夏を謳歌するために
夏、といえばなんだろう。かき氷、わたあめ、りんご飴、焼きそば。本当にたくさんある。
「ゆ、う、ねちゃーん! 一緒に夏祭り行かない?」
ふと、そういえば、と思い出す。今まで興味がなくて夏祭りがある、ということをうっすら知っていたくらいだ。
「夏祭りか。別にいいけど、その前に課題だけ終わらそうね」
そう言うと、莉羽は明らかに顔をしかめ、「悠音は真面目だなぁ」なんてぶつぶつと言いながら、そそくさと勉強を始める。
文句を言いながらも、しっかりとすぐに行動するところは、莉羽のすごいところだろう⋯⋯本人に直接言うことはなかったが。
「あーも、ほんとこの単元嫌いだわー。ガチ誰が好きなのこの単元」
「まぁまぁ。私はそこの単元好きだし」
「???」
莉羽は信じられない、という顔をしたかと思えば、ノートの教科書を差し出してきた。
⋯⋯解けということかな、と一瞬思いもしたが、シャーペンを持ち上げた手を寸前で留めた。
「悠音ちゃん。どうしたの?」
「いや、莉羽の課題だから。私がやるのはだめかなって」
「くっ。悠音ちゃんめ。しぶとい」
どうやら、莉羽はどうにか私にやってもらおうという魂胆だったらしい。勿論、私は幾ら好きな単元とはいえ、進んで勉強をするようなものではない。
「でも、言い出したのは私だから、ヒント渡すよ」
「え、がち?! 悠音ちゃん神ぃ」
恒例のオーバーな反応に加え、前のめりになる莉羽を横目に、単元の理屈をまとめた紙を渡す。私が以前作ったものだ。
「おー、すごいね! こんなの作るんだ」
「そうだよ。莉羽みたいな子と勉強するときのために、ね」
悪戯っぽく笑ってみせると、莉羽は可笑しそうに笑った。
「悠音ちゃんって、案外いじわるかも?」
「そんなわけないよ」
そう。そんなわけない。私は、意地悪じゃなくて、性悪なだけ。
◆◆◆
「おわったぁ」
莉羽がそう言ったときには、とっくに日が暮れ、藍色の空に銀色の星が散りばめられていた。
「おつかれさま。これで夏祭り行けるね!」
「そうだね。よかったぁ! 何食べよっかな。やっぱりんご飴? でも夏祭りと言ったら」
「ちょっとまだ気が早いよ。でも確かに夏祭りは楽しみだね」
私は、莉羽の発言を遮るように重ねていう。初めての試みだったが、案外違和感はなかった。
「確かに気が早いけどさー、楽しみじゃん?
楽しいこと考えてたほうが人生楽しいって」
たぶん、ノリとかで言ったのだろう。でも、その言葉は、私の固結びを緩めてくれる。
私は、夏祭りも楽しみだと感じていると思うが、莉羽との日々を考えるだけで幸せだ。
本人はそこまで考えていないのだろう、能天気だが。
「莉羽。たまにはいいこと言うね」
「たまにとはなんだたまにとは!!」
莉羽はわざとらしく声を張り、見事に演技してみせる。雑談に花を咲かせた今日ももう終わる。
カーテンの隙間からほのかに入る月光が、眩しいほどに私達を照らす。
何故だろうか。毎日がこんな感じなのに、夜のこの、喉に水を張り巡らせたような気分は。
話している最中、ふと窓の外に目をやる。なんとなく。なんとなくだけど、月が雲に覆われていっている気がした。
◆◆◆
悠音ちゃんはいい子だ。だからこそ、こんな私に付き合わせていいのかな、なんて思う。今さらだけど。
そんなこんなで1日が終わり、ふざけた会話をし合う。夜の鳥の音が、妙にしみる。
ふと見た窓の外の月は、それとなく私に安心感を与えた。
文字数がまた減ってしまった……!
投稿遅れました。本当にすみません!!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ぜひ次話も読んでください!




