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不思議なカレラ @仮完結 只今最終校正中につき“ ν ”が付いてる話しのみをお読み下さい  作者: 酸化酸素
1章 Self-introduction

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World Processor ν

「地上は今、大変な事になっているんだッ。アンタが今、「ソレ」と闘やり合ってるって言うんなら、そっちで地上(こっち)を何とか出来ないのかい?」


「えっ?今何て?それって、どういうコト?」

「——あっ!?しまっ!ガードをっ!えっなにこれ、デブリじゃない……。フェ……イク?」

「やああああああ、がががががががあぁぁぁあぁぁ」


 それは焦りの余り掛けた通話だった。マムは突如として発せられた怪光線に因って、大地が灼かれていくのを()の当たりにしたからだ。



 地上には(そら)の情報は入って来ていない。だからあの「目」が、()()()()()()()()()()()

 故に地上が灼かれている理由も分からなかった。



 あの「目」が虚無の禍殃(アンノウン)の始まりならば、止める為には最大戦力である少女を投入しなくてはならない。しかし統合演算装置ミュステリオンからは正確な情報は、何1つとして上がって来ていない。

 ネットワーク上で憶測が飛び交っているだけだった。



 その情報に拠れば各国は、実弾兵器やハンター達に緊急要請(エマージェンシー)を出したらしい。しかしマムは「優先すべきはそこじゃない」と考えた。

 拠って、国民の避難勧告を優先させた。


 既に()()()()()()()()()()()()と連絡は来ているから、人的被害は抑えられるだろう。

 そして最後に情報を集めるべく少女に対して通話をしたのだが……。


 しかしその最中に、叫び声とも悲鳴とも付かない音声が聞こえて来たのだった。



「あ、マズったねぇ、こりゃ」

「ま、まぁ、そしたらそっちはそっちで頑張っておくれよ」


つーつーつー


「はぁ、こっから先、どうなっちまうんだろうねぇ……ところでありゃ、一体全体何なんだい?まるで、ソドムの火みたいじゃないか……」


 マムは状況が理解出来無い上に、通話相手(最大戦力)の身に何かが起きたのを悟り、慌てて通話を切った。

 その心境は途方に暮れる以外になかったと言えるだろう。



 マムは空を見上げていく。空には不気味な「目」が怪しく光っていた。

 そしてそれは、不定期的かつ非周期的に、破壊目的を伴った光を放っている。放たれた先にある市街地からは火の手が上がっているようにも見える。それは少なくとも神奈川国内でない事を祈るばかりだった。

 そしてその光が、次はどこを薙ぎ払うのかなんて、予想も見当も付くハズが全くなかった。



こんこん


「開いてるよ、入っておいで」


「失礼致します、マム。国民の避難が無事に完了したと各シェルターより報告が入りました。よって直ちにマムも避難をお願い致します。この建物もいつまで保つか分かりませんので」


「分かったよ。あたしゃ最後まで見守りたかったが、ずっとここにいて()られちまったら、何を言われるかたまったモンじゃないからね……。——あぁ。ちゃんと無事に帰ってくるんだよ」


こつッこつこつッ


「じゃ、アンタも付いといで」


「はい、マムの後に従います」


 マムは部屋の床を手に持っている杖で叩いた。すると床にポッカリと穴が開き、マムはその穴の中に身を投じていった。

 マムに続いてもう1人の女性も穴の中へと入っていく。



 そして、部屋には()()()()()()()()




 マム達が穴を抜けると、大きな広間に出ていた。その広間の中では、既に公安の関係者及び職員が役割分担の元に、()()()()()活動を開始している。




 この時代、いつ如何なる時に、有事が起こるかは分からない。付け加えれば、いつ如何(いか)なる時に、災害級の魔獣が現れるかも分からない。

 そういった背景を持っている事から、非戦闘員の避難経路は確立され、一定期間避難出来る場所への入り口が神奈川国内のあちらこちらに配置されていた。



 神奈川国の地下にある広大な避難場所はシェルターと呼ばれ、そこには武器弾薬を始め、水や食料、毛布やテントといった物までもが配備されている。


 シェルターは中央の通路から横方向にいくつもの通路が延びており区画分けされている。よってその先には複数の部屋があり1家族単位で寝泊まり出来るように造られている。

 更には中央の道を最奥まで進んで行けば、最終的にはマムが到達した広間に来る事が出来る仕様になっている。



 ただ、このシェルターは有事発生などの緊急の際にしか解放されず、それ以外の時は立ち入る事が出来ない。

 拠って、この規模のシェルターを誰がどのような方法で造ったのかという建造方法や、普段は誰がどのように管理しているのかといった諸事情は、一切合切(いっさいがっさい)が謎に包まれている。



