エピローグ:相棒の誓い
どれくらい走っただろうか。
俺たちは死の森を抜け、岩だらけの荒野で力尽きたように倒れ込んだ。
東の空が白み始め、冷たい朝の光が俺たちのボロボロの体を照らし出している。
俺は仰向けのまま、滲む視界で朝焼けの空を見上げていた。
じいさんを置いてきた。
父さんたちの待つ村にも、まだ帰れない。
今の俺たちが村に戻れば、間違いなく王都の追手を引き込み、今度こそ村を火の海にしてしまうからだ。
自分の無力さが、悔しくて、悔しくて、涙が止まらなかった。
「ルグ……」
アイシャがそっと近づき、俺の泥だらけの頬を拭ってくれた。
「泣かないで。……ルグが私を助けてくれたから、今度は私が、ルグを助ける番」
彼女は白銀の髪を風に揺らしながら、俺の手を強く握った。
「私がルグの『剣』になる。……だから、ルグのその『目』で、私たちの行くべき道を教えて」
その言葉に、俺はハッとした。
そうだ。もう、あの頃の無力な俺たちじゃない。
呪縛から解放された『剣聖』の力を持つアイシャと、理を射抜く『黄金の瞳』を持つ俺。
互いの弱点を補い合う、これ以上ない最強の「相棒」がここにいる。
「……ああ。そうだな」
俺はアイシャの手を握り返し、ゆっくりと立ち上がった。
折れた肋骨の痛みも、今はもう気にならなかった。
「まずは、強くなる。王都の連中が束になっても敵わないくらいに」
俺は朝焼けに染まる荒野の向こう、見えない王都の方角を睨みつけた。
「そして絶対に……あの狂った『千年計画』ごと王都をぶっ潰して、胸を張って父さんたちのいる村に帰るんだ」
アイシャは強く頷いた。
誰にも期待されず、どこにも居場所がなかった二人の子供。
その小さな魂が、真の『相棒』として結ばれ、世界に対する壮絶な反逆の旅へと足を踏み出した瞬間だった。
『OUTSIDER 〜反逆の逃亡者と、白銀の剣姫〜』第2巻・完




