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完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 翡翠


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第57話 少し増えてまいりましたわね



 アストレア聖域領。


 かつての公爵領は、すでに別の姿をしていた。


 広がる畑。


 整えられた水路。


 新しく建てられた住居。


 そして。


 種族が混ざっている。


「……」


 公爵が高台からそれを見ている。


 隣に兄。


 少し離れてノエル。


「……報告」


 公爵が言う。


「人口」


「三倍です」


 ノエルが答える。


「……内訳は」


「人間が約五割」


 一拍。


「残りが異種族および亜人です」


「……」


 兄が目を細める。


「増えすぎだな」


「はい」


「ですが」


 一拍。


「問題は発生していません」


「……」


 それが一番おかしい。


「……どこから来た」


 公爵が問う。


「各地です」


 ノエルが答える。


「エルフ、ドワーフ、獣人、その他多数」


「……理由は」


「不明です」


 一拍。


「ですが」


「共通しています」


「……何がだ」


「セリア様に会ったことがある、もしくは噂を聞いた」


「……」


 沈黙。


「……呼んでるのか」


 兄が言う。


「いいえ」


 ノエルが首を振る。


「呼んでいません」


「……じゃあ何だ」


「集まっています」


 それだけだった。


「……」


 公爵が目を閉じる。


 そして。


「……止めるか」


 問い。


 だが。


「不要です」


 即答だった。


「理由は」


「全員、非敵対です」


 一拍。


「むしろ労働力として機能しています」


「……」


 視線が下に向く。


 畑。


 ゴブリンが耕している。


 その隣でドワーフが水路を整備している。


 少し離れて、エルフが木の手入れをしている。


 すべてが自然に連携している。


「……なあ」


 兄が言う。


「何だ」


「誰が指示してる」


 沈黙。


「……誰もしていません」


 ノエルが答える。


「自律的に動いています」


「……」


 それが一番怖い。


 その時。


「お父様」


 セリアが現れる。


 いつも通りに。


 変わらず。


「おはようございます」


「……ああ」


 公爵が短く答える。


「増えておりますわね」


 セリアが周囲を見る。


 穏やかに。


「……そうだな」


「賑やかでよろしいですわ」


 評価はそれだった。


「……」


 兄が小さく言う。


「……意図は」


「ございませんわ」


 即答だった。


「ただ」


 一拍。


「来られた方に、よろしければどうぞと申し上げただけですの」


 それだけ。


 それだけで。


 この状態。


「……」


 公爵が空を見る。


「……結果は」


「はい」


 ノエルが頷く。


「急速発展です」


「……経済は」


「活性化しています」


「……治安は」


「安定しています」


「……」


 すべてが良い方向。


 否定できない。


「……なあ」


 兄が言う。


「何だ」


「これ、もう国だな」


 沈黙。


 そして。


「……ああ」


 公爵が頷く。


「完成している」


 その時。


 遠くから声がする。


 笑い声。


 子供の声。


 異なる種族が混ざった音。


「まあ」


 セリアが微笑む。


「楽しそうですわね」


 それがすべてだった。


 計画ではない。


 戦略でもない。


 ただ。


 そうなった。


 それだけで。


 聖域領は。


 すでに一つの世界になっていた。

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