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完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 翡翠


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第58話 お話し合いというより、見ていただく方が早いかと



 アストレア聖域領、外縁。


 整備された街道に、三つの隊列が並んでいた。


 それぞれ異なる旗。


 宗教国家。


 軍事国家。


 商業国家。


 目的は同じ。


 視察と交渉。


「……これが聖域領か」


 軍事国家の使節が言う。


 視線の先。


 城壁はない。


 だが。


 侵入しようという発想が出ない。


「防衛は」


「不要だろうな」


 短い会話。


 すでに理解している。


 宗教国家の使節が一歩進む。


「神竜の気配を確認」


 一拍。


「人の神も」


 静かな声。


 だが、確信している。


「……本物か」


 商業国家の使節が言う。


「価値は」


「測定不能だ」


 それが答え。


「……」


 三者が沈黙する。


 交渉の前提が崩れている。


 その時。


「いらっしゃいませ」


 セリアが現れる。


 穏やかに。


 いつも通りに。


 その後ろに。


 エル・セラフィア。


 アウレリオン。


 セレス。


 さらに。


 異種族が自然に動いている。


 日常として。


「……」


 三者が一斉に沈黙する。


 想定外。


 完全に。


「本日は遠いところお越しいただき、ありがとうございます」


 セリアが一礼する。


 完璧な所作。


 外交として成立している。


「……」


 軍事国家の使節が口を開く。


「我々は――」


 言葉が止まる。


 何を言うべきか分からない。


「お話し合いというより」


 セリアが穏やかに言う。


「見ていただく方が早いかと」


 その一言で。


 すべてが決まる。


「……案内するのか」


 商業国家の使節が問う。


「はい」


 セリアが頷く。


「そのままご覧いただければよろしいですわ」


 拒否する理由がない。


 むしろ。


 それしかない。


「……」


 三者が顔を見合わせる。


 そして。


「……了解した」


 軍事国家の使節が答える。


 歩き出す。


 聖域の中へ。


 最初に見えるのは。


 畑。


 ゴブリンが耕している。


 ドワーフが水路を整備している。


 エルフが木を管理している。


 すべてが連動している。


「……」


 商業国家の使節が止まる。


「……効率が高い」


 それが最初の評価。


「……争いは」


 宗教国家の使節が問う。


「ございませんわ」


 セリアが答える。


「理由は」


「必要がありませんもの」


 沈黙。


 完全な沈黙。


「……」


 軍事国家の使節が言う。


「……これは」


 一拍。


「防衛ではない」


「はい」


 セリアが頷く。


「不要ですもの」


「……」


 商業国家の使節が小さく呟く。


「……市場が成立している」


 すでに。


 交換が起きている。


 自然に。


 価格という概念すら曖昧に。


「……なあ」


 軍事国家の使節が言う。


「何だ」


「交渉って何だ」


 沈黙。


 そして。


「……分からん」


 正直な答え。


 宗教国家の使節が静かに言う。


「……これは」


 一拍。


「従うか、離れるかだ」


「……ああ」


 軍事国家の使節が頷く。


「選択は二つしかない」


「……」


 セリアが振り返る。


「いかがでしょうか」


 穏やかな問い。


「……」


 三者が沈黙する。


 長く。


 深く。


 そして。


「……適応する」


 軍事国家の使節が言う。


「……同じく」


 商業国家。


「……信仰として受け入れる」


 宗教国家。


 結論が揃う。


 交渉ではない。


 選択。


「まあ」


 セリアが微笑む。


「それはよろしいですわ」


 それで終わる。


 外交が。


 世界が。


 この場所を基準に再定義される。


 静かに。


 確実に。

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