第三話 元魔女は、密かに口付けを交わす件について(仮)
「な、何さ? そんな気持ち悪い動きして、それでも彼の知人なのかい? ますます怪しいわね」
-その怪しい男が、まさかその勇者だとは思うまい。
しかし、困った。
彼女は間違いなく、俺のファンだな。これは確定だ。
といっても、俺も冷静だ。
今、俺がその勇者だと名乗りを上げたとしても、絶対に信じないだろうな。俺のこと冴えないやつだって言っていたし。
だが、それに関しては不問としよう。
褒められたのも事実なわけだからな。
「何気持ちの悪い顔しれるんだい?」
-おっと、顔のにやけが止まってなかったみたいだ。
「な、なんでもない・・・」
「そう・・・」
そのとき、その幼女の周りに禍々しさが増していく。
-んんんん? いったい何をしているんですかね?
「あんたが、本当にあいつの知人なのかどうか試してあげるわ。いや、彼の隣に立つべき人間なのか査定してやる」
-何この子、怖い。
完全に相手はやる気満々のモードになっていた。
それほどまでに、彼女を熱くさせる勇者、いったいどれほどのものなのか。・・・あ! 俺だったか!
「ま、待てよ! そんなことして、俺のことを殺しでもしたら、あいつに嫌われるぞ? それでもいいのか?」
「そ、それは・・・・・・」
幼女から禍々しさが消えていく。
-どんだけ、好きやねん! いいね!!
「いやいや、そんな手には乗らないぞ! 私をだまそうとしても無駄だ!」
辺りに再度、風が巻き起こる。
―情緒不安定かよ!
「そうだ。貴様を殺してアンデッド化をしてから、彼の居場所をはかせれば問題ない!」
「いやいや、問題ありまくりだからな。そんなに簡単に人の命奪ったら駄目だから!」
「関係ない! 私が見れない間に、幾度もの彼の姿を見てきた貴様などこの世から不要だ!!」
-んんんん?
つまり、ずっと勇者の隣にいた俺のことがそもそも気に食わないってことか? なんじゃそりゃ! 激しすぎる嫉妬かよ!
「くそ・・・・」
風が、暴風に変わる。
辺りの建物が、石垣作りなのに悲鳴を上げ始めた。
-どうする?
このままだと、かなり面倒なことになりそうだ。
といっても、相手は俺の言葉を信じる気はない。というか、聞く気がない。説得は無理だということだ。
-やるしかないか・・・。はあ、またクソ面どうだ。
「仕方がない。やってやるよ」
-ここは相手と同じ力で対抗したほうがよさそうだな。
相手は黒魔術を使用する。古代の魔女として、前の世界では名を轟かせていた人物だ。
ここでもそれを使用するにきまっている。
なら、俺も黒魔術を使用しよう。
まさか、元勇者がそんな力を行使できるとは考えないだろうから、俺だとばれる心配もないし、久しぶりに使うから良い肩慣らしにもなる。一石二鳥だ。
「そういえば聞いてなかったな。お前はあいつの何なんだ?」
「愛人だ!」
「・・・・・・・は!?」
-いやいやいや、何この子いきなりぶっこんできてんの?? 昔、そんな雰囲気微塵も感じさせなかったじゃんか! びっくりして腰が抜けるか思たわ!!
「愛人だよ! だから、あんたなんかより、私のほうが関係が深いの!」
幼女はそこで両手を上下させて地団駄を踏む。
地面がそれによって、地割れを起こした。
まったく、可愛らしい行動とは裏腹に野蛮なやつだ。
それにしても、ここまで嫉妬を含んでの言葉が来ると、少し、いやかなり怖い。
-それに、その姿で愛人とかは言わないで欲しいな。俺が幼女趣味だとか思われそうだから・・・。
「まあ、まあいい。お前が愛人だとしよう」
-断じて違うけども!
「異世界からよく、ここまで来ることができたな」
相手が、質問にはしっかりとこの状況でも答えることは、わかったので、できるだけ今は相手の言動はさておいて、情報を仕入れる向きにベクトルを変更した。
いちいち相手の言葉に反応していたら、いろんな意味で身がもたなそうだ。
「簡単だよ」
幼女は髪を払った。
うん、昔ならそれもよかったけど、今だと、ただ大人びた行動がしたい子供にしか見えないな。
「黒魔術はどの異世界に対しても同じゲートを使って使用する。つまり、黒魔術ならどの異世界にも転移することができるってわけ」
「ふーん」
それぞれの能力は、能力発動に神や悪魔から与えられたゲートなるものをその力が通る必要がある。
俺が異世界に行っても力が使えるのは、その理屈からだ。どの能力も、どんな世界でも、同じゲートを通るように神が俺のものの仕組みをいじくっているからだ。それはシャルも同じだ。
つまり、通常なら異世界転生しただけでは、前世の力をそのまま使うことはできない。といっても、すべてがゼロになるわけではなく。異世界にも似たゲートがいくつもあるので、それを通すことで、似た力を行使することができるというわけだ。
だから、経験値は引き継がれる。
しかし、黒魔術はその例外に位置する。
黒魔術は、どの世界でも同じゲートを使用している。
これは黒魔術を作成した者が、異世界転生者であったからだ。
つまり、どの異世界ともゲートを通じて繋がることができるというわけだ。
だからこそ禁術とされているわけだ。
「それは俺だって知っている。だけど、問題はそこじゃないだろ? どのゲートも同じだとしても、異世界に転生できたことなんて過去一度もなかったはずだ」
そう、それができるなら、もうとっくに異世界戦争が勃発していることになる。
「そもそも魔術の転移に必要なのは、正確な位置座標、それがわからないと転移が失敗して、それこそ、異世界に転移失敗したなら、狭間の空間に閉じ込められることになるはず」
その言葉に、幼女が、その可愛らしい表情からは想像もできない下品な笑顔となった。
「よく知っているじゃない。流石は、臨時で彼の隣にいる男ね」
-臨時はいらんやろ。俺がその彼やからね。
「いいわ。冥土の土産に教えてあげる」
幼女は得意げに話しだす。
ここで俺は思った。
-あ、結構お人よしだ。いやそもそもチョロい?
と。
「異世界の座標、それはものすごく複雑で、それを知ることなどほぼ不可能よ。でも私はその座標を発見することに成功した。どうしてだと思う?」
「お前が天才だったから、といかいうオチじゃないだろうな?」
異世界の座標を知る手段。
それは、俺にもわからなかった。
そもそも、それができたのなら、一々死んで転生する必要性がないからな。
めんどくさい人生を何度も経験するよりかは、そのほうが幾分か楽だろう。
「愛の力よ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺は、頭を抱えた。
-もう。やだこの子。シャルよりめんどくさい。
「私はね。彼にある黒魔術を掛けていたのさ」
「・・・・・ある黒魔術?」
それは初耳だった。
「そう、彼が酔っ払って倒れだときに、キスして掛けたの。庇護の黒魔術をね」
「・・・・・・キス?」
「その庇護の魔術はね。私特性のもので―」
「ちょっと待った!!」
手を前に突き出し、相手の言葉を静止させる。
今、重大な言葉が俺の耳の中の鼓膜を震わした。
「な、なにさ?」
「今、酔っ払ったとき、何をしたっていった?」
「だ、だから・・・・・・」
幼女はもじもじと身体を捻りまじめた。何このかわいい生き物。
「・・・・キ、キスを・・・」
-キスされたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
衝撃の事実に、俺はまたその場で膝から崩れ落ちた。
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「座席が前のやつが最近宇宙人になったらしい件について(仮)」です!




