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魔眷のミナト  作者: 少佐
2/10

人助け

 村を出て、どれくらい歩いただろうか。


 慣れない旅路に、足は重い。


 道の先で、大きな影が揺れた。


 近づくと、それは走竜だった。

 その傍らには、一人の男。


ミナト「どうしたんですか?」


「いやぁ、走竜が足を痛めちまってな」


 男は気さくに笑う。

 どこか人当たりのいい、商人風の男だった。


 俺はしゃがみ込み、走竜の脚を確認する。


「棘が刺さってますね」


「抜けるかい?」


「やってみます」


 慎重に棘を引き抜く。

 走竜は一度だけ大きく息を吐き、やがて落ち着いた。


「助かったよ。あんた、いい腕してるな」


「いえ、そんな……」


「俺の名はヴェルド。この先に小さな村があるんだが、よかったら一緒に来るか?」


 少し考えて、俺は頷いた。


 荷台に揺られながら進む道は、歩くよりもずっと楽だった。


「俺は商人をやっててな。今はこの辺りを拠点に交易してる。香辛料やら小麦やら……意外と儲かるんだぜ」


 どこか誇らしげに、ヴェルドは笑う。


「そうなんですね。俺は、ここから東にある村から出てきたばかりなんです」


「東の村……?」


 ヴェルドは一瞬だけ考えるように目を細め――


「ああ、もしかしてエルド村か?」


「そうです!」


 思わず声が弾む。


「あそこは有名だからな。S級冒険者を出した村だろ?」


「はい。すごい人なんです」


 自然と、あの人たちの顔が浮かぶ。


 強くて、まっすぐで――誰よりも、憧れている存在。


「へぇ……」


 ヴェルドは小さく頷いた。


 その後も、道中では父さんたちの話や、ヴェルドの交易の話で盛り上がった。


 町まで送ってもらい、ヴェルドさんとは別れた。


 ◇



 町に着くと、妙な空気が漂っていた。


 人々がざわつき、どこか焦っている。


村人A「穀物がまたやられた……!」


村人B「このままじゃ冬が越せねぇぞ……」


 不穏な言葉が飛び交う。


俺は近くに駆け寄った


村C「君は旅の人かい?」


「何かあったんですか?」


「魔獣に穀物庫を荒らされたんだよ。どうにも困っていてね。」


 そのとき。


村D「リリィがいないの!」


 悲鳴のような声が響いた。


 振り向くと、一人の女性が取り乱している。


「うちの子が……森に……」


 胸がざわつく。


「森……!」


 考えるより先に、体が動いていた。


「俺が行ってきます!」


 住人には止められたが俺は振り返らなかった。


 ◇


 森の奥。


 静寂の中に、不気味な気配が漂う。


 そのとき――


「た、助けて……!」


 声だ。


 駆け出す。


 開けた場所で見たのは、腰を抜かした子供と――


「グォォォ……」


 巨大なイノシシ型の魔獣だった。


 だが、その目はどこか異様だった。


 濁った光。


「離れろ!!」


 剣を抜き、間に割って入る。


 魔獣が突進してくる。


「くっ……!」


 速い。重い。


 ギリギリでかわし、態勢を立て直す。


 


 考える暇もなく、再び突進。


 剣で受け止める。


「うっ……!!」


 腕が軋む。


 押し負ける。


 それでも――


(守る……!)


 力を振り絞り、弾き返す。


 一瞬の隙。


 踏み込む。


「はぁぁぁっ!!」


 全力の一撃。


 首元へ、深く叩き込む。


 魔獣は咆哮し、暴れ、そして――倒れた。




村子供A「ありがとう!お兄ちゃん!私はリリィっていうの!」


 肩車で森の出口へと向かう。


 「無事でよかったけど...どうして森に入ったんだい?」


リリィ「お母さんが風邪で...薬草を採りに行ったの。ごめんなさい。」




 ◇


 町に戻ると、人々は歓声を上げた。


村人達「おぉ!やったのか?!」


 子供は母親に抱きつき、泣きじゃくる。


 その光景を見て、胸が少しだけ軽くなる。


リリィ「ミナトお兄ちゃんが助けてくれたの!」



 ――これで村も安心だろう。


 俺は、そう思った。


 その日の夜――


 村は久しぶりの安堵に包まれていた。


 広場には灯りがともされ、大人たちは酒を酌み交わし、子どもたちははしゃぎ回っている。


「今日はお前のおかげだ!」


「よくやってくれたな!」


 次々に声をかけられ、俺は少し照れながら頭をかいた。


 そして目の前に並んだ料理を見て、俺は思わず目を見張った。


 こんがりと焼かれた大きな肉の塊。


 香草と一緒に煮込まれたスープ。


 川で獲れたばかりの魚の丸焼き。


 色とりどりの野菜料理に、果実をふんだんに使った甘いデザートまで用意されている。


 こうして、村のみんなに歓迎されながら、騒がしい宴が開かれた。


「今日は特別だ!全部出し切ったぞ!」


 村の男が豪快に笑う。


「お前のおかげで、みんな助かったんだ!」


 次々に酒を勧められ、肩を叩かれる。


 こうして、モルキア村のみんなに歓迎されながら、盛大な宴が開かれた。







 ◇


 翌朝。


 俺は町を後にすることにした。


「世話になりました」


「気をつけてな」「お兄ちゃんまた来てね!!


 人々に見送られ、歩き出す。


 振り返ることは、しなかった。







 ――知らなかったからだ。


 あの商人ヴェルドが。


 従属の魔法で魔獣を縛り。


 穀物を奪わせていたことを。


 あのイノシシも、その一つだったことを。


 そして。


 この町が、やがて――

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