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完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 翡翠


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第50話 証明はどのようにいたしましょうか



 王都アルヴェイン、冒険者ギルド本部。


 カウンターの前にセリアが立つ。


「依頼が完了いたしましたわ」


 穏やかな声。


 受付嬢が顔を上げる。


「お帰りなさいませ」


 反射的に応じる。


「……討伐証明をお願いします」


 手続きとしての言葉。


 だが。


 空気がわずかに止まる。


「証明、ですの?」


 セリアが首を傾げる。


「はい」


「通常は討伐部位、または確認可能な証拠を――」


「……」


 カイルが横を見る。


 レオネルも黙る。


 ノエルは静かに状況を見ている。


「……」


 セリアは少し考える。


「今回は」


 一拍。


「そのようなものはございませんわ」


 正確な報告だった。


 沈黙。


 受付嬢が止まる。


 思考が止まる。


「……討伐は」


「しておりませんもの」


 あっさりと言う。


「……」


 完全に停止する。


「……なあ」


 カイルが小さく言う。


「何だ」


「言ったぞ」


「……ああ」


 レオネルが頷く。


 その時。


 入口が開く。


 音がする。


 全員の視線が向く。


 数体のゴブリンが立っていた。


「……」


 沈黙。


 完全な沈黙。


「……は?」


 受付嬢が固まる。


 武器に手が伸びる。


 だが。


 動かない。


 ゴブリンたちは武器を持っていない。


 敵意もない。


 ただ。


 歩いてくる。


 静かに。


 まっすぐに。


「まあ」


 セリアが振り返る。


「いらっしゃいましたの」


 当然のように言う。


「……来たな」


 カイルが呟く。


「はい」


 ノエルが頷く。


「予測通りです」


 ゴブリンの一体が前に出る。


 震えている。


 だが。


 逃げない。


 そして。


 頭を下げる。


 深く。


「……」


 誰も動けない。


「……これが」


 ノエルが静かに言う。


「証明です」


「……は?」


 受付嬢が聞き返す。


「敵対行動の消失」


 一拍。


「完全な非敵対化」


「……」


 理解できない。


 だが。


 目の前にある。


「……」


 ギルド長が奥から出てくる。


 状況を見る。


 一瞬で判断する。


「……確認した」


 短く言う。


「依頼は完了」


 沈黙。


「……いいのかそれで」


 カイルが聞く。


「問題ない」


 ギルド長が即答する。


「被害は消失」


「脅威は排除」


「条件は満たしている」


「……」


 誰も反論しない。


 できない。


「では」


 セリアが微笑む。


「よろしいのですね」


「ああ」


 ギルド長が頷く。


「正式に完了だ」


「ありがとうございます」


 セリアが一礼する。


 完璧な所作。


 その横で。


 ゴブリンたちは動かない。


 ただ、そこにいる。


「……なあ」


 カイルが言う。


「何だ」


「ゴブリンが証人って何だ」


「……分からん」


 レオネルが答える。


「だが」


 一拍。


「成立している」


 それが全てだった。


「……」


 受付嬢が小さく呟く。


「……討伐って何ですか……」


 誰も答えない。


 答えは変わったからだ。


 セリアが振り返る。


「ありがとうございました」


 ゴブリンたちに向かって言う。


 穏やかに。


 当然のように。


 ゴブリンたちが再び頭を下げる。


 深く。


 そして。


 静かに去っていく。


 誰も止めない。


 止める理由がない。


「……」


 ギルド内に静寂が戻る。


 だが。


 以前と同じではない。


 何かが、変わっている。


「……なあ」


 カイルが言う。


「何だ」


「もう討伐じゃないな」


「……ああ」


 レオネルが頷く。


「違うものになった」


 セリアは気にしない。


 カードを見ている。


 楽しそうに。


「次はどちらに参りましょうか」

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