第31話 臨時世界会議の開催
幕間その1です
たくさん名前がでてきますが、覚える必要はありません笑
アザールたちがブルサ王国を発って間もない頃。
神聖レミシェス帝国の一室にて、七大国の代表が集まっていた。
「シュヴァイツ王よ、事前に内容の通告もなく我々を集めるのはいかがなものか」
ブルサ王が遅れるということで、正式な会議はまだ始まっていなかった。
そのため、雑談というには棘のあるやりとりが繰り広げられていた。
ミラリア連合代表の【サヴェリオ・アストラリ】は、シュヴァイツ王に物怖じする様子もなく、公然と今回の会議開催を咎めた。
商人らしく身なりは整えているが、他国の王に比べて浮いた存在であることは否めない。
サヴェリオの後ろにはミラリア連合の議長を務める正四位枢機卿【ビアンカ・ヴィスコンティ】が控えているが、彼女は何も言わず、微動だにしない。
「世界を揺るがしかねん情報故な。すまないとは思うが仕方がないことだ」
シュヴァイツ王は淡白に答えるだけで、譲歩の姿勢は微塵もない。
「言ってやるな、サヴェリオ殿。シュヴァイツ王のことだ、どこぞの阿呆のようなことはせんだろう」
アラティーリャの国家元首代理にして正一位枢機卿【サルバドール・ホセフィ】がどこかに向けた嫌味を含め、そう窘める。
その地位に似つかわしくないほど粗野な物言いだが、そのオーラとも言える聖職者特有の雰囲気に圧倒されない者は少ないだろう。
フンとつまらなそうに鼻を鳴らしたのは、レクサゴンの王【エマニュエル・マグナス】。
通称【太陽王】。
この世界で“カリスマ”と言えば、誰もが最初に名を上げる人物だ。
「ブルサの王はどうして時間も守れん。奴は時計作りが趣味ではなかったのか」
太陽王はそのまま、遅刻しているブルサ王への批判を口にした。
枢機卿のトップに対して直接的に歯向かうことは避けたのだろう。
「エマニュエル」
なおもブルサ王へ批判を重ねんと口を開いた太陽王だったが、その名を呼ばれただけでそれ以上を口にすることはなかった。
太陽王を制したのは当然、神聖レミシェス帝国の支配者、法王にして皇帝【レオニダス・ヴァレンティヌス】。
人族でありながら、神話の系譜に連なる者ですら畏怖の念を覚える存在。
一度は口を噤んだ太陽王だったが、それを許さない者もいた。
法王の側にいつも控える正二位枢機卿にして神聖レミシェス帝国の宰相の【パブロ・ピレラ】は、丁寧な口調でありながら、圧を感じる疑問を太陽王へ投げた。
「エマニュエル殿、アルマンは“何をしている”のですか?」
神聖レミシェス帝国の主要な従属国には、高位の枢機卿が派遣されている。
レクサゴンには正三位枢機卿【アルマン・ド・ヴァロワ】が派遣されており、世界会議には各国の枢機卿も王や代表のサポートとして参加する決まりであるが、そのアルマンの姿はこの会場にない。
パブロは、言葉はアルマンを責めているようで、態度は太陽王を問い質していた。
「反乱軍の動きが活発化しておってな。彼の申し出で残してきたまでよ」
何でもないように答える太陽王だが、彼をみるパブロの視線は自然と厳しくなった。
「おう、悪ぃな。まだ会議は始まっちゃいねぇよな?」
会場の緊張を一瞬で壊したのは、遅れてきたブルサ王。
張り詰めた空気を気にすることなく「ここでいいか?」とシュヴァイツ王に聞きながら、その隣の椅子に腰かけた。
「レオニダス、さっさと始めよ」
その瞬間、目を瞑って黙っていた【オルドソド王】が法王に開催を促した。
驚くほどに美しい顔をした男であり、ブルサ王と同じく耳の長い特徴を持つ男。
ブルサ王は露骨に舌打ちをして不機嫌を表した。
法王への傲慢な言葉遣いにビアンカは片眉を上げるが、誰も咎めることはない。
「それでは、全員が揃ったところで……」
法王はそこで一度言葉を切り、仰々しく両手を広げた。
「臨時の“世界会議”を開催する」
それは、世界の今後を左右する引き金であった。
次回、第32話「荒れる会議」




