だった。おいおい泣くなよ。可愛い顔が台無しじゃねぇか」
「人の気も知らないで……ばかッ」
スサノオは手を伸ばして泣いている少女の頬を拭うが、溢れ出す涙は止まるコトを知らない様子だ。
少女はスサノオの暖かさを頬に感じ、より一層涙が止まらなくなってしまったのだった。
そして少女は泣きながら咲った。
少女は残りの「林檎」をスサノオに渡し、無理矢理にでも食べるように伝えていた。スサノオは受け取った「林檎」に付いている「歯型」をまじまじと見ており、顔にたくさん「?」を浮かばせていたが、少女はそれを見るや否や「それは見なくていいのッ、気にしなくていいのッ、早くとっとと食べなさいッ」と勢い良く煽って来たので、渋々残りの「林檎」を口に入れ胃の中に押し込んでいった。
サリエルとヘルモーズはその光景を見て、何も言わずにただ微笑んでいた。
「さて、これからどうするお積もりかな?」
「そうね、フレイヤの住まいが分からない以上、乗り込む事は出来ないから、今はオーディンさまの所に向かいましょうか?」
「スサノオ殿を返して貰っただけでも善しとして、先にオーディン様や「アースガルズ」を助けるのもアリだろうが……」
「オレサマはどっちでも構わねぇが、気に入らねぇな。ところで、アンタ誰?」
「あぁ、申し遅れていたな。不肖はサリエルだ。天使族の十二天使の一翼。大天使だ。宜しく頼む」
「ほぅ?天使族か、楽しそうだな。どうだ、オレサマと闘らねぇか?」
ばこんッ
「あれ?また当たっちゃった」
「痛ってぇな、何しやがるッ。がるるッ」
「話しを戻すわよ。ところでスサノオ、気に入らないってどういうコト?確かに操られてたワケだから気に入らないとは思うけど、居場所が分からない以上、何も出来ないのは仕方ないじゃない。アタシだって、こんな中途半端なままはイヤよッ」
「まぁまぁ、声を荒げんなって。眉間にシワ寄ってるぞ」
「ふんすっ」
「まぁ、任せろ。オレサマに考えがある」
「「「考え?」」」
スサノオの発言に3人はキレイに揃ってハモっていた。まぁ、キレイにハモってはいたが、3人のその発言に続きがあるとするならば、その部分はキレイに揃わなかったのもまた事実だろう。
「ねぇ、操られてた時の事を何か覚えているの?その、フレイヤにされたコト……とか?」
「いんや、サッパリ。ってか、なんだそれ?」
「うぇあッ?!う、ううん、な、なんでもない、なんでもないのよ。でもってそれじゃあ、どんな「考え」があるって言うのよ」
「なぁんか、気になる発言だったな。まぁいいか、見てろよ」
少女が気にしてたコトは「スサノオが覚えているか?」だった。だからフレイヤを引き合いに出したものの、あの時あの場でフレイヤにされていたコトをスサノオが覚えていないのであれば、自分がスサノオにした事も覚えてないだろうと考えたのである。
当のスサノオが覚えていたら、今後目を見て話す事なんて出来ないくらい恥ずかしくて溜まったモンじゃないからだ。
「八雲立つ 天日鷲の 八咫烏 山宝瀧宝 牛玉宝 畏み畏みオレサマ放つ」
しゅっ
「そぅらよッと」
スサノオは詠唱を紡ぐと髪から一本の結櫛を抜き、空に向かって投げた。空に投げられた結櫛は詠唱に拠る力を宿し、一羽の烏へと変貌を遂げていくのだった。
そしてそこに「三足の烏」が現れたのである。
ふぁさッ
「よし、上手くいったようだな。どうだ?これがオレサマの力だ」
カーッカーッ
「烏よね?」
「烏ですね」
「烏にしか見えないな」
「おいおい、見えねぇのか?この烏は脚が3本あるだろ?」
「あ、ホントだ。それって……」
「あぁ、道案内の名人……いや、名鳥・八咫烏だ。さぁ、行けッ。あの女の居場所にオレサマ達を導け」
カーッカー
スサノオは「三脚の烏」を空へと投げ、投げられた烏は空を舞い案内役となったのである。
「アレに付いて行けば、目的地に着く。見失わないようにとっとと行くぜッ」
「さあいい加減に、わちきのモノになるのですわ。欲望に任せてわちきの虜になって愛欲に塗れて、サカッた犬のように淫靡に腰を振るのですわ。ねぇ、アナタ程の可愛らしさなら、わちきのペットとしてずっと傍においてあげるのですわ」
ここはフレイヤの住まい「フォールクヴァング」である。「フォールクヴァング」はフレイヤの宮殿であり、フレイヤの意思一つで場所を定める事が出来る。拠って今はフレイの所有地である「アルフヘイム」に存在している。
