ラシンバントヤチホ ν 挿絵付
「輝け九光一滴!」
「ううっ」
ヘルモーズは少女の手を取るとドラウプニルをスサノオに向かって投げ、それに拠って辺りは激しい光に包まれていった。そしてその隙をついて窮地を脱したのである。
「逃してしまったのですわ。まぁ仕方がないのですわ。ふぅ……。では、戻って続きを愉しむとするのですわ」
「うふふふふ♡今夜はお兄様とペットのカラダを堪能する事にして快楽に浸るのですわぁ。あぁん、淫靡に愉しんで蕩けさせてちょうだいなのですわ。うふふふふふふふ♡」
こうして戦場となった地からは誰一人としていなくなった。不敵で妖艶な笑い声を余韻として残しながら。
「危ない所だったねー」
「やっぱり、あの声はイズン殿でしたか。お陰で助かり申した、感謝致す」
少女達はヘルモーズの放ったドラウプニルの光に拠りスサノオ達から身を隠すと、頭に響いて来る声に従い歩を進めていった。そして、進んだ先にいたのは、少女が「アースガルズ」の玉座の間で見たイズンだった。
「この娘がキミ達の危機を教えてくれたんだよッ。だから、お礼はこの娘に言ってあげてねッ」
「えっ?!貴女まさか……サリエルなの?」
イズンに拠って紹介されようとしていた天使族が、名乗る前にその名を明かしたのは少女だった。
その名は過去に少女とクリスが助けた天使族であり、妬みから堕天させられた十二天使の一翼、主殺しと蔑まれた大天使の名である。
そしてそのサリエルはあの時、矮小な小鬼種に取り込まれた結果、小鬼種を最上位種の固有個体へと変質させていた天使族だった。
「助かって何よりだ。そして、あの時の借りはまだ返せていないと思っている」
「やっぱり、サリエルなのね。あれ?でも、髪の毛……切っちゃったの?うろ覚えでしかないけど、雰囲気も変わったような……」
サリエルの容姿は確かに変わっていた。眩いばかりに煌めいていた長髪は、艶のあるショートヘアへとバッサリいっており、その瞳はエメラルドグリーンから深い蒼色になってる。
だが一方で声は変わっておらず、中性的な美声はそれだけで性別の判断が難しかったのを覚えているし、それは変わっていない様子だ。以前はゆったりとした服装で性別が分からなかったが、シルバーのプレートメイルの膨らみが女性だと物語っていた。
だがそれを身に纏い凛とした佇まいは威風堂々としていて気品があり、背中から生える4枚の大きな翼はより一層高潔さを讃えているようだった。
「あれからも色々とあってな、まぁ分かりやすく言えば、イメチェンって言うヤツになるな」
「でもサリエルって女性だったのね。あっ、別に変な意味で言ったワケじゃなくて、前に会った時は分からなかったし、声も中性的でステキだったから尚更……」
「あははは、よく間違えられる。そもそも、天使族は中性的過ぎるからな。皆、似たようなモノなんだ」
そんな2人の遣り取りを見ているヘルモーズは、ただただ唖然としているのだった。恐らくは状況が掴めていない以上に、思った以上に顔が広い少女の事に驚いているのかもしれない。
「サリエルはイズンさ……んと知り合いだったの?」
「あぁ、ボクの事はイズンでいいよー。敬称もいらないから、気軽にイズンって呼んでね」
「あ、はい、ありがとうございます?」
「ちなみにこの娘はボクが管理地で保護してるんだー。たまたま見付けたのもあるけどー。でも傷付いてたから、保護して治療してあげて、その恩返しにボクを手伝って貰っているんだよー」
「恩返しって、恩を受けた人が言うんじゃ……」
「まぁそんなコトより城で、そなたを見掛けたからな、ずっと気にしていたんだ」
「城?「アースガルズ」のヴァーラスキャールヴで?」
少女はいつサリエルに会ったか分からなかった。玉座の間に来た全員を覚えているワケではないが、サリエルの容姿であれば忘れるコトはないと思って思い返してみるが、やはりあの中にいなかったのは事実だ。
しかしサリエルは少女の疑問に応えるべく、羽を羽ばたかせ空に舞い上がると一羽の鷹へとその姿を変えて、少女の肩の上に降りたのである。
