表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 翡翠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/64

第24話 少し整えただけですのに、どうして驚かれるのかしら



 王都アルヴェイン――中央市場。


 昼下がり。


 先ほどまでと同じ、穏やかな時間。


「では、そろそろ戻りましょうか」


 セリアが言った、そのときだった。


    ◇


「きゃあっ!」


 甲高い悲鳴が響く。


 人々の流れが乱れる。


「馬が暴れたぞ!」


「離れろ!」


 通りの中央。


 一頭の馬が、制御を失っていた。


 目は血走り、呼吸は荒い。


 明らかに異常状態。


 手綱を持っていた商人が弾き飛ばされる。


「危ない!」


 子供が、進路上にいた。


    ◇


「――」


 誰も、間に合わない。


 そう判断した瞬間。


「まあ」


 セリアが一歩、前に出た。


    ◇


 速い、ではない。


 自然だった。


 ただ、そこにいる。


 馬の前に。


「大丈夫ですわ」


 静かな声。


 手を伸ばす。


 触れる。


    ◇


 それだけで。


 暴れていた馬が、止まった。


 呼吸が整う。


 目の濁りが消える。


 筋肉の緊張が抜ける。


「……え?」


 周囲が、固まる。


    ◇


「どうかなさいました?」


 セリアは首を傾げる。


「少し驚いていらっしゃるようですが」


「い、いや……」


 商人が言葉を失う。


「今の……何を……」


    ◇


「少し整えただけですわ」


 いつもの答え。


 変わらない。


「整えた……?」


「はい」


 セリアは頷く。


「驚いておりましたので」


    ◇


「……」


 誰も理解できない。


 だが。


 結果だけは明確だった。


 危機は、消えた。


    ◇


「お怪我はございませんか?」


 セリアが子供に声をかける。


「う、うん……」


「それは良かったですわ」


 優しく微笑む。


 それだけ。


    ◇


「……今のは」


 レオネルが小さく言う。


「魔術ではないな」


「ああ」


 カイルが頷く。


「干渉でもない」


「……では何だ」


    ◇


「分かりませんわ」


 セリアが答える。


「ただ、そうした方がよろしいと思いましたので」


    ◇


「……直感、か」


 レオネルが呟く。


「違うな」


 カイルが首を振る。


「結果が先にある」


    ◇


「まあ」


 セリアは楽しそうに言う。


「難しいことは分かりませんわ」


「……だろうな」


 レオネルは小さく息を吐く。


    ◇


 一方。


 その様子を観測していた者たち。


「……対象、非戦闘行動」


「影響確認」


「局所的安定化」


    ◇


「……やはり」


 低い声。


「意図していない」


「だが」


「結果は同じ」


    ◇


「……危険だな」


「いや」


 別の声が否定する。


「逆だ」


「……何?」


「これが最も安全な状態だ」


    ◇


「……どういう意味だ」


「本人が理解していない」


「だからこそ」


 一拍置く。


「暴走しない」


    ◇


「……なるほど」


 小さく頷く。


 理解する。


 これは、制御ではない。


 均衡だ。


    ◇


 一方。


「では、本当に戻りましょうか」


 セリアは何事もなかったように言う。


「はいっ」


 リリィが元気よく答える。


「……終わりか」


 カイルが呟く。


「何も起きておりませんもの」


 セリアは微笑む。


    ◇


 その一言で。


 すべてが、元に戻る。


 人々は動き出す。


 声が戻る。


 市場は再び、日常へ。


    ◇


 ――何も起きていない。


 だが。


 確かに、何かが起きていた。


    ◇


「……やはり」


 レオネルは小さく呟く。


「目を離せないな」


 その理由を。


 もう、説明する必要はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