そして、「フォールクヴァング」の地下牢獄に囚われているのはバルドルを始めとした「アースガルズ」の面々だった。
「フレイヤ殿、貴女ともあろう御方が、何故に血迷われたのですかッ!?」
「まぁ、わちきの魔術遊戯に対して随分と抵抗なさるのですわね?それじゃあ、わちきのカラダを使って、わちきなしでは生きていけないようにして差し上げるのですわ」
下着すら着けず薄衣1枚しか身に纏っていない妖艶な姿のフレイヤは、その手指をバルドルの身体に這わせていく。半裸に剥かれたバルドルの顔を胸を腰を手指で弄り、妖艶な笑みを浮かべ、籠絡しようとしていた。
更には自分の豊満な胸元をバルドルの顔に擦り付けると、バルドルの身体を弄っていた手はそのままバルドルの下半身へと伸ばされていった。
それは並大抵の男であれば鼻の下を伸ばして、直ぐにでも己の欲望に身を任せてしまうことになるだろう。だが、バルドルはそんな淫靡な誘いに屈せず必死に抵抗していた。
「うふふ♡流石は光の神子とでも言うべきなのですわ?でも、いつまで強がっていられるか楽しみですわね?ほら、もうここはカチコチですわよ♡♡わちきのモノになれば直ぐに快楽に溺れさせてあげるのですわぁ♡♡♡」
フレイヤは口元を歪ませ妖艶な笑みを浮かべたまま、抵抗が出来ないバルドルの顔を豊満な胸元に埋めさせ、更にバルドルの下半身を甚振っていく。
「い、異変を感じた父上が、必ずや軍を差し向けてくれる筈です。それまで持ち堪えれば……フレイヤ殿、貴女の負けです」
「うふふ♡可愛いわぁ、バルドル♡まだ、あの人が軍を送ってくれると思っているなんて。でも、それまでココは持ち堪えられないようですわよ?ほらもう、パ・ン・パ・ン♡ちょっと突付いただけで可愛らしい悲鳴を漏らすくらい、挿れたくて挿れたくて出したくて出したくてもうガマンの限界のようですわよ?ほら、スグに堕ちてしまえばラクになるのですわ。そ・れ・に・ね♡もう、助けなんて来ないのですわよ。うふふふふ♡♡」
「なッ?!それはどういうことなのですッ。ひゃうッ、や、やめろヤメロやめて下さい。お願いします」
「もう、貴方の帰る場所なんて、無いのですわよ?「アースガルズ」はもう、失くなってしまったのですわ。国は滅んだのですわよ。貴方がここでこうして遊んでいるうちに、貴方は帰る家を失ったのですわ。うふふ♡それじゃあほらッ、もっと可愛い声で喘いで、わちきをもっと愉しませるのですわ♡♡そしたら、ちゃあんとイカせて差し上げますわ」
「そ、そんな、「アースガルズ」が、陥落した……?」
「あぁ、なぁんだ、カラダがイク前に心が逝ってしまったのですわ。これじゃツマラナイですわね。壊れたオモチャじゃ遊べませんわ」
これがフレイヤの魔術遊戯の力に因って、バルドルの心が完全に打ち砕かれた瞬間だった。こうしてバルドルは死んだ魚のような目で床を見詰め、何やらブツブツと話しているだけであり、そこに「光の神子」と称された姿は微塵もなくなっていたのだった。
「おや?何かが近付いて来ているのですわ。はぁ、バルドルの仕上げにはまだまだ時間が掛かりますのに……。仕方がないですわね」
フレイヤはバルドルに対して最後まで仕上げをする事が出来なかった。然しながらバルドルに施す「仕上げ」がどんなモノだったかはさておき、「フォールクヴァング」に近付いて来る者達を先に対処すべく、地下牢獄を後にしたのである。
拠って、そこには心を壊されたバルドルの、嗚咽にも似た悲痛な独り言だけが鳴り響いていた。
「ははは、嘘です、全部嘘です……ははは。全部嘘に決まっています……はははは、ははははははははは」
ばさっばさっ
カーカーッ
「ここかしら?」
少女達は烏の案内で大きな宮殿の前に辿り着いていた。そこには巨大な宮殿が聳え立っていたのだった。
そして道案内をしてくれた烏は2回鳴いたあとで満足そうに消えていった。さり気なくその顔がドヤっていた気がした少女だった。
「どうやら、ここで間違いなさそうだぜ」
「でも、門が閉まっているようだが、どうする気だ?中にいる召し使いでも呼ぶのか?」
「へっ、まさか。ここは敵の本拠地なんだ。そんなコトしてられっかよッ!こうするに決まってんだろうがッ。ふんッどぅおおぉぉぉぉぉぉぉりゃッ」
ごごごごごごごご