「あぁ、そっか!ヴァーラスキャールヴに林檎を届けに来たのって、サリエルだったのね」
「そういうコトだ」
こうして一通りの会話が終わるとイズンに導かれるままに歩を進めていった。そして向かった先に待っていたのは少女の知る人物であり、その姿に少女は驚きを隠すコトは出来なかった。
「ねぇところでイズン、聞きたい事があるんだけど、いいかしら?」
ここはイズンの管理地である「ヘスペリデス」であり、先程までいた世界と「神界」との狭間の次元に存在する特殊な世界の1つだ。そして、そこで新たにもう1人を加えて、5人で円卓を囲み話していたのである。
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「こっちだよー」
「随分歩いた気がするけど、ここは一体……って、うわぁ、凄い!!何あれ?あんな樹、見た事もないわ」
イズンは少女達を連れ、自分の管理地へと向かっていった。2人が合流した場所からは結構な距離を進んだ気がしているものの、追っ手が来ないか心配だった少女の心配を余所に、イズンは特段急ぐ事無く軽い足取りで案内してくれた。そして向かっている方向に、遠目に見ても周りとは明らかにスケール感が違う大樹が聳えているのを見ながら来たが、その樹の麓まで来るとそのスケールは尚更迫力があった。そしてそこが目的地とは思ってもいなかったので尚更驚いているのである。
「この樹ってすっごく大っきいのね?これがあの「林檎」の樹なの?」
「貴女の言う「林檎」はここに成っていた「林檎」であっているのだわ。だけれどもこれは厳密に言えば「林檎の樹」ではないのだわ」
「ヘラ叔母様ッ!」
「ようこそ「ヘスペリデス」へ。なのだわ」
ヘラは少女に紡ぎ皆を「ヘスペリデス」の中へと招いていた。だが一方でヘラの事を「叔母様」と言った少女との関係性やら、なんでただのヒト種が神族と親戚関係にあるのかなど、より一層の疑問を持つ者がいたのもまた、事実である。
「ヘスペリデス」は「オリュンポス」と「アースガルズ」の2つの国に拠って共同管理されている地であり、その中には1本の大樹が生えている。大樹の名は「ユグドラシル」と言って、ありとあらゆる果実を付ける不思議な樹なのである。
「オリュンポス」からはヘラが管理者としてこの地に遣わされており、「アースガルズ」からはイズンが管理者として遣わされているのだった。そして、大樹の根元にあるヘラの屋敷へと皆で赴き、そこで話しをする運びとなったのである。
「叔母様、先日は色々と有り難う御座いました。それと、ごめんなさい。ヘラ叔母様に付けて頂いた護衛を失ってしまいました」
「いいのだわ。貴女を失うよりよっぽど辛くはないのだわ。それに、ピュトンはアテクシの式神、また創り出せばいいだけなのだわ」
ヘラは今にも泣き出しそうな少女を抱き締め頭を優しく撫でていた。その光景をサリエルは少し感動したように見ており、ヘルモーズは「ウトガルザ」で暴れまわっていたピュトンを思い出していた。そしてイズンは何も思う事なく手遊びをしていたのだった。
「ところでイズン、聞きたい事があるんだけどいいかしら?」
「どうぞー」
「フレイとフレイヤは裏切ったの?」
「ッ?!」
がたッ
少女は核心にも近い事をイズンに向かって投げていった、その言の葉を聞いたイズンは難しい顔をしており、慌てていたのはヘルモーズだ。ヘルモーズもどこか心の内では2人が裏切った事を信じていなかったのかもしれないし、イズンがその事を知らないのであれば余計な事を言ってはいけないと言いたかったのかもしれない。
「うーんとねー、多分なんだけどー。フレイヤちゃんは今、フレイヤちゃんじゃないんだよー。フレイはフレイのままだけど、フレイはフレイヤちゃんの事が大好きだから多分、フレイヤに惑わされているんじゃないかなー?」
「フレイヤがフレイヤじゃない?それってどういう事なの?」
「ヴォルならちゃんと応えられるんだろうけど、秘匿開示を持っていないからボクには応えられないよー」