 シェルターの各部屋にはモニターが複数個設置されており、そこに映し出される映像は地上の様子だ。


 避難者達はそこで地上の安否を確認し、地上の安全が確保出来た場合には、速やかに退去する事になっている。



 然しながら今、モニターに映し出されている映像は縦横無尽に怪光線が暴れている光景であって、それは、街の被害が甚大(じんだい)である事を物語っていた。

 この国で最大強度を誇る公安施設であっても、無事な姿を保っていてくれるかは祈る事しか出来ない。



 尚、これと同じシェルターを保有する国は他には無い。その為に他国に於いては数百人規模の地下シェルターを広域避難所としていくつも展開していたり、国民各自で地下シェルターを建造する事を推奨している酷い国も、意外とザラにあるようだ。

 要はその国のフトコロ事情を物語っていると言っても過言ではないだろう。




 地下シェルター建造は惑星融合の際に、その影響が()()()()()()()()()()()だった事に(たん)を発している。拠って、地下であれば同様のコトが起こっても最低限の安全は守られると考えたのだ。


 更には緊急時に於ける安全対策として、統合演算装置ミュステリオンを経由して各国に呼び掛けられ、実施、実装された経緯がある。ただし、どの規模でどのように実装するかまでは指定されていない。

 だから国に拠っては、見せかけ(ポーズ)の場合もあるので神奈川国は非常に優秀と言えるだろう。




 話しは変わって、「目」に対する緊急要請(エマージェンシー)が発令されたものの、全世界各国のハンター達は成層圏ギリギリの所で待機せざるを得なくなっていた。しかし「ただ待機」では、士気が上がるハズもなく報酬もあるハズがない。

 だから攻撃手段を持っている者は各々が思い思いに攻撃をしていた。

 それは、「実弾兵器や魔術を問わず」だった。


 それらは等しく効果がない攻撃ばかりだったが、何かをせずにはいられなかったのだ。



 拠ってそのハンター達は、「目」から放たれた光によって灼かれた()()()()()()()とも言える。

 中には難を逃れたハンターもいたので、上空にいるハンター全てが墜とされたワケでは決して無い。


 そして、墜とされなかったハンター達は、その脅威度を充分に理解した上で、各々が持てる最大火力で再び「目」に対して等しく無駄な攻撃をしていった。



 魔術士(スペルキャスター)系のハンターは詠唱し、魔術で攻撃をしていく。

 効果がない事は目に見えて分かっていた。だがその攻撃を止めるコトは出来なかった。


 銃士(ガンナー)系や弓使い(アーチャー)系のハンターはそれぞれ武器や能力(スキル)を駆使して攻撃を加えていく。

 効果がない事は火を見るより明らかだった。だがその攻撃を止めるつもりは無かった。


 戦士(ウォリア)系のハンターは攻撃を加えるコトが出来ない為に身体を張ることにした。

 率先して防御要員(タンク)に回り攻撃しているハンター達をサポートした。だが光の前には無力だった。



 ハンターに拠る攻撃に効果が無いのは確かだった。だが、それらの映像はミュステリオンに拠って拾われ、ネットワーク上にアップロードされていった。

 その結果、それらの映像は人々の心に希望の光を(もたら)すコトになる。



 何の映像も無く情報も無く、ただシェルターに避難しているだけだったら、恐怖に怯え、死の気配に震え、いつ終わるとも知れない絶望に(さいな)まれていた事だろう。

 そしてそれらは間違いなく「ソレ」の養分になる。


 だが逆に「ハンター達が空の上で闘っている」という事実は、非戦闘員の心の拠り所となり、絶望に負けない希望を芽吹かせていった。



 「目」の発現からどれだけの時間が経ったかは分からないが、「目」が消え始めた時に人々の恐怖は安堵に変わった。

 そして芽吹いた希望は大きく成長していった。



 一方で空の上にいたハンター達は、何者かが「目」を斬り裂いていくのを見ていた。


 自分達より遥か上空にいる、光と闇とそこから伸びる白金(プラチナ)に輝く何か……。更にはその光と闇に追従するような虹色の余韻。

 その何者かは光のような速さで空を駆け巡り、カラフルなグラデーションに染め上げていく。恐怖と絶望を植え付けていた不気味な「目」から一変して、そこには色とりどりで鮮やかな希望に塗り替えられた空があった。



 空にいたハンター達はその光景から目が離せなかった。離すことが出来るハズもなかった。



「自分達では決して為し得なかった偉業を行っている者がいる」



 少女が「目」を斬り裂いていく光景を見た全てのハンターが、その偉業をその目に焼き付けていた。


 そしてそれが()()()()()()()()()畏敬(いけい)の念の抱かずにはいられなかった。その光景を見たハンター達は、各々の最大級の敬礼を畏敬の念と共に贈り、その姿を見詰めていた。