「こ、これは凄い。流石はスサノオ殿」
「そこ、褒めるトコなの?」
スサノオは鉄門扉に手を掛けるとそのまま強引に押していった。かなり強引な手口でしかなく、ヘルモーズはその馬鹿力を褒めていたが少女としては複雑な気持ちだった。
「へっ、やっぱり待ち構えていやがったな」
「ウル殿、ヘイムダル殿、御無事でしたかッ!」
がしッ
グいッ
「スサノオ殿、一体何を?」
「ヘルモーズ、悪ぃ事は言わねぇ。アイツらは敵だ」
「まぁ、当然だろうな。敵の本拠地に捕らえられてるハズの者が武器を持ってお出迎えなハズはない。そうは思わないか、ヘルモーズ殿?」
「で、ですが、拘束を解いてここまで逃げて来た……ッ!?スサノオ……殿?」
スサノオは向かって来る2人を見据えたままだ。しかし、ヘルモーズは噛み締められたスサノオの唇から血が滴っているのを見て、言葉を詰まらせていた。
「アイツら、操られていやがるぜッ!フレイって野郎と同じ「風」を纏っていやがる。おぉ臭ぇ臭ぇ」
「そんなッ!そ、そうだ、バルドルは?バルドルならッ」
「サリエル!片方、任せていいか?」
「なんなら、両方でも良いが?」
「へっ、言ってくれるねぇ。だがあんな美味しそうなモン両方とも譲れっかよッ!そんじゃあ、あっちのちっちゃい方は任せたぜッ」
「まったく、スサノオはスサノオだけど、サリエルまでそんな感じだったなんて、思ってもいなかったわ」
こうして2人の対戦相手は決まった。スサノオがウルと闘う事になり、サリエルはヘイムダルと闘う事になったのだ。だが一方で残された2人に対しても、何をすべきかスサノオが一方的に決めていったのだった。
「おめぇはそいつと一緒に先に行け、んでもってあの女を倒して来いッ!」
「えっ?非才もですか?」
「ヘルモーズ、おめぇにあの女が倒せんのかよ?おめぇは捕まってるヤツらを助けに行くに決まってんだろうがッ」
スサノオの言の葉は至極真っ当だった。確かにヘルモーズはこの中では格段に弱く足手まといでしかないが、捕まってる者達を助ける事は可能だろうし、いざとなればドラウプニルを使って逃げる事も出来る。それを踏まえれば適材適所なのは間違いがなかった。
「なぁに、仕切ってくれちゃってんだか。まぁ、いッか。ヘルモーズさん、アタシ達も行くわよ」
「ですが、非才が付いて行けば足手まといに……」
「ここにバルドルがいないなら、まだフレイヤに抵抗してる可能性があるわ。バルドルを助けるなら、助ける気があるなら、立ちなさいッ!」
「は、はいッ!」
「うんッ、宜しい。それにアタシはあの女を倒す事だけに専念しなきゃならないだろうから、アタシはバルドルに構っていられる余裕はないと思うの。だから、ヘルモーズさん、貴方が助けるのよ。それに中の敵はアタシに任せてッ、みんなまとめて、ちゃあんとぶっ飛ばしてやるんだからッ」
「ははは、スサノオ殿の事を貴女も言えませんな」
「ん?何か言ったかしら?それじゃ駆けるわよッ!」
少女はヘルモーズに発破を掛けた。そして宮殿の扉に向かって走り出していく。
ヘルモーズが言った言葉はちゃんと聞こえていたが、そこは敢えてのスルーで対応したのだった。まぁ、少女としてもスサノオをとやかく言う割には、闘う事が苦手なワケではないし、どちらかと言えばそっちの方が性に合ってるのは確かだからだ。
こうしてヘルモーズは少女に発破をかけられ、急いで少女に付いて走って行く。その表情は決意と不安が入り混じっており、どちらかと言えば後者が優勢かもしれない。
だが、その一方でバルドルを助けたい気持ちに嘘偽りはなく、「皆で「アースガルズ」に帰る」と言う気持ちが逸っていた。
走り出した少女と後を追うヘルモーズ、そんな少女は一回だけ振り返っていた。
「ちゃんと後を追っ掛けて来てよねッ!」
「「あぁ勿論だッ」」
「それじゃあ、ちゃっちゃとやられてくれるかい?オレサマを散々おもちゃにしてくれたあの女を一発殴らないと気が済まないんでね」
「まさか貴殿ッ?!」
「へっ、アイツには秘密にしといてくれや。こっ恥ずかしくて死んじまったら困るだろ?」
サリエルはスサノオの話しの内容から悟った。サリエルとしては知りたくも無かった事だったかもしれないが、それに拠ってスサノオという神族の心根が分かった気がしていた。
「全く人が……いや、悪い神族だな」




