製菓
蒸し暑い中、陽気にさらされるのはどんな気分なのだろうか。あまりに縁のない世界だったが、こればかりは仕方ない。
やはり、友達、というものができると、その世界を避けることは不可能なのだ。
「ゆーねちゃん!お菓子作ったから食べてみて?」
私、常盤莉羽は悠音ちゃんと一緒に生活している。
色々あって居座らせてもらっているのだが、流石に至れり尽くせりで申し訳ないので、お金を出してクッキーとケーキを作ってみた。
「? もしや、さっきからお菓子作ってたの? 莉羽ってお菓子作るんだ!」
「意外だった?」
あえて、不安げな声音で聞いてみる。
悠音ちゃんは、一瞬考える素振りを見せると、「うーん、作る瞬間があるのかなって思って」と返した。
「あー、確かに学校以外ではあんまないな。悠音ちゃんさっすがっ!!」
「ふふふ。莉羽って面白いこと言うね」
何が可笑しいのか、笑いながら言う悠音ちゃんはとても幸せそうだった。
その姿を見ていると、甘いパフェをたくさん食べた時のような気分になった。
「あ、クッキー盛り付けできたから食べてみて!」
「ありがとう」
悠音ちゃんは、細くて長くて綺麗な指でクッキーを摘むと、ぱくっと口の中へ入り込んだ。
「んぅ! 美味しい!! 莉羽本当に学校以外でお菓子作ったことないの? すごく美味しいんだけどっ!」
悠音ちゃんが、自身の頬に手を添え、顔を綻ばせながら言うものだから、本当にそうなんだとわかってしまった。
「そう言ってくれて嬉しい!! バターをハードミキサーで柔らかくしたからかな? いつもと違う方法でやってみたんだよね!」
「へぇ。いつもの味は知らないけど、このクッキーは口どけなめらかでおいしいよ!! 朝から幸せ〜」
「そっか。よかった」
私は、ケーキを焼いている間に、洗い物を済ませると、残りの時間で少し自作のクッキーを食べる。
「っ! 確かに、悠音ちゃんが言うのも納得の口溶けのよさだね!! 粉っぽくないし。今度からこの作り方で作ろうかな」
「莉羽は製菓好きなんだね」
「家じゃあんまりできないけどね」
悠音ちゃんは、私が少し悲しそうな表情をしてそう言うと、「大丈夫、夏休み終わってもいつでも家来ていいから」なんて言ってくれた。
⋯⋯本当は、悠音ちゃんの優しさに浸け込みたくはないけど、今だけはゆるしてね。
それから、ケーキが焼けると、悠音ちゃんはケーキまで褒めてくれた。
「スポンジがふわふわ」とか「クリームの甘さがちょうどいい」とか。
◆◆◆
今日は、莉羽がケーキとクッキーを焼いてくれた。冷蔵庫を確認したところ、うちのものは減っていなかったので、自腹だろう。
今度なにか買おうと思う。
美味しかったと正直に言うと、莉羽は明らかに嬉しそうな顔をして、喜んでくれていたように思う。
本人は学校以外であまり作ったことがないと言っていたが、レシピを見ながらとはいえ、あの美味しさはすごいと思う。
ほっぺが落ちそうなほど甘くて心地よいものだった。
お菓子を食べながら話していると、いつの間にか夜になっていて。
相変わらず、時の流れを感じながら、日々の速さを感じる。
「さ、莉羽。お風呂入って。お湯張ってあるから」
「ん、ありがと。保温つけっぱにしとくね」
簡単な会話をすると、莉羽はそそくさとお風呂に入った。
いつも通りカーテンを開けて、窓の外の景色を見る。
いつもより曇った空に、うっすらと月光が見えた。
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