 空から綺麗サッパリと「目」が()くなった後でもハンター達は自国に戻ろうとはしなかった。ハンター達は気になっていたのだ。

 それは自分達の遥か上空ではまだ、何かが起こっている事実を知ったからだ。だから自分達の運命を握られている以上、離れたくなかった。

 見届けたかった。



 その境地に至ってしまった以上、そこには国の違いだろうが種族の違いだろうが、はたまた言語の違いだろうがそう言った全てのコトが一概に関係なくなっていた。だから例え有事の際は生命の()り取りをする間柄であったとしても、今のこの状況に於いてだけは違っていた。



 ハンター達は「目」を斬り裂いた者が駆けていった方へ、例えそれが国境を越える事になっても追い掛けていった。


 追い掛けていく者は1人、また1人と増えていく。国を越え、種族を越え、言葉の壁すらをも越えた一団がそこに形成されていた。




 遥か彼方の上空で太陽にも匹敵する程の眩しい光が、大地を照らした時にはその集団は数千にも及んでいた。そして、その集団の1人1人が(そら)を見上げ、何が起きているのか分からないままに、何かから護ろうとしている者の安否を必死に祈っていた。



 そこにいる誰しもが、()()()()()()()()()()()()()()()、1つの流星が一直線に流れていくのが見えた。

 それは昼間でも明るく光を放つ、箒星(ほうきぼし)のようでもあった。



「おい、何かが墜ちて来るぞ!」

「あれは人だ!宙で闘ってたハンターだ!」



 それはその中の1人のハンターが上げた声だった。そしてその声は瞬く間に伝播し、その場に居合わせた全員がその「墜ちてくる者」の元に向かって空を駆けていった。



 光と闇をその身に纏い白金(プラチナ)色の剣を携えて、虹色の余韻を残しながら()の者は宙から墜ちて来たのである。



 その場にいたハンターは、墜ちていくその者が生きているのか死んでいるのかなんて分からない。

 だが、その者は彼等にとって、(いな)()()()()()()()救世主である事に間違いは無い。

 だからこそ……だ。


 生きているのであれば、()()()()()()()()()()()()


 死んでいるのであれば、亡骸を丁重に葬る為にも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 ハンター達は必死に空を駆けていく。だが、引力に引かれ自由落下していく彼の者の速さには誰一人として追い付けない。


 更に、墜ちていく途中で、彼の者が纏っていた光と闇は(かす)かな余韻を残して消えていった。

 こうして目印すらも失った。



 だがハンター達は愕然とした。墜ちていく彼の者は、下から突如としてやって来た何者かに空中で拾われ、どこかへと消えていったのだから。




 こうしてハンター達は追い掛けるのを諦めた。そして、今まで見たものをしっかりと心に焼き付けて、自分達の国へと帰って行った。




 「3.15の禍殃(アンノウン)」に於ける被害は各国共に甚大だった。街は幾つも焼け野原となり、復興の目処は立っていなかった。

 人々が安心して暮らせる住居は、その数が余りにも足りていなかった。



 過去からの教訓があった事により、世界的に見れば前回(惑星融合)と比べたら被害者数はそこまで多くなかった。

 それでもトータルで見れば人的被害は、全世界で数百万人規模に達するのは疑う余地が無かった。


 そして、この「3.15の禍殃(アンノウン)」に於ける最大の被害はハンターの保有数を各国が大幅に減らした事だった……。




 神奈川国は「ソレ」のコトを事前に知っており、少女1人が出撃した事からハンター減少の被害は無かった。

 だが一方で、事情を知らない諸外国は緊急要請(エマージェンシー)を発令した為に、(いたず)らにハンター達を死地へと追いやる結果になったのである。



 それらが指し示す事は、魔獣被害の増加と、犯罪抑止力の低下だ。拠ってこれから数年の間、諸外国はハンター不足を余儀(よぎ)無くされる事になる。



 どこの国もハンター不足になった事から、戦争に発展するケースは(まれ)だったが、犯罪多発と魔獣被害は後を絶たなくなっていった。




 一方でハンター不足が(もたら)したのは、犯罪増加と魔獣被害だけでは無かった。


 各国は「ハンターが不足しているなら」と、国力を上げて新戦力の開発と新兵器の開発を進めていった。



 要はハンターに代わる戦力の生産に至る道か、戦力差を(くつがえ)す程の兵器の開発へと続く道の、二択を迫られたのだ。

 または、その両方の選択肢を選ぶ道へと(はし)るかだった。



 そこで開発された物を巡り、再び戦火が巻き起こっていく事になるが、それはまだ少し先の話しである。


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