表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 玉響すばる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/64

第41話 こちらの方が過ごしやすいのでしょう



 アストレア公爵邸の庭園。


 古竜セレスは、いつもの位置にいた。


 巨大な身体。


 庭の大半を占める存在。


 だが。


 その視線は、屋敷の方へ向けられている。


 セリアと、もう一人。


 人の姿をした神竜が、自然に屋敷へ入っていく。


「……」


 セレスが静かにそれを見ている。


 観察ではない。


 比較。


 評価。


「……効率が良い」


 小さく呟く。


 人の形。


 移動が容易。


 干渉が最小。


 環境との整合性が高い。


「……必要か」


 一拍。


「……不要ではない」


 結論が出る。


 セレスの輪郭が揺らぐ。


 圧が収束する。


 規模が縮む。


 密度が変わる。


 そして。


 一人の女性が、そこに立っていた。


 長い銀髪。


 静かな瞳。


 表情は薄い。


 だが。


 本質は変わらない。


「……問題ない」


 確認する。


 周囲への影響。


 過剰な圧はない。


 均衡は保たれている。


 そのまま歩き出す。


 庭から。


 屋敷へ。


 扉が開く。


 執事が視線を向ける。


 一瞬だけ、止まる。


 だが。


「……お嬢様のご関係者でいらっしゃいますね」


 即座に処理する。


 完璧だった。


「はい」


 セレスが短く答える。


 言葉は簡潔。


 だが成立している。


 屋敷の中。


 セリアが振り返る。


「まあ」


 少しだけ目を丸くする。


「セレス」


「……適応した」


 短い説明。


「こちらの方がよろしいと判断した」


「まあ」


 セリアは嬉しそうに微笑む。


「とても素敵ですわ」


 それだけだった。


 評価は十分。


 神竜の少女が静かに視線を向ける。


「……選択として合理的」


 一言。


 それで理解は共有される。


「……」


 レオネルたちが固まっている。


 思考が追いつかない。


「……増えたな」


 カイルが小さく言う。


「はい」


 ノエルが即答する。


「完全に」


「……」


 リリィが遠い目をする。


「……人が増えたはずなのに」


 一拍。


「安心感が減ってます……」


「……正常だ」


 カイルが答える。


「むしろ正しい反応だ」


 セリアは気にしない。


「では」


 穏やかに言う。


「お茶にいたしましょうか」


 完全に日常の提案。


 神竜と古竜が人の姿で並んでいる状況で。


「……」


 誰も否定しない。


 できない。


 テーブルが用意される。


 椅子が並ぶ。


 自然に座る。


 セリア。


 神竜。


 セレス。


 並ぶ。


 成立している。


「本日は少し風が強いですわね」


 セリアが言う。


「……上層の揺らぎ」


 神竜が答える。


「影響は軽微」


「……問題ない」


 セレスが続ける。


 会話が成立している。


 完全に。


「……なあ」


 カイルが小さく言う。


「何だ」


 レオネルが答える。


「これ、どこまで増える」


 沈黙。


「……分からん」


 正直な答え。


「……だが」


 一拍。


「止まらない」


 それだけは確定している。


 セリアが微笑む。


 何も変わらず。


 いつも通りに。


 その中心で。


 世界の基準が、静かに書き換わり続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