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欠落女子と高嶺の花  作者: 古宮ふえ
第二章 私がそこに在る時間
8/12

不信的な安心感


 セミの音が響く夏。甘くて苦い思い出に、私達の青春がある。 


「二者面談だ」


 うちの学校では、三者面談のかわりに二者面談がある。この時期は、教室が凍てつき誰も何も言わない。それは、高校でも同じだった。


「今から日程の書いた紙を配るから、一人ずつ取りに来るように」


 先生はそういうと続ける。


「出席番号一番。赤司あずさ」 


 先生の声とともに、赤司さんは席をたつ。


 今日、この紙が配り終えられると、終業式だ。長い一学期が終わり、夏休みを迎える。

 家にいても、いいことがない私は、テキトウに町をぶらぶらし、夏休みをつぶす予定だ。


 私は、自分の名前が呼ばれると、紙をもらった。

 それから、終業式が終わり、家路につく。今日は、家に帰らず友達とお泊りする予定だ。というか、夏休み期間は家に帰らない。


 私は、この前教えてもらった友人宅へ急いだ。


◆◆◆


 今日は、莉羽がうちに来る日だ。私は一人暮らしなので、莉羽と泊まっても問題ない。莉羽の方も親と話しているそうだ。


 終業式終わり。部屋の片付けをあらかた済ませたところでインターホンが鳴った。


「やっほー!! 夏休み期間よろしくね」


 ドアを開けるとやはり莉羽がいて。私は、彼女を家にいれると、簡単なものをだした。


「ありがと」

「どういたしまして。食べ終わったら宿題しよっか」

「もー、悠音ちゃんは真面目だなぁ」


 何気ない会話をしながら、お菓子をつまむ。

 真面目、とはよく言われてきた。けど、莉羽が言う真面目とは別の意味で。


「ね、何からやる? やっぱ数学?」

「数学かなぁ」


 お菓子を食べ終わると、宿題を始める。量こそ多いが、内容は至って簡単。すぐに終わる。

 ⋯⋯そういえば、高園も早く終わるのか。


 ふと、そんな考えが頭をよぎったが、すぐに振り払う。余計なことは、考えてはいけない。


「ね、私平方根きらーい」

「中学校で、やった復習だって。確かに難しいけど莉羽ならできるよ」

「そーだけどさ、簡単だけど書くのがめんどいっ!!」

「確かに」


 莉羽と話すと、自然に頬が綻ぶ。

 ペンを動かしながら、雑談をする。どうやら、莉羽は数学が苦手なようで。進みが遅かった。


「数学、苦手?」

「うん。教えて?」


 すぐにいいよ、とは言えなくて。でも、あいつとは違うと、過去のことだと。

 絞り出すようにして、言葉を発する。

私は、莉羽のほうに回ると、数学を教え始めた。問題はそこそこ難しくて、解けるが結構面倒くさい。


「悠音ちゃんは、数学好き?」

「普通かも」

「へー」


 莉羽は時々、頭がいいのか悪いのかわからない。勿論、頭はいいのだ。だけど、話していると、なんだか違うのだ。


◆◆◆


 開始から数時間。数学が終わると、今日はもう終わり。窓の外はもうすっかり暗く、日が沈んでいた。


「お疲れ様。明日は何する?」

「英語と、理科の課題かな。莉羽は?」

「私も同じー」


 こうやって会話していると、ただの女子高生のようだった。これが、俗に言う青春なのだろう。私は、「青春だなぁ」と、うっかりこぼしてしまった。


「悠音ちゃん、不思議! でもまぁ、青春……だね!!」


 莉羽は一瞬キョトンとしたあと、可笑しそうに笑う。それが、可笑しくて私までつられて笑って。 

 夏休み期間、ずっとこんな日々が続くと思うと、嬉しくて。

考えているだけで、満たされていった。


「お風呂、いれるね。その間にご飯食べよう。炒飯でいいかな」

「炒飯!? やったー!! 私、炒飯好きなの。嬉しいなぁ」


 大げさに喜ぶ莉羽を横目に、炒飯を作る。 

フライパンの上の具材が、はねてはねて。こんがりといい匂いがすると、お皿に盛りつける。


「簡単だし、おいしいかわかんないけど。どうぞ」

「ありがと」


 莉羽は、炒飯を食べ始めると「おいしい!」「おかわりしたい」なんて、感じで褒めてくれ、少々料理をもう少し頑張ろうと思った。


「家庭科と得意?」

「全然」

「えー! うっそだぁ。こんなに料理上手なのに」


 正直、家庭科の得意不得意と、料理の得意不得意は別物だと思うが、言わなかった。

 きっと莉羽は、分かっていて言っているのだろう。

 たぶん、私を試しているだけ。


 他愛ない話を口ずさみ、ご飯を食べ終える。


「洗い物してから、お風呂はいるから先に入っていてー」

「おっけー。私が洗い物しても良いんだけど。悠音ちゃんに全部任せっきりだし」

「いいよ。莉羽は、お客さんだから」

「そっか」


 莉羽はそういうと、お風呂に向かった。


 ふと、ため息がこぼれる。これは、疲れたからじゃない。


 独りじゃないって思って安心してしまったから。


 止めたはずの水が、まだシンクに滴っていた。

文字数回復!! 最後まで読んでいただきありがとうございます!!ぜひ次話も読んでください!!感想やアドバイスなども頂けると嬉しいです!!

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