第22話 名は届き、意味はそれぞれに解釈される
王都アルヴェイン――翌朝。
新聞の一面は、すべて同じ見出しだった。
――王国、“星剣卿”を叙す。
それだけ。
説明は、ほとんどない。
だが。
それで十分だった。
◇
「……来たか」
王城内、執務室。
宰相が紙面を静かに畳む。
「国内の反応は」
「二分です」
側近が答える。
「理解できないが受け入れる層」
「理解できないから拒絶する層」
「……想定通りだな」
宰相は短く頷く。
「どちらも正しい」
◇
「騎士団は」
「安堵しています」
「指揮権が無いことが明確になったため」
「貴族は」
「様子見です」
「敵に回さないことを優先しています」
「……当然だ」
それが合理的な判断だった。
◇
一方――
他国、ルーヴェン王国。
「……星剣卿」
使節が報告書を机に置く。
「王国は、名付けたか」
「はい」
「だが、制御はしていない」
「……賢明だな」
短い評価。
「我々は」
一拍置く。
「同じことはしない」
「では?」
「距離を取る」
「だが」
視線を上げる。
「関係は切らない」
◇
「接触は」
「限定的に」
「観測を継続」
「刺激は禁止」
簡潔な指示。
だが、それは。
最適解だった。
◇
一方――
さらに別の国。
「……王国が動いたか」
低い声。
影の中。
「“星剣卿”」
名を確認する。
「愚策ではない」
「だが」
一拍置く。
「遅い」
◇
「我々は」
別の声が続く。
「先に動く」
「接触か」
「違う」
首を振る。
「配置だ」
◇
「……観測点を増やす」
「干渉はしない」
「だが」
「見失うな」
それが、唯一の命令だった。
◇
一方――
王都地下。
例の組織。
「……星剣卿、か」
カイルの上位にあたる男が呟く。
「名前を与えたな」
「はい」
報告者が頷く。
「王国所属とすることで、関係性を固定」
「……なるほど」
理解は早い。
「だが」
一拍置く。
「本質は変わらない」
「はい」
即答。
「依然として、分類不能」
◇
「カイルは」
「同行中です」
「……どう動く」
「現時点では」
「敵対意思なし」
「むしろ」
一瞬だけ迷う。
「関係を構築中」
◇
「……面白い」
小さく笑う。
「ならば」
決定する。
「任せる」
「干渉するな」
「観測のみ」
◇
「理解できる者に任せる」
それが最適だった。
◇
一方――
「今日はどちらへ向かいましょう?」
セリアはいつも通りだった。
王城を出て。
街を歩きながら。
「……変わらないな」
レオネルが小さく言う。
「何がですの?」
「お前だ」
「そうですの?」
首を傾げる。
本気で分かっていない。
◇
「星剣卿、だぞ」
「はい」
「何か思うところはないのか」
「特にございませんわ」
即答だった。
「名前が増えただけですもの」
◇
「……そうか」
レオネルは小さく息を吐く。
分かっていた。
だが、確認したかった。
◇
「では」
セリアは微笑む。
「いつも通り参りましょう」
その一言で。
すべてが元に戻る。
◇
だが。
世界は、変わっていた。
王国。
他国。
影の組織。
すべてが。
同じ結論に辿り着いている。
◇
――触れるな。
――だが、見失うな。
◇
「楽しみですわね」
セリアは穏やかに言う。
「次はどのような方とお会いできるのかしら」
その言葉の意味を。
最も正確に理解しているのは。
もはや、彼女以外だった。




