表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 玉響すばる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/64

第37話 先に終わっておりましたのね



 アストレア公爵邸の庭園。


 朝の空気は澄んでいる。


 セリアはゆっくりと歩いていた。


「今日は少し外に参りましょうか」


 穏やかな声。


「はいっ」


 リリィが元気よく答える。


「……外か」


 レオネルが小さく呟く。


 その時だった。


 遠くから、慌ただしい足音が近づいてくる。


「た、大変です!」


 使用人が駆け込んでくる。


「街道で衝突が発生しかけております!」


「……またか」


 カイルが眉をひそめる。


「規模は」


 ノエルが冷静に問う。


「小規模ですが、このままでは拡大する恐れが」


「……行くか」


 レオネルが言う。


「はい」


 セリアが頷く。


 自然な流れだった。


 だが。


「……?」


 ノエルが違和感に気づく。


「……気配が」


「何だ」


 カイルが反応する。


「すでに、収まっています」


 沈黙。


「……は?」


「衝突の気配が、消えています」


「……そんなはずはない」


 レオネルが言う。


 報告はつい今だ。


 時間的にあり得ない。


「確認します」


 ノエルが目を閉じる。


 集中する。


 そして。


「……事実です」


「完全に沈静化しています」


「……」


 全員が黙る。


 あり得ない。


 だが。


 起きている。


「……どういうことだ」


 カイルが低く言う。


 その時。


 セレスがゆっくりと顔を上げる。


「……対応した」


 低い声。


 それだけ。


「……」


 全員の思考が止まる。


「……対応?」


 レオネルが聞き返す。


「衝突要因を調整」


「均した」


「……」


 言葉が続かない。


「……いつだ」


「先ほど」


 あまりにも短い答え。


「……」


 リリィが遠くを見る。


「……えっと」


 一拍。


「今、私たち行こうとしてましたよね?」


「……ああ」


「……終わってるんですけど」


「……そうだな」


 カイルが目を押さえる。


「……代行か」


 レオネルが呟く。


「はい」


 ノエルが即答する。


「完全に」


「……そんなことが」


「可能になっています」


 事実として。


「……理由は」


 カイルが聞く。


「単純だ」


 レオネルが答える。


「見ていた」


 一拍。


「学習した」


 さらに一拍。


「再現した」


 それだけ。


「……」


 沈黙が落ちる。


 あまりにもシンプルすぎる。


 だが、それ以外に説明がない。


 セリアが首を傾げる。


「そうでしたの?」


 本気で初耳の反応だった。


「はい」


 ノエルが答える。


「すでに解決しています」


「まあ」


 セリアは小さく頷く。


「それは良かったですわ」


 それだけだった。


 驚きも、疑問もない。


「……いいのか、それで」


 レオネルが言う。


「はい?」


「お前がやるべきことだったんじゃないのか」


「そうかもしれませんわね」


 一拍。


「でも」


 微笑む。


「終わっているのでしたら、問題ありませんわ」


 完全に合理的だった。


 誰も否定できない。


「……」


 カイルが遠くを見る。


「……増えてるな」


「何がだ」


「“出来るやつ”が」


「……ああ」


 レオネルが頷く。


「しかも」


 一拍。


「同じ基準で動く」


 それが最も危険だった。


「……」


 ノエルが静かに言う。


「拡張しています」


「影響が」


 セリア一人ではない。


 セレスも含めて。


 環境が広がる。


「……なあ」


 リリィが小さく言う。


「何だ」


「これって……」


 一拍。


「セリア様が増えてるみたいじゃないですか」


 沈黙。


 完全な沈黙。


「……」


 誰も否定しない。


 できない。


「セレス」


 セリアが自然に呼ぶ。


「はい」


「ありがとうございます」


「……問題ない」


 それで終わる。


 あまりにも自然に。


 あまりにも当然のように。


「……なあ」


 カイルが小さく言う。


「何だ」


「もう止まらないな」


「……ああ」


 レオネルが頷く。


「完全に」


 セリアは何も知らない。


 ただ、助けたいと思っただけ。


 ただ、それをしただけ。


 それだけで。


 世界の方が、先に動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