2人の遣り取りにヘラもヘルモーズも、そしてサリエルも黙ってただ聞いているだけだった。まぁ、ヘラは他国の事なので首を突っ込めるハズもなく、自国の事であってもヘルモーズは理解が及んでいない為に口を挟めないのだろう。サリエルはそもそもイズンに拾われただけなので、尚更何も言えた義理はない。
「あとそれと、ねぇイズン?「林檎」を使えばフリーシンガメンの効果を打ち消せるのかしら?」
「それは多分平気だよーッ」
「えっ、ホント?それじゃ……」
「「林檎」に対して愛を示せば、フリーシンガメンの「呪縛」を返せるハズだよーッ」
「えっ!?愛?」
「サリエル、「林檎」を持って来てあげてー?」
「承った」
サリエルは姿を鷹へと変貌させると、窓から出て羽ばたいていった。然しながら、イズンに言われた「愛」が何故必要のか分からない少女は、これ以上の展開にどう対応していいか分からなかったのも事実だ。
だが一方で、今まで誰とも付き合った事のない少女が、「愛」なんて言われても分からないのは当たり前と言えば当たり前だろう。まぁ、異性と付き合った結果以外の「愛」はあるだろうが、それらもまた希薄なのは確かである。
暫くするとサリエルは「林檎」を持って部屋に戻って来た。そして、テーブルの上に「林檎」を置くと再び元の姿へと戻っていった。サリエルが持って来た「林檎」は前に貰った物と全く同じだが、前に貰った物よりも輝いているように見えた。
「この「林檎」はありとあらゆる怪我を治し、病気を癒やす薬になるんだよー。それこそ失った欠損部位ですら元に戻る奇跡すら起こせるんだー」
「それって、最高位回復薬以上の効果じゃない!」
イズンは「林檎」の説明をしながらも、その手の中にある「林檎」で手遊びをしている。人間界では絶対に手に入らないそんな貴重で高価で重要なアイテムを、遊び道具にするなんて人間界の住人なら考えも付かないだろうが、管理者であるイズンにとっては「おもちゃ」くらいの考えなのだろう。
「でもねー、フリーシンガメンの持つ「呪縛」は結構強力だから、ただ「林檎」を与えただけじゃ、治らないと思うよー」
「え、奇跡すら起こせるのに、治せないの?それで「愛」……なの?」
がたんッ
ずずずいッ
「「林檎」の力を最大限に引き出すには「愛」の力が大事なんだよーッ」
落胆する少女に対して、急に鼻息を荒くしたイズンは興味津々といった表情で少女の眼前に顔を寄せて来ていた。流石に唐突に迫られれば焦るしかないが、何を考えているか分からないイズンの言動には、少しずつ慣れた気がしていた少女である。
「ね、ねぇ、あのさ。「愛」の力って何なの?アタシ……その……まだ、誰とも付き合ったコト……なくて、その、経験もまだ……ごにょごにょ」
「そろそろ揶揄うのは止めるのだわ、イズン」
「ちぇー、つまんなーい」
「えっ?アタシ、揶揄われてたの?えっ?そうなの?」
「だってぇ、ウブな感じがたまんないんだもーん。じゃあ怒られちゃったし特別に教えてあげるねー。「愛」の力は体内に一度取り入れたモノを口移しで与えればいいんだよーッ。そうすれば、「林檎」は最大限の力を発揮出来るんだー」
ぼしゅうッ
イズンが紡いだ言の葉は衝撃だった。いや、確かに一般的に考えれば「そんな事?」くらいの考えかもしれないが、それでも少女は動揺し「バたんッ」と座っていた椅子ごと後ろに引っくり返っていった。頭から湯気を噴き出しながら。
でも確かにそれはそうだ、キスだけならいざ知らず自分が咀嚼したモノを人に渡すなんて絶対にしたくない行為でしかない。拠って少女の抵抗力がオーバーヒートを起こした結果だった。
「はあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあ?ちょッちょちょ、ちょっと待って、なななな、何をアタシにさせるつつつ、積もりなの?」
「なんか、昔のヘスティアを見てる感じなのだわ」
少女は頭を押さえながらも立ち上がると、しどろもどろに空回りして言の葉を紡ぐが舌が回っておらず、目の前の神々に対してカミカミになりながら紡いでいた。そして、ボソッと言ったヘラの言葉は耳に届かなかったようだ。
相当テンパっている様子である。
「あ、アタシにそんな事出来るワケないじゃない!」
「それなら、やらなきゃいいんじゃないかなー?にやり」
「そ、それ以外に方法はないワケ?」
「そうだねー。まぁあるにはあるけどそっちの方が現実的じゃないよー?」
「た、試しに聞かせておいてもらえるかしら?」
「フリーシンガメンを操っているフレイヤちゃんを倒すかー、フリーシンガメンを破壊すればいいんだよー」
イズンは会話に飽きた様子だった。だから投げ遣りな感じで紡がれた言葉はイズンが言った通り、現実的ではなかったとしか言えない。
何故ならば、その2つの方法はいずれにしてもスサノオを倒さなければならないからだ。そしてそれが難しいから先ずはスサノオの呪縛を解きたいと考えているのだ。
結果として「鶏が先か卵が先か」であり、限りなく不可能に近い可能性しか残されていない。だからこそ少女は項垂れるしか道は残されていなかった。
天秤に掛けられたモノは“Kiss or Die”であるが、“Die”は自らの死ではなく「恥ずか死」であるコトに相違はない。
「こんな所におられたのですか?昼間の話しを気にしておられるのかな?」
「ヘルモーズさん……」
ヘラは話しの後で「今日はもう暗くなるから、行動に移すなら明日にするのだわ」と紡いでいた。それによって少女とヘルモーズはヘラの屋敷に泊まらせてもらう事になり、イズンは自分の屋敷へと帰っていった。
サリエルはイズンに許可を貰った上で、ヘラの元に留まる事にした様子だった。
少女は少し独りになりたくなっていたから、ヘラの屋敷から一旦外に出ると「ユグドラシル」を見上げて心を落ち着かせていたのである。
「隣に座ってもいいですかな?」
「え、えぇ」
少女は多少虚ろな瞳をヘルモーズに向けていた。それは悩みがあると顔に書いてあるようなモノで、ハキハキとした少女からはあまり想像出来ない姿とも言える。
ヘルモーズはその虚ろな瞳を見て、溜め息を漏らしていた。まぁ、バルドルに頼まれてからの短い付き合いでしかないが、それなりに少女の事は理解しているつもりなので、少なからず老婆心が働いたのは事実だった。
「貴女はスサノオ殿をどう思っておいでなのですかな?」
その一言は少女の心に深く突き刺さっていった。少女は深く突き刺さったそのトゲのようなモノを抜こうとはせず、ありのままの言葉でヘルモーズに応える事にしたのだった。
「スサノオは神族よ。そしてアタシはヒト種。好きとか嫌いとかじゃなくて、スサノオは頼もしい仲間……と言うか。その……まぁなんて言うか、色々あった事は事実だけど、でもね、一線は越えられないのよ。越えたらいけないのよッ」
「それにアタシ、好きな人がいるの……アタシはその人の1番でありたいし、でも、フレイヤがスサノオにしてた事を見たら、なんか、その……。ああぁ、アタシおかしくなっちゃったのかな?ねぇ、分かんないよ。なんなの、この気持ち。なんでこんなに心が苦しくなるの?」
少女の顔は今にも崩壊しそうだった。それは増水し決壊する寸前くらいまで堤防が崩されつつも、辛うじて耐えているかのような感じでもあった。
一方でその瞳は固い決意を宿しているようにも見える。しかし同時に悲しみの色合いも濃く深かった。
思春期に思春期らしい事を何1つとして体験出来ず、ひたすらに目標を目指していたのが災いしているのだろう。カラダは成熟していきながらも、ココロが未熟なあまりにそこから来る葛藤に苦しんでいる少女の姿は痛々しく、ヘルモーズも言葉を詰まらせていた。
ウェスタやヘラ、アテナやガイアと言った者達なら少女を優しく抱き締めて頭を撫でていたに違いないが、ヘルモーズにそこまでの事を行える行動力は無い。
ちなみにカラダは成熟していても、発達はしていないので勘違いをしてはいけない。
「貴女にとってはそれはとても大事な事なのでしょうな。それであっては仕方がありますまい。それに伝えるのが大変心苦しいのですが、それは所謂、「恋」と言うヤツではないですかな?」
