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欠落女子と高嶺の花  作者: 古宮ふえ
第二章 私がそこに在る時間
9/12

夏を謳歌するために

  夏、といえばなんだろう。かき氷、わたあめ、りんご飴、焼きそば。本当にたくさんある。


「ゆ、う、ねちゃーん! 一緒に夏祭り行かない?」


 ふと、そういえば、と思い出す。今まで興味がなくて夏祭りがある、ということをうっすら知っていたくらいだ。


「夏祭りか。別にいいけど、その前に課題だけ終わらそうね」


 そう言うと、莉羽は明らかに顔をしかめ、「悠音は真面目だなぁ」なんてぶつぶつと言いながら、そそくさと勉強を始める。

 文句を言いながらも、しっかりとすぐに行動するところは、莉羽のすごいところだろう⋯⋯本人に直接言うことはなかったが。


「あーも、ほんとこの単元嫌いだわー。ガチ誰が好きなのこの単元」

「まぁまぁ。私はそこの単元好きだし」

「???」


 莉羽は信じられない、という顔をしたかと思えば、ノートの教科書を差し出してきた。

⋯⋯解けということかな、と一瞬思いもしたが、シャーペンを持ち上げた手を寸前で留めた。


「悠音ちゃん。どうしたの?」

「いや、莉羽の課題だから。私がやるのはだめかなって」

「くっ。悠音ちゃんめ。しぶとい」


 どうやら、莉羽はどうにか私にやってもらおうという魂胆だったらしい。勿論、私は幾ら好きな単元とはいえ、進んで勉強をするようなものではない。

 

「でも、言い出したのは私だから、ヒント渡すよ」

「え、がち?! 悠音ちゃん神ぃ」


 恒例のオーバーな反応に加え、前のめりになる莉羽を横目に、単元の理屈をまとめた紙を渡す。私が以前作ったものだ。


「おー、すごいね! こんなの作るんだ」

「そうだよ。莉羽みたいな子と勉強するときのために、ね」


 悪戯っぽく笑ってみせると、莉羽は可笑しそうに笑った。


「悠音ちゃんって、案外いじわるかも?」

「そんなわけないよ」


 そう。そんなわけない。私は、意地悪じゃなくて、性悪なだけ。

 

◆◆◆


「おわったぁ」


 莉羽がそう言ったときには、とっくに日が暮れ、藍色の空に銀色の星が散りばめられていた。


「おつかれさま。これで夏祭り行けるね!」

「そうだね。よかったぁ! 何食べよっかな。やっぱりんご飴? でも夏祭りと言ったら」

「ちょっとまだ気が早いよ。でも確かに夏祭りは楽しみだね」


 私は、莉羽の発言を遮るように重ねていう。初めての試みだったが、案外違和感はなかった。


「確かに気が早いけどさー、楽しみじゃん?

楽しいこと考えてたほうが人生楽しいって」


 たぶん、ノリとかで言ったのだろう。でも、その言葉は、私の固結びを緩めてくれる。

 私は、夏祭りも楽しみだと感じていると思うが、莉羽との日々を考えるだけで幸せだ。

本人はそこまで考えていないのだろう、能天気だが。


「莉羽。たまにはいいこと言うね」

「たまにとはなんだたまにとは!!」


 莉羽はわざとらしく声を張り、見事に演技してみせる。雑談に花を咲かせた今日ももう終わる。

 カーテンの隙間からほのかに入る月光が、眩しいほどに私達を照らす。

 何故だろうか。毎日がこんな感じなのに、夜のこの、喉に水を張り巡らせたような気分は。


 話している最中、ふと窓の外に目をやる。なんとなく。なんとなくだけど、月が雲に覆われていっている気がした。


◆◆◆


 悠音ちゃんはいい子だ。だからこそ、こんな私に付き合わせていいのかな、なんて思う。今さらだけど。


 そんなこんなで1日が終わり、ふざけた会話をし合う。夜の鳥の音が、妙にしみる。


 ふと見た窓の外の月は、それとなく私に安心感を与えた。

文字数がまた減ってしまった……!

投稿遅れました。本当にすみません!!


最後まで読んでいただきありがとうございます!

ぜひ次話も読んでください!

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