表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧淑女の公爵令嬢、普通に卒業しただけなのに“あの令嬢”扱いされ、気づけば“星剣”と呼ばれていました  作者: 翡翠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/64

第20話 来訪は静かに、評価はすでに始まっておりますわ


 王都アルヴェイン――南門。


 白壁の上に旗がはためき、行き交う人々の声が絶えない。


 だが、その一角だけは妙に静かだった。


「……来た」


 門上の見張りが低く呟く。


 視線の先。


 白い外套の令嬢と、その一行。


「星剣」


 誰かがそう呼ぶ。


 今や、隠語ではない。


 共通認識だ。


    ◇


「ごきげんよう」


 セリアはいつも通りに微笑む。


 門番が背筋を伸ばす。


「お帰りなさいませ、セリア様」


「ただいま戻りました」


 形式通りのやり取り。


 だが、視線は違う。


 観察。


 評価。


 そして、わずかな畏怖。


「王城より、殿下へ伝令が来ております」


 門番がレオネルへ告げる。


「承知した」


 短く答える。


「……やはりか」


 小さく呟く。


    ◇


 王都の街路。


 人々の流れが、自然に割れる。


 誰も命じていない。


 ただ、そうなる。


「静かですわね」


 セリアが言う。


「そうですね……」


 リリィは曖昧に頷く。


 理由は分かっている。


 だが、説明は難しい。


「見られてるな」


 カイルが小さく言う。


「はい」


 ノエルも同意する。


「明確に」


 視線は一方向ではない。


 四方。


 上。


 影。


 複数の層から観測されている。


    ◇


「まあ」


 セリアは穏やかに周囲を見渡す。


「お忙しそうですわね」


 その感想が、すでにずれている。


    ◇


「セリア」


 レオネルが足を止める。


「一度、城へ来てほしい」


「王城ですの?」


「ああ」


 短く頷く。


「話がある」


「まあ」


 セリアは少し考える。


「お茶はございますかしら?」


「……用意させよう」


「でしたら、参りますわ」


 あっさりと決まる。


    ◇


 その様子を。


 遠くから見ている者がいた。


「……確認」


 低い声。


 視線は鋭い。


 だが、表情は動かない。


「対象、“星剣”」


 隣に立つ男が小さく頷く。


「王都内、接触開始」


「王子同行」


「……予定通りか」


「いや」


 首を振る。


「予測を超えている」


 一拍置く。


「明らかに」


    ◇


「……評価は」


「現時点で確定」


 短く答える。


「戦力として扱うのは不適切」


「では」


「現象」


 その一言で、すべてが整理される。


    ◇


「……なるほど」


 小さく息を吐く。


「扱えないわけだ」


「はい」


 迷いなく答える。


「だからこそ」


 一拍置く。


「関係を作る」


    ◇


「接触は」


「控えめに」


「刺激しない」


「だが」


 視線を細める。


「観る」


    ◇


 その場を離れる。


 気配を消す。


 完全に。


 だが。


「?」


 セリアが、ふと振り返った。


「どうかなさいました?」


 リリィが聞く。


「いえ」


 セリアは微笑む。


「どなたかいらっしゃる気がしたのですが」


 気配はない。


 完全に消えている。


 普通なら、気づかない。


「……気のせいかもしれませんわね」


 そう言って、前を向く。


    ◇


 だが。


 見ていた側は、動きを止めていた。


「……今のは」


 低い声。


「気づいたのか」


「いえ」


 もう一人が首を振る。


「気づいてはいない」


 一拍置く。


「ただ、見えている」


    ◇


「……厄介だな」


 その評価は、完全に一致していた。


    ◇


 一方。


「王城は久しぶりですわね」


 セリアは楽しそうに言う。


「変わっていないとよろしいのですが」


 何も知らずに。


 自分が。


 王国だけでなく。


 他国からも観測され始めていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