「えっ?恋?アタシがスサノオに?でも、アタシは好きな人が……でもそうしたら、アタシ誰彼構わず恋しちゃう尻軽女みたいじゃないッ!」
「ははは。人は恋をして成長し、そこから色々な経験を積んでいくものなのですぞ。だから誰を好きになるのも自由でありましょうし、何かの契約をしたワケではないのなら、それは仮に今、本当に好きな人がいても裏切りにはなりますまい?」
「なによその理論……」
「ですが非才もスサノオ殿には助けられた身、微力ながら全力で立ち向かいましょうぞ。しかしスサノオ殿の事は貴女にお任せするしかないようですからな、貴女がどんな結論を出しても非才は何も咎められませぬ」
ヘルモーズはそれだけ言い残すと、立ち上がって屋敷の中へと戻っていった。少女は言い逃げされたようで多少気に障ったが、ヘルモーズの言いたい事は充分伝わっていたので飲み込んだ上でヘルモーズを見送ったのだった。
そんな2人の様子をサリエルは屋敷の中から眺めていた。そして、ヘラもまた然りだった。
「アタシ、スサノオの事が好きになっちゃったのかなぁ。どうしよ……分かんないよ」
「これから行くのだわ?」
「はい、行ってきます。有難う御座いました、ヘラ叔母様」
「不肖も付いていこうと思う。イズン様には許可は頂いてある。構わないだろうか?」
「あれ?サリエルも来てくれるの?」
翌朝、少女は目覚めると再び「アルフヘイム」へと向かう決意を改めて固めていた。そして、少女の元にはヘルモーズの他にサリエルの姿もあった。こうして皆でヘラの元に挨拶に向かったのである。
「アテクシは他国の事に関与してはいけない立場……、でも貴女を失えばウェスタが苦しむから、少しだけ力を貸してあげるのだわ」
「これは石?凄く綺麗!ヘラ叔母様、これは何に使う石なのですか?」
「その7つ石は窮地に貴女を導いてくれるから、名前を呼んであげればいいのだわ」
ヘラは7つの石を少女に渡した。そしてヘラが紡ぐ「詩」は少女の顔を笑顔にしていった。
「本当にありがとうございます、ヘラ叔母様」
3人は再び「アルフヘイム」の地を踏んでいた。「ヘスペリデス」から「アルフヘイム」へと繋がる道はサリエルが導いてくれており、「アルフヘイム」へは難なく入る事が出来ていた。だが、そこから先はいつ襲われるか分からない事から警戒を持って進んでいく。
「ねぇヘルモーズさん、フレイヤの住まいってどこにあるの?」
「いや、そのなんと言いましょうな。ははは」
「えっ?アタシそんなに難しいコトを聞いたの?」
「フレイヤ殿の住まいの場所は明かされていないのです。フレイヤ殿と肉体的な関係を持ちたい者は恥ずかしながら多く……。それはそれは神族だけでなく様々な種族におモテなる方ですので、付き纏われない為にも住まいは明かされていないのです」
ぴきぴき
「ふ、ふぅん。おモテになる方は大変ですねぇ」
「ヒッ」
少女の顔は完全に引き攣り、額には青筋が何本も立っていた。ヘルモーズはその形相を見て、短く悲鳴を漏らす程だったのだ。しかしまぁ、顔が良くカラダが官能的なだけでモテモテなのは、少女としては許容出来るハズもなく、怒りゲージが増加していったコトについて分からないワケではない。
が、そこに触れてはいけないとヘルモーズは暗に悟ったのだった。
「それじゃあ、こちらから乗り込むのは難しいわね。アテもなく向かうワケにもいかないし」
「しかし乗り込むのは難しいかもしれんが、向こうから出向いてくれるのであれば特に何も問題は無いと思うが?」
にやり
「そうね」
少女達の視線の先には、一振りの剣を携えた一柱の闘神がいた。そしてその闘神は少女達の動向を睨み据えていたのである。
少女とサリエルはその存在にいち早く気付いており、「スサノオ奪還作戦」の火蓋は切られる直前だったのは言うまでもない。
しかし、ヘルモーズはそんな2人の遣り取りを見ながらもスサノオに未だ気付いていなかった為に、オロオロしていたがそれは余談である。




