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欠落女子と高嶺の花  作者: 古宮ふえ
第二章 私がそこに在る時間
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製菓

 蒸し暑い中、陽気にさらされるのはどんな気分なのだろうか。あまりに縁のない世界だったが、こればかりは仕方ない。

 やはり、友達、というものができると、その世界を避けることは不可能なのだ。


「ゆーねちゃん!お菓子作ったから食べてみて?」


 私、常盤莉羽は悠音ちゃんと一緒に生活している。

 色々あって居座らせてもらっているのだが、流石に至れり尽くせりで申し訳ないので、お金を出してクッキーとケーキを作ってみた。


「? もしや、さっきからお菓子作ってたの? 莉羽ってお菓子作るんだ!」

「意外だった?」


 あえて、不安げな声音で聞いてみる。

 悠音ちゃんは、一瞬考える素振りを見せると、「うーん、作る瞬間があるのかなって思って」と返した。

 

「あー、確かに学校以外ではあんまないな。悠音ちゃんさっすがっ!!」

「ふふふ。莉羽って面白いこと言うね」


 何が可笑しいのか、笑いながら言う悠音ちゃんはとても幸せそうだった。


 その姿を見ていると、甘いパフェをたくさん食べた時のような気分になった。


「あ、クッキー盛り付けできたから食べてみて!」

「ありがとう」


 悠音ちゃんは、細くて長くて綺麗な指でクッキーを摘むと、ぱくっと口の中へ入り込んだ。


「んぅ! 美味しい!! 莉羽本当に学校以外でお菓子作ったことないの? すごく美味しいんだけどっ!」


 悠音ちゃんが、自身の頬に手を添え、顔を綻ばせながら言うものだから、本当にそうなんだとわかってしまった。


「そう言ってくれて嬉しい!!  バターをハードミキサーで柔らかくしたからかな? いつもと違う方法でやってみたんだよね!」

「へぇ。いつもの味は知らないけど、このクッキーは口どけなめらかでおいしいよ!! 朝から幸せ〜」

「そっか。よかった」


 私は、ケーキを焼いている間に、洗い物を済ませると、残りの時間で少し自作のクッキーを食べる。


「っ! 確かに、悠音ちゃんが言うのも納得の口溶けのよさだね!! 粉っぽくないし。今度からこの作り方で作ろうかな」

「莉羽は製菓好きなんだね」

「家じゃあんまりできないけどね」


 悠音ちゃんは、私が少し悲しそうな表情をしてそう言うと、「大丈夫、夏休み終わってもいつでも家来ていいから」なんて言ってくれた。

 ⋯⋯本当は、悠音ちゃんの優しさに浸け込みたくはないけど、今だけはゆるしてね。


 それから、ケーキが焼けると、悠音ちゃんはケーキまで褒めてくれた。

 「スポンジがふわふわ」とか「クリームの甘さがちょうどいい」とか。


◆◆◆


 今日は、莉羽がケーキとクッキーを焼いてくれた。冷蔵庫を確認したところ、うちのものは減っていなかったので、自腹だろう。

 今度なにか買おうと思う。

 美味しかったと正直に言うと、莉羽は明らかに嬉しそうな顔をして、喜んでくれていたように思う。

 本人は学校以外であまり作ったことがないと言っていたが、レシピを見ながらとはいえ、あの美味しさはすごいと思う。


 ほっぺが落ちそうなほど甘くて心地よいものだった。

  

 お菓子を食べながら話していると、いつの間にか夜になっていて。


 相変わらず、時の流れを感じながら、日々の速さを感じる。


「さ、莉羽。お風呂入って。お湯張ってあるから」

「ん、ありがと。保温つけっぱにしとくね」


 簡単な会話をすると、莉羽はそそくさとお風呂に入った。


 いつも通りカーテンを開けて、窓の外の景色を見る。


 いつもより曇った空に、うっすらと月光が見えた。


最後まで読んでくれてありがとうございます!ぜひ次話も読んでください!!

感想やアドバイスなども頂けると嬉しいです!

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